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ある日、鬼を拾いました。だけど早速捨てたいです。  作者: ことりおと


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22/39

22 え……?


 新しいアルバイトが入ってきた。


 18歳の大人しい男の子だった。


 この子は早番も遅番もどちらも入れる子。


「初めまして。今日からお世話になります安藤直弘(あんどう なおひろ)です。よろしくお願いします」


 彼はそう挨拶をしていた。


 私はその子に色々と仕事を教えた。


 本当に大人しいな。


 その子は“はい”と言いながら私の話をちゃんと聞き、私の言う通りにしていた。


 いい子だな。


 言葉に少し、訛りがある……?


「出身どこ?」


 安藤くんは教えてくれた。


 結構遠いところから来たんだな。


「1人でこっちに出てきたの?」

「はい」

「そっか。歳が割と近くて、面倒見のいい吉野くんて人がいるから、何かあったら相談するといいよ。もちろん私にしてもいいからね?」

「はい。ありがとうございます」


 なんだか安藤くんが纏う空気感が寂しく感じたから、私はそう言った。


 そうやって数日間、私は安藤くんに仕事を教えていた。


 

 


 仕事が終わり家に帰ると、凛が作ってくれたごはんを2人で食べながら話していた。


「最近アルバイトで入ってきた子がいるんだけどさ──」

「男?」


 ……あ……この話題やめた方がいいかな……。


 凛は私の周りにいる男に敏感だ。


 でも……私は正直に言うことにした。


「18の男の子」

「そいつモモのこと好き?」

「好きじゃないよ。そう簡単に人は人を好きにならないよ」

「……僕はすぐにモモを好きになった」


 やっぱりそうなのか。


「大丈夫だから心配しないで?」

「モモ……転職して?」

「は?」

「男のいない所で働いて」

「無理」


 凛はやっぱり不機嫌になった。


「僕やだ。モモが男と働いてるのやだ」


 凛は箸をテーブルに叩きつけた。


 そんなに怒らなくても……。

 

「私は凛が好き」

 

 私がそう言うと、凛はツノを出し、すぐにニコニコした。


 そかそか。嬉しかったんだね。


「僕もモモ大好き」


 凛は嬉しそうにしていた。


「凛……そうやってすぐにツノ出しちゃだめ」

「あ、出てた?」

「うん」

「ごめん」

「だめだよ?もっと気をつけて」


 こんなに簡単にツノを出す凛のことが心配だ。


「モモ。大丈夫だから。ちゃんと気をつけてるから」

「うん……」

「本当だよ?今は家にいるから気が緩んでるだけ」

「わかった……それでね、その子すごく大人しい子なんだけど──」


 私は安藤くんのことを話した。


 凛は興味なさそうに聞いていた。


「もうその男の話、聞きたくない」

「職場の話だよ」

「やだっ。モモの口から男の話なんて聞きたくないっ」

「吉野くんの話は?」

「吉野くんは大丈夫」


 やっぱりか。


 吉野くんが言うように、凛は自分と仲良くない男は敵になるのか。


「凛、明日飲みに行かない?」

「んー……モモが次の日、休みの時にしよ?僕は体力あるから次の日が仕事でも大丈夫」


 優しい。


 単細胞のくせに優しい。


「ありがと。じゃあ明後日ね」

「うんっ。僕迎えに行くねっ」


 嬉しそうな顔しちゃって、かわいいな。


「僕、唐揚げ食べたいっ」

「食え食え」

「ゆず蜜サワー飲むっ」

「飲め飲め」

「楽しみっ」


 あー……もう……凛かわいっ。


 私、本当は年上が好みなのにな。


 こんなわがままなガキんちょじゃなくて、大人で引っ張ってくれるような人が好きなのに。なんでこんなに、凛のことを好きになっちゃったんだろ……。





 今日は凛と飲みに行く日だ。


 仕事が終わり店を出ると、少し遠くに凛の姿が見えたから、私は駆け寄った。


「凛っ」

「モモッ、おつかれぇ」


 凛はすぐに私の手を握った。


 それから凛は、少し険しい顔をした。


「どうしたの?」

「……ちょっとね……」


 それだけを言い、凛は理由を言わなかった。


 お店に着き、早速飲み物の注文をした。


 私はビールで、凛はゆず蜜サワー。


 頼んだものが届くと、二つのジョッキを軽くぶつけるように乾杯をした。


 ちょっとお洒落な居酒屋……なんかではない。


 外にもテーブルとイスが用意されているような、赤提灯のガヤガヤとした居酒屋だ。


 周りからは笑い声や、大きな話し声が聞こえてくる。


 しばらくすると唐揚げが届き、凛はその唐揚げを美味しそうに食べていた。


「仕事どう?」

「楽しいっ。僕力持ちだからみんな喜んでくれるんだ」

「技術は身についてる?」

「ううん。まだ掃除とかお手伝いばっかだから。でも今日ね、少し教えてもらえたんだ。そしたら器用だって褒められたよ?覚えもいいって」


 よかった。


 この様子なら続けていけそうだな。


 凛は楽しそうにしていた。


「凛、なかなか休みが合わないけどさ、こうやってたくさん楽しいことしよ?」

「うんっ」


 凛はツノ隠しのためにキャップを被っていた。


 そのキャップが少し浮いた。


「凛、キャップが……」

「ごめん」


 凛はそう言うとキャップが元に戻った。


「本当に職場では大丈夫なの?」

「大丈夫だって。僕がこうなるのは、モモにだけだから。親方に褒められたってこうはならないよ?」


 なんか……ちょっと嬉しいかも。


 ……わかった。


 凛の素直なところが、私は好きなんだ。


 変な駆け引きをしない凛が……。


 あ、そんなのそもそも凛はできないのか。バカだから。


 だけど……私はそんな凛のことが好きなんだ。


 このあとも凛は、次々に届く料理を美味しそうに食べていた。


 いい時間になり、家に帰ると凛はまた険しい顔になった。


「モモ……たぶん、鬼が街中に紛れてる」

「え?」


 鬼が……街中に……?

 

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