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ある日、鬼を拾いました。だけど早速捨てたいです。  作者: ことりおと


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10/38

10 矛盾


 休みの日に、ひとりでショッピングビルに買い物に来ていた。凛はもちろん仕事だ。


 平日だったけど、それなりに人で賑わっていた。


 私みたいにひとりで買い物をしている人や、抱っこ紐やベビーカーで、小さいお子さんを連れている人が多かった。あとは……大学生くらいの年齢の子。


 色々と服を見て回っていると……


 あ……あれ、凛に似合いそう。


 1着の服が目に止まり、それを手に取り見てみた。いいじゃんこれ。値段もそんなに高くないし。


 私はその服を腕にかけ、今度は自分の服を選び始めた。あれこれと色々と見ていると、店員さんがお買い物バッグを手渡してくれ、私はその中に数着の服を放り込んだ。


 よし、こんなもんでいっか。


 バッグをレジに持って行くと、店員さんが次々にバーコードを読み取っていた。


 私なんで……凛の服を2着も買ってるんだろう……。


 ……ま、いっか。


 その他にも日用雑貨などを買ってから、家に帰った。




 ある日、ベッドを背もたれにし、2人でテレビを見ていると……


「モモは彼氏いたことある?」


 凛がいきなりそう聞いてきた。


「なんでそんなことを知りたいの?」

「知りたいから」

「あるよ」


 私がそう答えると、凛は私の手を握り、鬼になった。ツノが出ていた。


 なんで……


 凛はすごく怒った顔をしていた。


 なんでよ……。


 別に私のことを好きじゃないんでしょ?ならなんでそんなに怒るの?


 さっきまで楽しそうにテレビ見てたじゃん……。


 それにしても……すごい力……。


「痛い……」

「……」

「手、痛い……」


 それでも凛は、私の手を握る力を緩めなかった。


 テレビからは賑やかな音が聞こえてくるのに、この狭い部屋の空気は、ピーンと張り詰めていた。


 エアコンを稼働させているのに、背中に汗がツーッと流れるのを感じた。


 それは……


 逃げられない──


 そう感じたからだ。


 今、凛に押し倒されたりでもしたら、私はきっと凛から逃げられない。それほど凛の力は強かった。


「凛、怖いよ」

「僕が怖いの?」

「……怖い……」


 私がそう言うと、凛のツノが引っ込んだ。それから悲しそうな顔をした。


「僕が……鬼だから……?」


 違う。


 違うよ凛。


 鬼とかそんなの関係ない。今の凛がただ怖いだけ。すごく……怒った顔をして、私の手を強く握ってるから……。


「僕が鬼だから怖い?」

「そうじゃない」


 私はちゃんと説明をした。


「……鬼が怖いわけじゃないんだね?」

「うん」

「……ごめん」


 凛はここでやっと普通に戻り、私の手を握る力を緩めた。


「ごめん……」


 凛はまだ悲しそうな顔をしていた。そんな顔を見るのは初めてだった。


 私は凛のそんな顔を見るのが嫌だった。


 なんで……そんな顔をするの……?


 私は手を伸ばし、凛の頬に触れた。凛はそんな私の手に、そっと自分の手を重ねた。


「服、脱がせてもいい?」


 だからそれ何なの?


「いいわけないでしょ?」

「……おへそ見せて?」


 は?


 へそ?


 へそフェチ?


「なんで?」

「見たいから」

「キモ……」


 凛はがっかりとしていた。


 凛が何を考えてるのかがわからない。


 凛が言うこと、凛の行動、全部全部わからない。


 私のことが好きそうな態度をとるくせに、私を好きじゃないと言う。嫉妬するくせに、私のことなんか好きじゃないと言う。


 もうなんなの……?


 わけがわからない。


 それになに?おへそ?


 見たけりゃプールにでも行けばいい。





 凛は毎日のように子守唄を歌い、私を寝かしつけていた。私はいつの間にかそれで眠ることが当たり前になっていた。


 本当に凛の子守唄は心地いい。私はそれを聞くとすぐに眠くなるようになっていた。


 まるで催眠術にでもかかったかのように、本当にスッと眠りにつくことができた。


「モモは子どもだね」


 は?子どもはお前だろ。


 ベッドに2人で寝転ぶと、凛はそんなことを言ってきた。


「僕が子守唄を歌うとすぐに寝る」


 ……そういう意味か……。


 でもなんだか悔しくなった。


 こんなに何も知らない凛に言われると、腹が立った。


「凛の方がよっぽど子どもだよ」

「僕はもう大人だよ?下の毛もちゃんと生えてるもん」


 みんな生えるんだよ。


「明日も早いでしょ?もう寝よう?」


 私がそう言うと、凛は私を寝かしつけた。


 でも……


 こんなのおかしい。


 わかってる。


 次の日、私は少し大きめのロングクッションを買って帰った。


 寝る時間になると、私はそのロングクッションの上に寝転んだ。


「何してんの?」

「寝るの」

「ベッドで寝ないの?」

「うん」

「じゃあ僕も床で寝る」


 凛はそう言うと私の隣に寝転んだ。


「体が痛くなるんでしょ?ベッド使いなよ」

「僕は鬼だから、そんなんで体痛くなんないよ?」


 は?


 前言ってたことと違うじゃん。


「じゃあ私がベッド使う」


 私はベッドに寝転んだ。すると凛も隣に寝転んだ。


 ……。


「床で寝てよ」

「やだ。床で寝ると体痛くなるんだもん」


 なんだこいつ。


 凛は後ろから私を抱きしめた。


「あんた私のこと好きなんでしょ」

「モモのことなんか好きじゃない。モモが僕のことを好きなんだ」


 なんでそうなるの。


「違う。それはあんたの勘違い」

「わからずや」

「本当のことだよ。凛のこと、別に好きじゃない」

「モモのばか」

「凛のあほ」

「ばーかばーか。モモのばーか」

「はいはい。わかったからもう離れて。暑い」

「やだ」


 凛は私の体の向きを変えさせると、いつものように私の背中をトントンとしながら子守唄を歌った。


 こうならないように、クッション買ってきたのに……。


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