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トライカー全球大会編⑧花

「さあやって参りましたトライカー全球大会3日目!名コマンダーにも疲労、外傷が目立って来ました、先日内蔵エンジンが暴走を起こしたイヴ・イールアンぜ、痛々しい姿となったが相手のナイン・エルナも大会前の左腕損傷、ヒュネア・フィカスの風による全身裂傷、マリア・サルターレとの怒涛の蹴り合い、いま両者共に、ここに立っているのが奇跡的だー!」

わああー!

観客席は司会の解説に合わせて、今日起こる波乱への期待を込めた歓声を上げる。

「じつはマリアの声はわたしにも届いてましてなー?」

ガルデニアが「あなた」の耳元で囁く。「あなた」はぎょっとするも、ガルデニアはこの惑星、地球での粒子振動をコントロール出来る、別天体で製造された対惑星文明兵器なのだ、「あなた」の口の中へ囁いたマリアの声もまた、把握されて当然だ。

「きょーはイヴちゃんと仲良くなるつもりですなー?」

つま先立ちで「あなた」の肩に顎を乗せるガルデニアの指先は、「あなた」の頬を撫で回し、唇を優しくつまむ。

「んー、ちゅっ。」

瞬きするような、口付け。

「わたしはさいしょのおよめさんですからなー、ナインのあたらしーうわきもみとめちゃいますぞー。」

目を細めて微笑むガルデニアは、思いっきり「あなた」の胸に顔を埋めて抱きついた。

ぎゅっ!

時が止まっても、いいくらいの僅かな時間。

ばっ。

離れる。

「そーれでは、いってらっしゃいでーすなー!」

ばちぃん!

彼女の手が「あなた」の背中を叩く。

「おお、これが真のお嫁さんムーブ…!」

マチコの声を背中に聞いて「あなた」は、

す、

足を上げて、

わああー!

フィールドへ、

、た。

足を下ろす。

うおおー!

心が驚くほど軽やかに、なった。

マリアとの戦いで、見えて来たものを、イヴへ、ヒュネアへ、

やっちまえー!

伝える。

ひゃあああ。

ドーム型アリーナの空調は穏やかに囁く。

「それでは試合ィー!」

司会の声に合わせ、「あなた」とイヴはトライカーを構える!

お互いに叫ぶ!「トライカー!」

「開始ィー!」


A、「ゴー!」

「あなた」とイヴの手から、トライカーが放たれる!

ばぐぅん!

即座にイヴのトライカーが衝撃波を放ち、その周辺のビルヂングを破壊してゆく!

当然イヴからも同様の衝撃波が来る!

マリアやヒュネアの時には取らなかった戦法だ!

昨夜聞かされた内容通り!

ダダッ!

シイイイ!

「あなた」とトライカーピュモッソは港湾エリアへ走る!

「あなた」の胸には、昨夜の会話が思い出される!

 ─────

「イヴとヒュネアは殺戮のために造られた子。」そうマリアは言った。恐らくヒュネアに敗北した後、肉体、内蔵エンジン面での「調整」がなされるのだろう。その内容で「あなた」はピュモッソの調整を行うAADAエンジニアに話しかけた。─「それは当然だろう。これまでの戦法でマリアには勝てたが、ヒュネアには負けた。精子と卵子すら完全にデザインされたイヴは、単に数ある中から生き残ったモルモットだ。次に「あなた」に負ければ廃棄処分は目に見えている。切り刻まれて豚の餌が妥当だろう。」今大会からお世話になっている、帽子を目深に被ったAADAのトライカーエンジニアはそう言った。「なぜそう言い切れる!UBDAだってわざわざ育てたイヴを失いたくないはずだ!」そう「あなた」は食い下がった。必要が無くなったから、豚の餌に、比喩だろうとは思ったが、彼女は続けた。「ならそんなに大事な実験体が、わざわざ暴走した際に燃え上がって、本体を焼却するようにプログラムを仕組まれていたんだ?」「あなた」は躊躇するものの、否定するために言葉を絞り出す。「それは、単にイヴがオーバーロードさせてしまって…。」彼女は「あなた」に興味を失くしたかのように横目で見た。かちゃかちゃ、ピュモッソの脚部駆動部のギアをはめ直す。「答えに気付いた上での、下手な誤魔化しだな。死体の中のイングラを自分ごと光の剣で焼いた男の言葉とは、思えんね。」「あなた」はその返事だけで予感への確信を得る。「イヴから手に入るデータは、全て解析が終了しているの、か。」こと。そっとピュモッソを置いたエンジニア、いや、イングラ事件の時あの場にいた技術者は、立ち上がり、ついに「あなた」を真正面から見た。「マリアの言葉は真実だろう。ヒュネアとイヴを救えるのは、君しかいない。」彼女は機器を操作し、デスクのモニタへあの時の映像を再生する。5本のランサーで五芒星を描き、その中心でプラズマに焼かれながらイングラと交信を行う「あなた」がいた。「この中に足を踏み入れた者は─!」瞬きをしない彼女の視線に「あなた」は深く頷く。「マリアはその戦闘センスと人格からSADAの代表になったが、君の持つ「この星由来」ではない能力は持ち得ない。」エンジニア兼技術者の彼女は、イヴの戦闘記録映像を再生する。「私の見立てでは─。」イヴのこれまでの戦闘行動と、それに合わせて彼女の胴体内エンジン位置が示される。「初手から全開が予想されるね。最終的な解決方法は君に期待するしかないが─。」

 ─────

ばぐぅん!

