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ある日、鬼を拾いました。だけど早速捨てたいです。  作者: ことりおと


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20/38

20 もしも……


「おはよ。久しぶり」

「あ、おはよ。吉野くん」


 久しぶりに吉野くんとシフトが一緒だ。


 先に着替え終わっていた私は、いつもの如くスタッフルームの休憩スペースに座っていた。吉野くんもすぐに着替えると、私の隣に座ってきた。


「凛のことありがとね。買い物に付き合ってくれて」

「いえいえ。それで?凛くんとは進展した?凛くんのことが好きなんでしょ?」

「よくわかったね」

「うん。なんとなくね。凛くんの話を聞いてそうかなって思った」


 あいつ……変なこと言ってないよね?


「付き合うことになったよ」

「よかったね。凛くん浮気しなそうだもんな。立花さんのこと好きじゃないだなんて言いながら、あんなに怒ってさ」


 吉野くんが話しているのは、あの居酒屋での出来事だ。凛が黒髪のウィッグを被っていた日のこと。


「全身で立花さんのことが好きだって言ってるような姿を見て、俺、笑いを堪えるのに必死だったよ」


 吉野くんはそう言いながら笑っていた。


「ははっ。そうだったんだ」

「うん。もうおかしくって。それでどう?仲良くやってる?」

「んー……もう少し私離れをしてほしい……かな」


 私がそう言うと、今度また凛を誘ってみると吉野くんは言ってくれた。


「あいつさ、見ての通り癇癪持ちで、わがまま単細胞の、何にも知らないパピーヤローなの」

「……辛辣だね」

「なんで好きになっちゃったんだろ……」

「前に買い物に行った時、そんなにわがままじゃなかったよ?俺の言うことをちゃんと聞いてたし、よく笑ってて楽しそうにしてた」


 なんでよ……。


 私といる時と違うじゃんか。


「次、凛に会ったら、ちょっと躾しといてくれない?」

「躾って……前から思ってたけど、立花さんってちょっと口悪いよね」

「まぁね」

「ま、そんなところが好きなんだけど」

「こんな私を好きだと言う吉野くんのことが、私は好きだよ」

「人を拾っちゃう変なところも好きだよ」

「変な人が好きな、変な吉野くんが私も好きだよ」


 私は本当に、こんな吉野くんのことが好きだった。


 気を遣わずに、本音を言えるのってホント楽。


「あ、え?2人って付き合ってるんですか?」


 ちょうど出勤してきたスタッフのシミズくんに、会話を聞かれてしまったようだった。


「「付き合ってない」」


 私と吉野くんは声を揃えてそう言った。


 するとシミズくんはこう言ってきた。


「いや、でも今2人して“好き好き”言い合ってたじゃないですか」


 私はシミズくんに言った。


「私、彼氏いるから」


 それからまた、私と吉野くんとの会話が始まった。


「俺は年上の女が好き」

「へー。そうだったんだ」

「そう。それで甘やかされたい。今まで兄ちゃんやってきた反動だな」

「そういうもん?」

「俺はね」

「私も本当は、落ち着いた年上が好み」


 そう……。


 本当は、私の好みは落ち着いた人。頼れる人。


「正反対な彼氏だね」

「ね。吉野くんにも理想とは正反対な彼女ができますように」

「性格悪いね、立花さん」

「まぁね」


 私たちの会話を聞いていた、シミズくんはこう言った。


「男女の友情ってあるんですね」


 男女の友情か……。


「さぁね?」

「どうなんだろうね?」


 私と吉野くんはそう言った。


 男女の友情があるかどうかなんて知らない。


 制服に着替え終わったシミズくんは、私たちの目の前に座った。


 私はまだ色々と考えていた。


 結局はタイミングなんだと思う。


 私はまた話し始めた。


「何がキッカケで、どう気持ちが動くかなんてわからないよ。年を重ねていけば、考え方だって変わっていくんだから。それにその時の状況にもよるだろうし」

「だよな」

「ね」

 

 吉野くんは、私の意見に肯定してくれた。

 

 もしも凛が私を裏切るようなヤツだったら、私はたぶん吉野くんにそのことを話す。


 吉野くんならきっと、そんな凛のことを怒ってくれるだろうし、私の味方になってくれるだろうから。


 私がそんな吉野くんに、うっかり惚れることもあるかもしれないし、ないかもしれない。


 私はテーブルに肘を乗せ、頬杖をつきながら吉野くんのことを見た。


 ……でも……万が一にでも、凛がそんなヤツだったら──



 半殺しにしてやる。



「その時は吉野くんも手伝ってね?」

「え?なんの話?」

「凛を半殺しにする話」

「なにその物騒な話」


 吉野くんは最初笑っていたけど、私が冗談で言っていないことがわかったようで、その表情は徐々に冷ややかなものになっていた。


 まあ……冗談……だけど。


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