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仕事が終わり家に帰ると、凛が笑顔で出迎えてくれた。
「おかえり」
「ただいま」
「明日は迎えに行くからね」
「うん。ありがとね」
凛はたまに、お店まで迎えに来てくれる。
「今日ね、仕事でまた新しいこと教えてもらったんだよ」
いつものように手を洗いにいく私に、凛はついてきながら話し始めた。
「そっか。よかったね」
「うん。やっぱり僕は器用みたい」
「すごいじゃん」
「あ、おかえりのキス……」
凛はそう言うと、手を洗い終えた私の顎を掴み、上を向かせると軽いキスをした。
「あとね、お母さんが今日、そろそろ僕たちに会いたいって言ってた」
ホント仲良しだな。
楓も喜ぶし帰りたいけど、休みが合わないんだよな。雨が降ると凛はたまに休みになるからその時でいっかな。
まぁ、私の休みのタイミングで、雨が降ればの話だけど。
リビングへ行くと、私は小さいテーブルに用意された、ごはんに視線を落とした。
厚焼き卵があった。
甘いのかな?しょっぱいのかな?
「今日は何話したの?」
「え?」
「お母さんと何話したの?」
「仕事のことと、モモのこと」
2人でテーブルの前に座り、食べ始めた。
「私のこと?」
「うん。モモが毎日かわいいって。モモを産んでくれてありがとうって」
……。
恥ずかしい……。
「あんたそんなことをお母さんに話して、恥ずかしくないの?」
「なんで?」
凛はきょとんとしていた。
そりゃそうか。
恥ずかしかったら話すわけないよな。
さ、今日の玉子焼きはどっちだ?
……だし巻きだ。うんまぁ……。
「ねえ、なんで?恥ずかしいの?」
「玉子焼きおいしっ」
「ホントっ?」
凛はキラキラとした笑顔で、嬉しそうにしていた。
次の日、仕事が終わり外に出ると、すでに凛はお店の裏口で待っていた。
「お疲れ」
「お待たせ」
「モモかわいっ」
「凛もかわいいよ」
私がそう言うと凛は拗ねた顔をした。
「僕は男だ。かわいいだなんて二度と言うなっ」
……だって……本当にかわいいんだもん……。
かわいくて仕方がないんだもん。
凛の笑顔はかわいい。
凛が笑ってくれると嬉しい。
凛には笑ってて欲しい。
凛に楽しいことをたくさん教えたい。
凛と楽しいことをたくさんしたい。
私は……凛のことがかわいくて仕方がない。
だからそうやって怒る凛のことも、かわいく見えてしまった。
「ごめんね。大好きだって意味だよ」
私がそう言うと、凛はニッコリとした。
「僕もモモのことがだぁーい好きっ」
ホントかわいい。
「ねぇ、今日はどう?いそう?」
「ううん。匂いしないからいないと思う」
「そっか。わざわざ迎えに来てくれてありがとね」
「だってモモに何かあったら嫌だもん。迎えに来ることなんか、全然苦じゃないよ」
クソ……
また凛にときめいてしまった。
こんなパピーに……。
「ありがとね」
「僕はモモが大好きっ」
凛はそう言うと、またニッコリとした。
「ねぇ……僕もう結婚したい」
「しないよ」
「なんでだよっ」
始まった。
凛の癇癪。
周りにいた人たちが、一斉に私たちの方を見た。
それほど凛の声は大きかった。
「凛。凛のその癇癪とわがままが直らない限り、私は凛と結婚しないよ」
「……」
「凛はすぐに怒る。それにわがまま。凛のことは好きだけど、そこは直して欲しい」
私がそう言うと凛は泣きそうな顔になった。
「……だって……早くモモと結婚したいんだもん」
「なんで?」
「だって僕、もうハタチなんだよ?母さんは僕を16で産んだ」
……めっちゃ早っ。
ってことは凛のお母さんは今36?
若っ。
凛の基準はいつも自分の家族だ。
私は世間一般的な流れを伝えた。
早く結婚をする人ももちろんいるけど、何年か付き合ってから結婚することも多いんだよと。
「え……そうなの?」
「そうだよ?」
「でもそれっておかしくない?モモは僕が好き。僕もモモが好き。それなら今、結婚しても別にいいだろ?」
凛の言う通りだ。
でも……
「まだしない。私はまだ凛のことをちゃんと知ってない。それにさっきも言った通り、凛の癇癪とわがままをなんとかして欲しい」
「……わかった……頑張る」
凛はそう言ってくれた。
「あと1回実家に帰ってほしい。それで凛は街でちゃんとやってるって伝えて、凛の両親を安心させてほしい」
「……わかった……モモも一緒に来てくれる?」
……凛の実家って遠いよね?
正直めんどい……。
というかしんどい。
「いいよ。今度休みを合わせて一緒に行こうか」
軽い登山になるんじゃないか……?
いや……ガチ登山……?
人間に見つからず200年以上も過ごしていた村だ。
きっとそんな簡単に辿り着けない。
私の体力持つのか……?




