軌道空域編①辞令書
ちりいいいい。
加熱された鉄鍋が、水滴を蒸発させる。
かんかん、かん。
「あなた」はおたまで掬った油を鉄鍋へ垂らし、固形のものは叩いて落とす。
じゅうわああ。
鉄鍋を燻らせて、油を馴染ませる。
ぽたた、
即座に鉄鍋から油を缶に戻し、再びコンロへ乗せる。
かち、かち、しゃ、しゃああ。
鳥類の卵をそのまま割り入れる。
透明な卵白が鉄鍋の火力により白く固まり、軽く焦げ目が付く。
ごしゃ。
蒸した穀類を冷ましたもの、を入れ、おたまで潰しながら加熱する。
ぱらら、
刻んだ煮込み獣肩肉と香味野菜を鉄鍋へ入れ、
かんすかか、かん。
全身を使って鉄鍋を振り、食材を踊らせる。
ぱら、
一般的な塩、コショウ粉末をひとつまみ入れ、馴染ませ、整える。
か、さ。
おたまで掬い、カウンターに乗せたお皿へ乗せる。
A、「ルニア。」
声をかけられた少女は、「はいはいーい。」お皿を持ってお客様のテーブルへ運ぶ。
A、─「私も運びたいですー。」
「ヒュネアは運ぶ途中で食べるからだめ。」
洗い物をするヒュネアに、餃子を包むイヴが答えた。
「うーん、この2人にお店手伝ってもらうんやったら、きゅーりょーどないしとんの?」
カウンターでザーサイをつまむマチコが声を出した。
「わたしはナインのお嫁さんですからなー、きちんとナインとお手続きに行きましてなー?」
「ほんで?」
「イヴとヒュネアは娘となったわけですなー。」
「うお、もう1人おんのやろ?」
「そーですな、リピニィエーラが長女で、イヴが次女、ヒュネアが三女ですな。」
「私はまだナイン様と結婚する気だから。」
「私もそーですー!」
「ナインも大変やな…ってアタイもナインと結婚すんねや!」
「2人もそー言ってお役所でゴネたのですなー。」
「おん、ほんでどないしたん?」
「いちおーAADAは旧日本国のシステムを使ってますのでな、ナインのお嫁さんとしてはわたししか登録できないのですなー。」
「私より先にナイン様と結婚したくらいでいい気にならないで。」
「ならないでー!」
「見た目だけならヒュネアが一番年上っぽいのに言ーとること子どもやな。」
「ヒュネアは同型機共に知識はインプリンティングでして、生きた経験が足りないのですなー。」
「だから私がヒュネアの姉。」
「ぶーぶー!イヴがお姉ちゃんは変です!」
「はー、まあえーわ、ほんでこれ、ナインに読ましといて。」
「ん、AADAからの書類ですな。」
「読まなくてもわかる。私達がロミネンシアパイロットに選出されたって内容よ。」
「おなかすきました。」
「あなた」は次の注文を調理、ガルデニアが提供し、イヴが仕込みをして、ヒュネアが洗う。
理想的な役割分担でお店は以前より円滑に運営が出来るようになった。
「まー、それはそーやけどなー?」
「どうされましたかなー?」
「マチコはメンマだけ頼むのやめなさいよ。」
「ナインー、からあげ食べたいー。」
お昼のお客様も落ち着いた。頑張ってくれたみんなへまかないの料理を─。
「本格的にパイロットやんなら、お店どないすんの?」
「あー、忘れてましたなー?」
「私はナイン様がいるならどこでもいいわ。」
「おかわり!」
これは大問題だ。
「あなた」はヒュネアのために焼き飯を作りながら天井を見上げた。
「おー、ナインが困っとるん久しぶりに見たわ。」
「かーんたんでーすなー、ほれ!」
「ガルデニアは困ったら花を出すのズルい。」
「ぱくぱくぱく。」
筋骨隆々の腕と脚の生えた花が、お店の作業を始めた。
A、「こんな解決方法ってある!?」
「あなた」はマチコと共に声を上げた。




