軌道空域編⑧-1ハンガーにて
かしゅ、
左腕部肘関節のアクチュエータが、「あなた」の握る左操縦桿、レバーの繊細な傾きに合わせ動く。
ちゃからちゃちゃ。
直方体レバーの四側面に、いわゆる手のひらの中の骨関節、そこから生えて指となる三関節それぞれに対応した感圧式のスイッチが取り付けられており、微細な入力が可能となる。
きゅきゅ、き、
水素結晶で構成された巨人はいま─、
「おー、お見事ですなー。」
ガルデニアの言葉に、「要領は掴めたから編み物も出来そうだ。」と「あなた」は答える。─お箸に見立てた黒鉄のランサーで、大豆を皿から皿へ移していた。
「全高16メートルくらいのロミネンシアでやる作業とちゃうてー。」
とさ、
隣のハンガーから歩いて来たマチコは、資材箱に座る。
「15.4メートルよ。マチコは何でもずぼらなのよ。」
続いて歩いて来たイヴが、ガルデニアに抱き着く。
「クズノハさんは、私に風を使わせてくれませんでしたー。」
「ヒュネアにはお箸の持ち方を学ばせたいのですが、ナインの焼き飯のおかげでスプーンのようにしか食器を使えません。」
次に入って来たクズノハさんは、仰向けでふわふわと浮くヒュネアのロングコートを引っ張っている。
ぽん、
ガルデニアが手のひらに、軽く握った拳を落とす。
「あー、わたしは鉛筆の持ち方とかもぜんぶ、ナインに教えてもらいましたなー。」
ガルデニアは流れるように立ち上がって歩き、ヒュネアの袖を握ってくるくると回る。
「わわっ。」
温度調節により大気をコントロールするヒュネアは、粒子分子の振動を制御するガルデニアに絡め取られるように回転し、二人一組のダンスを踊るように地面に立たせられる。
「ナインはいそがしーですからなー。わたしが代わりに仕込んであげますなー。」
きゅうういん、かしょ。
隣のイヴ機が立ち上がり、「あなた」のピュモッソへ手を伸ばす。
しゃああ、こ。
胸部ハッチが開き、
「ナイン様、私と一曲、踊ってくれますか?」
きゅらららら。
ハンガーのシャッターが上がり、晴れやかな青空の光が、内部に水色のレイヤーを重ねる。
ロミネンシア用の演習場は小隊ごとに割り当てられており、「あなた」も大豆を移し替える作業に飽きが来ていた。
A、「喜んで─。」
しゃあこ。
ピュモッソの右腕を持ち上げさせ、イヴ機の右手に重ねる。




