軌道空域編③繋
ひゅううう。
わーわー、きゃー。
すぐ頭の上を、回転しながら座席と乗客を固定して、滑車が駆け抜けてゆく。
「お昼ごはんのあとはげきりゅーぼーとですなー?」
「もうどうにでもして。」
「ぱくぱく。」
「ほら口元クリームついとるで。」
施設内のレストランやイートインのスペースで、テーブルを囲む。
ガルデニア、ヒュネアはもともとの設計思想が空域での作戦行動だったため、
「それはごへーがありますなー。わたしはお水の中でも光の海でも泳げますなー。」
「何でナイン様のモノローグに介入してるのよ。」
「私は地表から飛行機の高さまでなら飛べますー。」
「はいはい、アタイはアンカーで指示出しやな。」
運ばれて来たポテトやナゲットをつまみながら、話は弾む。
初日は帰投してからガルデニアとヒュネアしか夕食を食べられなかったものの、2日目のお昼ともなると「あなた」とイヴ、マチコもこうして食事が出来るようになった。
下腹部の浮遊感は回転する座席の中で姿勢を保ち、腹部の筋肉の張り具合をコントロールする事で、三半規管へのダメージは注視対象への視線の流れをコントロールする。
つまりトレーニング。
「とゆーことはー、つぎのステップでーすーなー?」
「いいわよ。私ガルデニアには負けないから。」
「次って何でしたっけー。」
「んあー、はっ。せやな!空中回転トルネードで、このUAVをよーけ飛ばしてそれの認識と射撃、回避や!」
それは違う、と「あなた」は声を上げた。まずは激流ボートで全員が連携して荒波に立ち向かうのだ、と。
「あー、ナインじつはわくわくしてますなー?」
「私そんなナイン様も嫌いじゃないわ。」
「濡れちゃうみたいですー?」
「そこんとこは合羽買うていこかー。」
「しゅっぱつしんこーですなー。」
「私がお会計するわ。」
「もっと食べたいですー。」
「ほな包んでもらい。」
しまった。
もうちょっとゆっくりしていたかった。みんなが立ち上がり、「あなた」を引きずってお会計へ向かう。
「おー、おみやげもありますなー?」
「ほらナイン様しゃきっとして。」
「このチュロス食べたいですー。」
「このアクセサリーええやん。」
みんなが遊園地のグッズを手にわいわいとはしゃぐ。「あなた」は声をかけようとしたものの、そのままみんなを見る。思えばガルデニアとは、預かってから戦いの中での生活だった。イヴは既に、姉妹と呼ぶべき同型機が廃棄され、戦場に送らられ、消耗品として扱われている。ヒュネアにも同型機はいるが、研究資料として、保護されている。そしてマチコ、パイロットへの夢を諦めてサポートに徹する事を選んだ。その姿には、「あなた」が再び騎士になる目標を抱かせ、共に歩んだカランコエの姿が被る。
「むー、またナインはどこかに行ってますなー?」
「マチコを見てたわね。」
「あ、服にソースが付いてますー。」
「はァ!?早よ言ーてや!」
お店の外でわたわたし始めた彼女達を見ていると、
ぎゅ。
「マチコがカランコエみたいだって思ってましたなー?」
特に否定する気も無かった。「あなた」は頷いて、「みんなに会いたい。」と零す。思えばもう1ヶ月以上触れ合っていないのだ。毎晩通話するとは言え、カランコエの巻き髪やナナカマドの淹れてくれるお茶、フィンネルの指圧にヒヤシンスの挑発的な笑い方、アロエはスマートフォンの姿で「あなた」のガンベルトに収まっているから、まだ触れ合えてはいる。べふことロータスは置いといて、ナツコ。
彼女は確か、「おとめのまばたき作戦」へ─。
むちゅ。
柔らかな唇が、「あなた」の思考をかき乱した。
みずみずしく弾力のある─。
「んんー、またそれについて考えてますな?今はだーめ、ですなー。」
「ガルデニアずるい!私ナイン様にされてないのに!!」
「私もまだですー。」
「子持ち人妻とは言え人前でイチャイチャしよってからに。ほれ、着いたで。」
みんなで挑戦激流ボート!
そのアトラクション。




