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ある日、鬼を拾いました。だけど早速捨てたいです。  作者: ことりおと


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2 歴史


「モモおかえり」

「ただいま。あんたそのツノなに?」

「あ、ごめん。出てた?今引っ込めるから」


 引っ込める……?


 ……。


 え……うそ……。


 ツノが……


 本当に引っ込んだ……?


「……やっぱり怖い?」

「え……?」

「僕、鬼と人間のハーフなの」


 鬼と……人間の……?


 じゃあまだ鬼はいるってこと?


「モモ。ごはん作ったから早く食べよ?」


 立ったままだった私は、目線を下の方にずらした。小さいテーブルには和食が並べられていた。そこでやっと、部屋の中に美味しそうな匂いが広がっていることに気がついた。


 私は手を洗い、テーブルの前に座った。


 ……ちょっと待って……。


 え……?ハーフ?


 頭がまだまだ混乱していた。


「モモに乱暴なことはしないよ?あれは昔の話だから。200年以上も前の話」


 私はこのあと、ごはんを食べながら凛の話を聞いた。


 凛は山奥の閉鎖的な村で育ったと言っていた。


 そもそも鬼全てが凶暴なわけではない。優しい心を持った鬼も、たくさんいたと。でもそんな凶暴な鬼たちのせいで、何も悪さをしていない鬼に対しても刃は向けられた。


 優しい鬼か……。


 私は目の前の卵焼きを口に運んだ。


 甘っ。


 塩とかダシだと思ってたからびっくりした。久しぶりに甘いの食べたけど、美味しいな。


「モモッ、聞いてる?」

「ごめん。聞いてなかった」


 すると凛はムスッとした顔をした。


「ごめんて。続けて?」


 凛はまた話しはじめた。


 なんとか人間から逃げてきた優しい鬼たちは、山奥に小さな村を作り、しばらくは平和に暮らしていたと。


 でもある日、熊から逃げて来た十数人の人間が、その鬼の村に迷い込んだ。人間たちは、そこが鬼の村だと気がつくと震え上がっていたと、鬼の歴史では語り継がれているらしかった。


「それでどうなったの?」

「人間たちを追いかけていた熊を、鬼たちがやっつけた」


 凛は話を続けた。


 私もまた食べ始めた。


 次は……肉じゃがを……。


 うんま。“ザ・お袋の味”って感じ。


 あ……ちゃんと凛の話を聞かないと。


 人間たちは元々いた村では農作物の育ちが悪く、新たな土地を求めて、村を出てきた人達だったらしい。


 それから人間たちは鬼に感謝の気持ちを込めて、野菜の作り方を教えたようだった。その様子を見ていた鬼たちは野菜がちゃんと育つまでこの村にいて欲しいと頼んだ。


「その村には、優しい鬼ばかりだったの?」

「……たぶん?」


 そっか。昔の話だもんね。凛にもわからないことはあるよね。


 鬼は力持ちで、体力もあるんだそうな。


 それから人間の知恵と、鬼の力を合わせて、少しずつその村は豊かになったらしい。


 凛の話はとてもわかりやすかった。


 話し方が子どもっぽいから、意外だと感じていた。


 次にきゅうりの浅漬けを箸で掴み、口に運ぶとポリポリとしながら、凛の話を引き続き聞いていた。


 気がつけば人間はそこへ住みつき、元いた村の人たちも次々と呼び寄せた。


 やがて鬼と人間のハーフも生まれるようになったと……。それで村はますます豊かになり、次第に鬼の血が薄れていったらしい。


 異種同士で……子どもができるのか……。


 まあ、でも今、目の前に鬼と人間のハーフが現にいるもんな。


 でもそのせいで村を出て行く人も増え、そのうちに過疎化していってしまったのだと。その村で純血の鬼は、凛のお父さんだけになったと言っていた。


 ……ってことは、この町のどこかにも、ご先祖を辿れば“鬼”……なんてこともあるってことなんだな。


「なんか寂しいね」

「うん。みんな引っ越しちゃってつまんなかったな。僕も父さんに引っ越したいって言ったんだけどね、“お前は半分、鬼の血が入ってるからダメだ”って言われてさ」

「それでその村から、勝手に出てきたの?」

「うん」


 凛は食料と何着かの衣服だけを用意すると、お金がないからひたすら歩き続けたと。


 電車も乗り方が分からず、ただただ歩いていたようだった。


 1週間ほど歩き続けると、食糧も尽き、とうとうお腹が空いて動けなくなったところに、私と出会ったと言っていた。


「だからモモは命の恩人」

「そんなおおげさな」

「ちゃんと恩返しするから」

「別にいーよ。それより早く出て行って?」

「出ていかない」


 なんでよ……。


 私はため息をついた。


「出ていかないからな」


 念を押されてしまった。


 そのあと凛は、楽しそうにテレビを見ながら、ごはんを食べ進めていた。


「モモッ、テレビって楽しいねっ」


 本当に楽しそうにしちゃって。


 今時、テレビ離れが進んでいるというのに……。


 だけと、凛の育ってきた環境を想像すると、なんだか不憫に思ってしまった。

 

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