↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ある日、鬼を拾いました。だけど早速捨てたいです。  作者: ことりおと


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
19/38

19 結婚しろ


「あのね、お母さんっ。僕モモにおへそ見せてもらえたっ」


 ある日、仕事から帰ると、凛のそんな声が聞こえてきた。私は慌てて部屋に入った。


 凛はベッドの上で、胡座をかきながら母とビデオ通話をしていた。


「凛っ」

「あ、モモおかえりぃ」


 ニッコニコの凛が、悪びれることなく私のことを見た。


『あら、もう桃帰ってきたの?いつもより早いね』


 母の明るい声が耳に届く。


「あんたまたっ──」


 私が文句を言おうとしたら……


「僕ね、モモと一緒にお風呂に入ったんだよ?」

『あらあら、まぁまぁ、それはよかったね』


 なんなんだよこいつらは……。


「僕モモと結婚する。いい?」


 は?


『いいよー。凛くんなら、ママ大賛成』


 何言ってんの?


 珍しく凛はテレビをつけていなかった。部屋の中は、凛とお母さんの楽しそうな声だけが響いていた。


「……しないよ」

「え……?」

「しない」

「なんで……?」

「そんなすぐには結婚しないよ」

「なんで?僕はもう結婚したい」

「しない」

「ひどい……ひどいよモモ……僕の初めてを全部奪っておいて……」


 奪ってない……。


「キスは凛からしたんじゃんっ」

「でも僕の初めてを奪ったじゃんっ」

「奪ってないってばっ」

「僕たちもう、何度も愛し合っ──」

「あ゛ぁ゛ーーーーーーっ」


 私は凛の声をかき消すように叫んだ。


『若いっていいね』


 凛のスマホの中の、母がそう言った。


 もう消えたい……。


 こんなの恥ずかしすぎる。


 穴があったら入りたい……。


 なんなんだよもう……こいつら……。


『じゃあ結婚式はいつにする?式代はママたちで出すから』


 なんてことを言い出すんだ。そんなことを言ったら、凛が調子にのる。


「だからしないってっ」

「なんでだよっ」

「そんなすぐにするもんじゃないでしょっ?」

「モモのばかっ」

「凛のあほっ」


 それから凛は母と少し話すと通話を切っていた。


「なんでだよっ。責任とれよっ」

「結婚は別でしょっ?」

「別じゃないっ。モモは僕のことが好きなんだろっ?」

「好きだよ?でもそれとこれとは別だよっ」

「……へへぇ……モモは僕が好き……」


 凛は急にふにゃふにゃとしながら、ツノを出した。


 私はそんな凛の隣に座った。


「モモは僕のことが好き……嬉しい……」


 ……ホントにもう……なんなんだよこいつは……。情緒が不安定すぎる。


「ねぇ……仕事中にツノ出してないよね?」

「大丈夫。出してない。それにヘルメット被ってるから、もし出ちゃってもすぐにバレない」


 ならいいんだけど。


 凛は私を抱きしめた。


「モモ大好き」

「……私も大好き」

「じゃあ僕と結婚して」

「……しない」

「なんでだよっ」


 凛は私の体を離すと怒りだした。


 また……あの拗ねた顔だ。


「僕と結婚しろ」

「……」

「しろ」


 本当にもう……単細胞だなこいつは……。


 それは鬼だから?


 それとも凛だから?


「……しろよ……」

「しない」

「……じゃあ他に何をあげればいい?」

「……え?」

「ファーストキスも初めてもモモにあげた。他に何をあげればモモは僕と結婚してくれるの?」

「違う……」

「……」

「あげるとかそんなんじゃなくて……もっとお互いをよく知ってからするものでしょ?結婚っていうのは」


 凛は不貞腐れながら黙った。


 私はまだまだ結婚する気なんてなかった。


「やだっ。僕モモと結婚するっ。したいっ。今すぐしたいっ。僕と結婚しろっ」


 この癇癪わがままヤロー。


 この前までは好きじゃないって言ってたくせに。


「わからずやっ。もう別れるっ。ここから出て行けっ」


 私がそう言うと凛はとうとう泣きだした。


「モモのばかぁ。モモのあほぉ」


 凛はそう言うと、頭まで布団にくるまった。


「お母さん……モモが結婚してくれない」


 ……はぁ……。


 またお母さんに電話してんのか……。


「うん……うん。そう。また出て行けって言われた。別れるって言われた」


 だから丸聞こえなんだってば……。


「……僕のこと好きだって言ってたのに……うん……そうだよ?大好きっていっぱい言ってくれた」


 もうやめてってばっ。


 私は布団を剥がした。


「やめろよっ。今電話してんだからっ」

「丸聞こえなんだよっ」

「邪魔すんなっ」

「お母さんにいちいち言いつけないでよっ」

「じゃあ僕と結婚しろっ」

「しないっ」

「……あんなにちゅーしたのに……?」

「電話切れっ」


 凛はまた布団を被り泣きだした。


 私はそんな凛を放って、シャワーを浴びにいった。


 はぁ……


 何で私は、あんなわからずやで、わがままなヤツのことを好きになっちゃったんだろう……。


 とりあえず引っ越そう。


 もう少し広いところに引っ越して、ベッドももっと大きいのにして……


 そうやって……


 そうやって少しずつ進めたいのに……。


 なんですぐに結婚だのなんだのって……凛のばか。単細胞。パピーヤロー。


 私だってこんなケンカばっかしてないで、甘い生活を送りたいよ。せっかく両想いなんだから。


 2人でもっと楽しみたい。


 色んなお店に行って、凛に美味しいものをたくさん食べさせたい。色んな所に行って、凛に楽しい思いをして欲しい。2人で楽しい思い出を増やしたい……。


 そう思いながらシャワーを浴びてると、ドタドタと足音が聞こえてきて、急に浴室のドアが開いた。


「モモのばかっ」


 わざわざそれを言うために来たのか……?


「僕、絶対にモモと別れないからなっ。それでいつか絶対、モモと結婚するっ」


 ……今“いつか”って言った?


 私は顔だけ凛に向けてこう聞いた。


「いつかでいいの?」

「……だって……今はお互いを知っていく期間なんだろ?」

「そう」

「モモの言う通りにするよ」

「ありがと。もうドア閉めて」

「わかった」


 凛は浴室に入るとドアを閉めた。


 そうじゃないだろ。


「あんた濡れるよ」

「……僕も一緒にシャワーする」

「お風呂にお湯張ってないから出てって」

「寒いのっ」


 凛はそう言うと、服を脱ぎ始めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。