↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ある日、鬼を拾いました。だけど早速捨てたいです。  作者: ことりおと


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
21/41

21 ニュース


 家に帰るとニッコニコの凛が出迎えてくれた。


「おかえりモモっ」

「ただいま」

「今日はビーフシチューだよっ」

「ありがとう」

「ねぇ、僕のこと好き?」


 楽しそうに笑っちゃって。


 かわいいなぁもう……。


「大好きだよ」


 私がそう言うと凛はツノを出した。


 ……そんなに嬉しいのか。


「僕もモモ大好きっ」


 そういえば……


 凛の嫉妬って、いつから始まったっけ?


 最初は確か、ティッシュ配りの人に……


 “ちょっとモモっ。あの男から何もらったの?あの男、モモのことが好きなんじゃねーの?”


 そう言っていた。


 序盤も序盤じゃねーか……。


「なんで私のことを好きになったの?」

「かわいいから。あと命の恩人だから」


 単細胞らしい答えだ。


 私は荷物を部屋に置くと、手を洗いに洗面所へ向かった。凛はそんな私のあとにくっついて歩き、話の続きをしていた。


「村にはモモみたいに、かわいい子いなかった」

「私くらいの子なんて、そこらにごろごろいるよ?」

「いないっ」


 いるんだってば。


 それに別に私は、自分をかわいいだなんて思っていない。


「あんたさ、もし私よりもかわいい子から告白とかされたらどうすんの?」

「断るよ?」

「もう凛の、理想そのものな女の子なんだよ?」

「だって浮気は最低なことだって、父さんが言ってたから」

「浮気じゃなくて、私と別れてから、その子と付き合えばいいじゃん」


 私がそう言うと、凛は拗ねた顔をした。


 手を洗い終えた私は、凛が作ってくれたビーフシチューを温めるために、ガスコンロに火をつけた。


「僕はモモと別れないからな」

「そうじゃなくって、凛がその子のことを好きになる可能性もあるってことを言ってんの」

「ならない。僕はモモが好き」


 本当に浮気とかはしなさそうだな。


 もししたらボッコボコにしてやる。


 私だけだと無理だろうから、その時はやっぱり吉野くんにも手伝ってもらおう。


 そんなことより……


 引っ越ししないとな……。


 まだまだケンカすることもあるだろうから、1LDKは最低でもほしい。欲を言えば2LDKはほしいな。でも家賃も結構かかるだろうし……。


 とりあえず1LDKでいっか。


 贅沢言ってらんないもんな。


 あー……目に浮かぶな……。


 リビングでケンカしたあと、凛が泣きながら寝室に行く姿が……。


 きっと何度もそんなことがあるんだろうな。


 “モモのばかっ”って言いながら寝室に行って、泣きながら私のお母さんに電話するんだろうな。 


 はぁ……面倒くさ。


 なんで私はこんなヤツのことを好きになっちゃったんだろう。


 私は隣で楽しそうにしている凛を見ながら、そんなことを考えていた。





 ある日テレビを見ていると、衝撃的なニュースが目に飛び込んできた。


 絶滅したと思われていた“鬼”が山で発見されたと……。


 その鬼はすでに亡くなっていたようだった。


 一瞬、凛のお父さんかと思ったけど、凛がいた県とは離れている土地だから、違うかな……?


 凛のお父さんは村から出ないと言ってたし。


 凛は真剣な顔で、そのニュースをじっと見ていた。


「ねぇ、凛。外でツノ出したら絶対にだめだからね?」

「わかってる」


 凛はさっきの真剣な表情とは打って変わって、ケロッとしながらそう言った。


 でもずっと前、私が吉野くんと店から出てきたのを見ただけでツノ出してたじゃん。駅に向かってる時に出していたから、吉野くんには見られていないけど。


「私、本気で言ってるんだよ?」

「大丈夫だって」


 SNSを見てみると、話題は鬼のことばかりだった。

 

 “怖い”だとか“鬼って殺していいの?”とか“鬼狩りしようぜ”とか、そんな言葉がたくさん目に入ってきた。


 私はショックだった。


 やっぱりみんなそう思うんだ……。


 悔しい……。


 凛は全然怖くないのに。


 働き者で、優しくて、いいヤツなのに。


 私はやっぱり母の娘なんだな。


 初めて凛の鬼の姿を見た時も、怖いとは思わなかった。驚きはしたけど。


 どうしよう……。


 世間が怖い……。


 凛が鬼だとバレるのが怖い……。


「凛、本当に気をつけて?私嫌だからね?凛に何かあったら嫌だからね?」


 私がそう言うと、凛は嬉しそうにしていた。


 この野郎……


 本気で心配してるっていうのに。


「モモは僕のことが大好き」

「そ。だから心配してんの」

「僕もモモが大好き」


 今そんな話をしてるんじゃないんだってば。


「凛。真面目に話してるの。世間がこんな騒いでる中、今凛が鬼だってバレたら大変なことになるんだよ?」

「わかってるって」


 凛はニコニコしながら、そう言った。




 あれからしばらくの間、ニュースは鬼のことで持ちきりだった。


 鬼の研究家の人がテレビに出て、あることないことを解説したり、ある人は鬼が危険だと言い、ある人は優しい鬼もいると言い、情報が錯綜していた。


 でもそれも1ヶ月もすると、大物芸能人の薬物疑惑で、世間からの関心は薄れていった。


 私は毎日SNSを確認していた。


 鬼に対して必要以上に恐怖心を植え付けるような投稿。鬼に会いたい、鬼が好きだという投稿。


 それから……鬼狩りしようぜという投稿も未だにあった。


 鬼の話なんてもう、200年以上も前の話だから、鬼に対して恨みを持ってる人はもうほぼいないと思う。


 でも……やっぱり私は心配だった。


 私は仕事から帰ると、すぐに凛に確認をした。


「凛、大丈夫?職場の人にバレてない?」

「大丈夫だって。それより僕、車の免許取りたい」

「免許?」

「うん。親方に取れって言われた」

「いいよ。取ってきな。凛のお金、ちゃんと取っといてるから」


 私がそう言うと凛は喜んでいた。


 凛は次の日、早速教習所へ行くと申し込んでいた。


 ……違う違う。


 凛の心配をしていたのに、話をはぐらかされた?


 いや、違うか。


 あいつは単細胞だ。


 きっと、鬼だのなんだの、あんまり考えていないんだ。


「はぁ……」


 本当にこんなんで大丈夫なのかよ……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。