トライカー全球大会編④特訓
ピッピッピッピ。
短く小気味良いホイッスル。
それに合わせて全身の筋、腱を伸ばす。
ぴーっ。
吹いていた本人は、背を反らしてから、終了の合図を出す。
「んんーっ!きもちいーですなー!」
以前海に行った時とは違い、動きやすさに焦点を置いた水着のガルデニアが声を上げる。
「あなた」はそれを見ながら、もう少し右手を伸ばし、左足首を掴む。
「うぉ…鍛えとるんは知っとったけど柔らけーなー。」
髪を縛ったマチコが言う。
「何だかんだで毎晩カランコエにしごかれてまふからなー。」
「へー…。まあえーわ、明日から全球大会やしな。」
「そーあたりですからなー。」
きゅ、きゅ。
「あなた」は念入りに関節と筋を伸ばす。今日身体を壊してしまったら意味が無い。
「ほな行くでー!入れナイン!」
ザ、ブウン。
駆け、飛び込む。
ごぽぽぽ。
首まで浸かる高さの水位から、顔を出す。
「AADAのみなさんにはプールを閉鎖してもらってますからなー!」
びちゃ。
ガルデニアは水面につま先を乗せ、
「マチコはびっくりしないでほしーですなー!」
ぐぱぁ、ん!
ガルデニアの身体を、薄紅色の羽衣が覆い、
チャキチャキチャキン、
黒い、半剣状の花弁が何枚も花開く。
「うおお何だこれ!」
案の定驚くマチコ、だが構う暇は無い。
ざ、ぱあ。
「あなた」はガルデニアがプールに発生させた水流に逆らわず、沿うように右脚、腰、肩を引き、合わせる。
「なーいーんー!」
ガルデニアが嬉しそうに声を上げる。
「アネモネお姉ちゃんのよろい虫はいりますかなー?」
A、「喜んで!」
既にブラックバッカラの半剣が中空に展開し、「あなた」を囲んでいる!
「うおお、水の中動き難いやん!?」
A、─「じゃーいきますなー!」
ぐぽ、ぐぱ、ぁ!
プールの底面、そのあちこちに歪みが生まれる。
「な、何なんあれ…。」
「アネモネお姉ちゃんは、おに、いそめ?みたいに何でもひねってひっぱるのですなー。」
「何それ、鬼イソメ…うおお!?」
スマートフォンで検索したマチコは驚愕する。
「そーれーじゃー!」
どぷぅ、ん。
プールの水がうねる!
ちゃぽぽぽん!
半剣の花びらが、プールに沈んで行く!
「いーきーまーすーなー!」
プールは、嵐の海のように泣き叫ぶ!
水流の中では、脚部で姿勢を保てない!
黒赤の剣が、その渦の中を飛び交う!
その中を、「あなた」は駆ける!
駆けるように動く!
「死ぬ!死ぬって!出来るわけ無いって!」
マチコが叫ぶ!
足元の揺らめきを避ける!
アネモネの鎧腕虫は、巻き込まれた瞬間に死が確定する!
ブラックバッカラの半剣は、掠ってしまえばそれだけで血の海で溺れることになる!
「こんなん!トレーニングとちゃう!」
アルストロメリアとガルデニアの起こす水流は、不規則に吹き荒れる嵐!
「ナインー!」
ガルデニアの体験したヒュネアの気流は、大気の粒子をコントロールしていた!
つまり水流をコントロール出来るガルデニアなら、ほぼ同条件!
「そこまでして、勝たなあかんのかー!」
半剣を躱すよりも、その流れ、軌道を水流から予測、身体を包み動かす水流を流す!
「そうだよ。」
「え…。」
鎧腕虫の触覚器官、探知範囲に留意する。
「ナインは、そこまでしてでも、わたしたちがいきるために、たたかうの。」
いずれ来たる、第十三次元人カヌメナーアとの対決のために。
目を凝らす。
全身で水流を感じる。
駆ける。




