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トライカー全球大会編⑥敗北

わああー。

歓声が聞こえる。

肩を大きく回す。

綺麗に動く。

肘を動かす。

痛みはあるものの、動く。

手指を握り締め、好きに伸ばし、曲げる。

綺麗に動く。

腕を持ち上げる。

電池の切れたように、落ちる。

「筋肉繊維の断裂と、それに合わせて神経に何らかの損傷がありますね。恐らく1ヶ月ほどで修復、さらに1ヶ月はリハビリが必要でしょう。」

医師は、そう判断した。

「君の自己犠牲により子どもを助けた事は、誰もが目にした。今大会を棄権しても、誹るものは誰もいないだろう。」

AADA方面司令官は、そう言った。

それでも、

傷を負ったから見逃してください。

などと言う訳には、いかない。

野生の生き物ならば、餌食となり、

戦場に於いては、排除が容易な対象となる。

何よりも、「あなた」には目標がある。

この大会で己の身体能力とコマンダーとしての優秀さを誇示し、この地球でのロミネンシアパイロットとなる。

そして、異星文明人と地球人類の新しい未来を創る。

本来の「あなた」の戦場、故郷と呼ぶべき所へは、11月の14日、惑星直列を利用して帰還する。

次は無い。


A1、「だから。」

リングへ上がる前に、ガルデニアへ口付けする。

A2、「出来ることを、」

マチコへ微笑む。

A3、「やるよ。」


わ、ああ、あー!

トライカー全球大会、特設リング。

全天候型のドーム球場、そのマウンドに再現された、都市と山々、海岸線の工業地帯。

これらは全て、トライカーの行動で破壊と、炎上、爆発が起きる。

手のひらに乗る玩具であるトライカーを搭乗型二脚兵器ロミネンシアに見立て、その縮尺に合わせたジオラマで、戦う。

演算装置にプログラムを行い、組み上げるコマンダーは、トライカーへ適切な指示を行うため、そのフィールド外周を走る。

ここまでは、エリア大会までの話。


「さらぁにー!AAoE、全球機構は優秀、非凡なコマンダーをロミネンシアパイロットに採用するためぇー!」

中継席の司会が、マイクに叫ぶ。

「コマンダー同士の直接の戦闘もぉ、認めておりますうぅー!」

わああー!

ロミネンシアのパイロットはつまり、AAoE以下区域防衛機構預かりの正規兵になる。

ロミネンシアが擱座、または必要のある場合は陸戦を行い、直接異星文明人を無力化する。

細かなルールの解説と、観客の咆哮の中、「あなた」はゆっくりと深呼吸をする。

心を平たく、冷静に。

「それでは試合ィー!」

司会が叫ぶ!

遥か先、バイザーを付けたヒュネアが、トライカーを構える!黒衣のマント風のロングコートが、翻る!

「トライカー!」

彼女の透き通った声が響く!

「あなた」も受傷していない、右腕で構える!

「開始ィー!」


A、「ゴー!」

「あなた」も叫び、手からトライカーを放つ!

ダッ!

フィールド外周を駆ける!

ジィィィィ!

トライカー:プロタガルテも「あなた」の視線の先、都市部と山間部の間、幹線道路を疾走する!

ヒュネアは既に、空中へ浮かび上がっている!

彼女の身体に内蔵されたエンジンが排熱で周囲の大気を歪ませている!


A、─シュ、ダンダンダンッ!

その熱量を急速に冷却させ、運動量が低下して縮み、さらに圧縮された大気と集まり、重くなる!

それを、直接落とす!

原理としてはダウンバースト!

更に冷却させるために使用したエンジンは熱を生む!

発熱から冷却のサイクルを利用した、止まらない大気の重圧!


しかし、「あなた」は既に!

プールの中でガルデニアが起こした激流の中で、流れの一歩先、数歩先を読み、歩く、駆ける特訓を行っている!

トライカーだけでなく「あなた」にも、その大気の塊は襲いかかる!

ふぉ、ん!

ぶぉぉ、ん!

本来不可視!

しかし、その大気もまた、「あなた」の位置を狙う!

駆ける「あなた」は、その流れを読む!

足の腱が!

肩が!

腰が!

先日の子どもを助けた際の受傷で!

完全無欠だったはずの「あなた」の!

意識と思考から、着実にズレを生み出す!

ばくぅ、ぅ。

範囲の狭いマイクロバーストは見切られていると判断したヒュネアは、低威力ながら範囲の広いマクロバーストを「あなた」の可動範囲全体に押し広げた!

全身の、動きが鈍くなる!

ぶしゃ、

全身の、擦り傷が、

あ!

裂ける!


A、「ヒュネ、ア!」

ダムッ。

まとわりつく大気から、全身のコントロールを取り戻すことに気を取られていた「あなた」は、頭上に落ちる空気の塊を避ける事が、出来なかった。


フィールドに押さえ付けられた「あなた」の見ている前では、プロタガルテが、

A、─メキャ、ア。

ゆっくりと、押し潰されていた。


「勝者、ヒュネア・フィカスー!」

わあああー!

歓声の中、

った。

降りてくる、軽やかな足音。

「どうして、」

震える少女の手が、「あなた」の肩を抱き起こす。

「「あなた」はそこまでして、戦うの…。」

バイザー越しのヒュネアは─。

わああー。

映し出されたスクリーンには、イヴがマリアの行動を制御、停止させているのが見えた。

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