トライカー全球大会編②食い逃げ
「はむっ!」
スプーン、キチンとした名前はあるものの、とりあえずはスプーンで山盛りに焼き飯を乗せ、頬張る。
「はふほふほ!」
熱々の出来立てを頬張り、頰を膨らませるように食べる。
「はむっ!ほふほふっ!」
飲み込む動作も見えないまま、次を口に運ぶ。
「ほふ!」
スプーンを握ったまま、人差し指を立てる。
かしゃあ、かんかんかん。
その指に合わせて、鉄鍋を振る。
「うぉーすっげ。」
「どんどんおくちにはいっていきますなー。」
せいろをテーブルに置いたガルデニアは、お客さまの代わりにフタを持ち上げる。
ふわぁ。
焼売、花の形に切ったにんじん、輪切りにしたれんこん、アスパラガスが湯気と共に顔を出す。
「ほむほほむ!ほふ!ほふ!」
現在たった1人のお客さまは、その蒸したお料理も頬張り、飲み込んでゆく。
「よっぽどおなかがすいてたんですなー。」
次のからあげを飲み込んで、やっと彼女は動きを止めた。
「ふう、みなさまのおかげで私は空腹を満たせました。」
両手を胸の前で合わせ、彼女は何かに祈るように目を閉じる。
「それは良かったですなー。ナインのお料理がお口に合ったみたいでわたしも嬉しいですな。」
ガルデニアも笑顔で言う。
「あの有名な、イングラ事件を解決したAADAのトップコマンダーがお料理のお店をしていると聞いて、急いでやって来たのです。」
「へぇ、ナインも有名になったもんだな。」
「マチコが育てたよーなものですからなー。」
「ふふ、全球大会はエリア大会とは違い、各区域防衛機構傘下の企業が最新のロミネンシア用新機軸兵器を、トライカー用に調整してデモンストレーションする舞台でもあります。ナインさんがどこまで進めるか見ものですね。」
「おー?なかなか挑戦的ですなー?」
「アタイのナインにえらい突っかかるやん?さては他区域防衛機構の調査員やな?」
「ふふ。」
彼女は答えず、微笑みと共に立ち上がり、
「あ、お会計ですかな。」
ガルデニアがお店入り口のレジスターに立つ。
にこ。
微笑んだ。
「えーと、さんまんごせんえんですなー。」
カタカタ、レジを打ってガルデニアが微笑む。
「よーけ食べたなー。」
マチコも感嘆する。
からら。
彼女は引き戸を開けた。
「お会計がまだですなー?」
ガルデニアが声をかけると。
「ふふ、私は風と共に来たりて、風と共に去る女。」
ひゅうううう!
冷たい秋の風が吹き込む!
「むあああ!」
「うおお!」
ガルデニアとマチコが姿勢を崩す!
異常な強さ、圧のある風!
だが!
「あなた」のいる厨房にはそよ風!
範囲を限定して、風の強さがコントロールされている!
「トライカー全球大会、AADA代表ナイン・エルナ!決勝戦でお待ちしております!」
彼女は厨房から見ていた「あなた」にウインクをする!
「ぜひこの私、風のヒュネアを捕まえて、愛の口付けをしてくださいませ!」
「お会計がまだですなあああー!」
対惑星文明兵器であるはずのガルデニアでさえ、風圧で動けない!
彼女は食べ過ぎたのか、てぽてぽと歩いてゆく。
「ちょ、」
マチコが震える!
「ちょっと待てや!食い逃げやないかーい!」