衝撃波は、まるで鼓動のように絶え間なく発生し、建物、家々を破壊する!

これほどの出力を高頻度で!

イヴを「調整」したUBDAは、どの道「あなた」との勝敗に関わらず、この試合でイヴのエンジンと全身を焼き切れさせる算段なのだろう。

ならば─。


A、「─ャ。」

「あなた」は腰のランサーホルスターから黒鉄の槍を引き抜く!

バグゥン!

次の鼓動衝撃波が、

バク、バクゥ、バク、バクバク!

A、─「ナイ、ン、しにたく、ない、しにたたくくなななない!!!」

「あなた」がランサーを抜いた事でイヴが恐怖したのか、それともイングラ事件のデータを手に入れたUBDAが警戒して作動させたのか─、イヴの心拍数は跳ね上がり衝撃波またはその連続でフィールド全体が空間ごと破砕し「あなた」に迫る!そのカンマ5秒の間に「あなた」は全てを解析予測し、


A1、「─ガョイェヲン!」

バヂィィィイ!

手に握られた黒鉄の槍、騎士たる証ランサーが完全励起する!

それを衝撃波の爆砕空間、その先のイヴの胸部中央エンジンに向ける!

A2、「参る!」

ヒュカッ!「あなた」はカンマ5秒でランサーを構え、駆けた!「イヴの心臓自体がエンジンに換装されている。」あの技術者の言葉が無くとも理解できる!衝撃波は全て、イヴの胸部を中心として発生していた!大気の粒子分子を振動させる衝撃波は、粒子分子自体をプラズマ化させるランサーで加圧加熱させ、切り裂ける!

バシュウ!

イヴの胸を無限の熱量で貫くと同時に励起を完全に停止させ、叫ぶ!

A3、「ルニア!」

ぱふん!

その声を待っていたかのようにイヴの胸から、ガルデニアの白い花が咲いた!

しゅあ。

ランサーを引き抜く。

ば、た。

頽(くずお)れるイヴを抱き抱えて、司会を見て、頷く。


A1、─「こ、こんな、こんな事が!」

司会ですら、目の前のほんの数秒の出来事を、正しく理解出来ないのだろう。

アリーナの観客席が沈黙している。それは恐らく、AAoEの上位陣または、UBDAでイヴに関わる人物全ても。

A2、「完全に、完全にイヴ選手の胸を貫いたナインの、輝き光る剣?は白い花になってしまいました!」

そう、ランサーの発生させる熱量で、イヴの全身を巡る神経配線を焼き切り、彼女の魂が消える前に、ガルデニアの花で身体へ縫い止めた。

「これが、これが所属不明来歴不明目的不明の、自称騎士ナイン・エルナ、その騎士としての実力と言う事かァー!」

「んー、ナインはちゃんとした女神直属騎士ですなー。」

「うぉー、やっぱり本妻ムーブやなー。」

「う、うお、実況席にナイン・エルナの妻、ガルデニア・ヴィナヴァルテさんとマチコだァー!」

ただ、この地球人類の科学力では解明に時間がかかるだろう、百年か二百年、またはこの惑星が燃え尽きるその日まで。早口で撮影したビデオを解説する司会と実況席、理解に努めようとざわめく観客席。それらの声量で─。

A3、─「あ、」イヴが目覚める。「「あなた」が、ナイン。」

頷いた「あなた」は、イヴを降ろそうとする。

タキュウン!

ぱくん。

イヴの後頭部を狙って放たれた弾丸は、白い花に喰われ。

ぺ。

かちゃ。

白い花の口から、銃撃者の人差し指と、伸ばした腕ほどの長さの狙撃銃が吐き出される。

「下ろしちゃだめ。」

イヴが「あなた」の首に両腕を回し、

「ちゅ。」

甘えるような口付け。

「私の騎士様…。」

ガルデニアの花で蘇生させたと言う事は、イヴは既にこの地球の生き物では無くなってしまった。勢い任せの行動とはいえ、イヴは潜次元戦艦リコペルシカへ連れて帰ることになる。「あなた」は何とか、カランコエ達へのうまい言い訳を考えつつ、もう一つの試合中継モニタを見ると、マリアがフィネアを停止させていた。彼女の両脚にはアークソードが輝いている。やはり「あなた」と戦った時のマリアは、決定力を持たないため「あなた」を勝たせた。

つまり、2勝1敗同士の「あなた」とフィネアが、決勝で戦う事になる。


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