↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ある日、鬼を拾いました。だけど早速捨てたいです。  作者: ことりおと


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
15/42

15 おへそ


「ねぇ、モモッ。明日職場の人たちでごはん行くことになったから、モモも仕事が終わったら来てよ」

「やだよ」

「やだっ。来てっ」

「間に合わないよ」

「間に合うから来てっ」

「やだ」

「19時からだから来てっ」

「やっぱり間に合わないじゃん」

「途中からでいいから来てっ」


 凛は一度言ったらなかなか譲らない。わがままで頑固なヤツだ。


 本当に……こんなことになるなら拾わなきゃよかったよ。


「来て」

「……」

「来て」

「わかったよもう……」


 凛はひとりっ子だと以前言っていた。きっと甘やかされて育ったんだろうな。だからこんなにわがままなんだ。


 次の日、仕事が終わると私は凛に指定されたお店に向かった。“ごはんを食べに行く”と言っていたのに、そこは居酒屋だった。


「おっ。かわい子ちゃんが来た。この子が凛太郎の彼女ちゃんか」


 彼女……?


 私は凛の隣に座ると小声で話しかけた。


「なんで彼女ってことになってんの?」

「一緒に住んでるって言ったら、なんかそうなった」


 ちゃんと否定しろよ。


「凛太郎はいつ、酒が飲めるようになるんだ?」

「来月です」


 凛……敬語使えるんだ。吉野くんにもお母さんにもタメ口だったから、敬語を知らないんだと思ってた。


「ははっ。そうかぁ。早く凛太郎と酒が飲みてぇなぁ」


 凛はどうやら可愛がられているようだった。


「モモちゃんは成人してる?」

「はい」

「じゃあ飲め飲めっ」


 凛の上司っぽい人がそう言って私にお酒を勧めてきた。私は遠慮なく頂いた。


 “モモちゃんは何歳?”

 “仕事は何してるの?”


 私はそんな質問に答えながらお酒を飲んでいた。


 凛のばか。

 凛のあほ。


 私は凛の彼女じゃないのに。なんで彼女ってことになってんだよ。ちゃんと否定しろよ。


 虚しくなるじゃんか……。


 親戚とでも言っておけばよかったのに。


 ホントばか。


 ばかばかばかばか。


 凛なんて嫌い。


 大嫌い。


 そんなことを思いながら、勧められるがままに、私はお酒を飲んでいた。もうやけ酒に近かった。


「凛はちゃんとやってますかぁ?」


 しばらくすると私は酔っ払っていた。


「おうっ。しっかり働いてるよっ。モモちゃんの負担になりたくないからって、頑張って働いてるよぉ」


 ……私の負担に……?


 凛……そんなこと思ってたの……?


「もうこいつさぁ、口を開けば“モモ、モモ”って言ってんだよ。ラブラブで羨ましいのなんのって」


 ……そんなに私のことを話してるの?


 隣の凛を見てみると、歳の近そうな男の子と楽しそうに話していた。あの子かな……凛がハタチになったらお酒を飲むって言ってた子……。


 凛が同年代の男の子と仲良くしてるの、吉野くん以外で初めて見たな……。


 凛がちゃんと自分で築いた人間関係。


 なんだ……


 私がいなくてもちゃんとやってんじゃん……凛……。


 これならひとりでも、ちゃんと生きていけるじゃん。


 家に帰ると、私はまた聞いてみた。


「凛……私のことが好きなんでしょ?」

「モモのことなんか好きじゃない」


 やっぱりこれだ。


 なんでよ。


 職場で私の話ばっかしてんでしょ?


 なのになんで?


 なんで凛は私のことを好きになってくれないの……?


 好きになってよ。


 お願い……凛……。


 私のことを好きになって……。


 そう思ってるのに、凛はいつも、私を好きではないと言う。





「明日ね、吉野くんが買い物に誘ってくれたんだ」

「そっか。楽しんできてね」

「うんっ」


 凛は楽しそうにしていた。


 吉野くん、ありがとう。


 凛が私以外と関わるのはいいことだ。そうやって、少しずつ私離れするんだ。それでいい。そうやっていろんな人に関わり合って、そのまま自立心が芽生えて欲しい。



 仕事から帰ると、すでに凛は買い物から帰ってきていた。


「見てモモッ。全部吉野くんに選んでもらった」


 凛はそう言いながら、買ってきた洋服をベッドの上へと広げた。どれも凛に似合うものだった。

 

 吉野くん、センスいいな。


 そう思っていたら凛が後ろから抱きしめてきた。


 しばらくそうしたあとで、凛は私の顔を覗き込むようにすると、私の顎を掴み、凛の方に向かせ唇が重なった。


 ……あれ……?


 凛はいつもと違うキスをしてきた。


 私は慌てて凛から離れた。


「ちょっとやめてよっ」

「なんで?」

「なんでって……」

「僕たちもう、たくさんちゅーしてるよ?」

「そういうのはね、好きな人同士がするの。凛は私のことを好きじゃないんでしょ?」

「うん」


 ……。


 またそれか……。


 ばか……。


 凛のあほ。


 凛はムスッとした顔になり、私から離れると、ベッドに広げた洋服を片付け始めた。


「モモのわからずや。ばか。あほ」


 聞こえてんだけど。


 凛はぶつぶつと独り言のように、私の文句をずっと言っていた。


「あんなに僕とちゅーしてるのに……」

「……」

「寝る時も、僕がいないとモモは眠れないのに……」


 ホント……なんなのこいつ。


「ホントばか。モモのばか」

「全部聞こえてんだけど?」

「……」

「凛が言ってることは矛盾してんだよ?自分でもわかってんでしょ?」

「だったら見せてよっ。おへそ見せてよっ」


 は?


 なんなんだよこのモンスターは……。


「見せるわけないでしょ。この変態鬼が」


 凛はツノを出し、拗ねた顔をしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。