トライカー編32 刑死
チュイイイイイイイ。
トライカーの脚部、人間で言えば足裏に輪、タイヤを忍ばせ、平滑な路面で走らせる。
かつての戦乱で汚染され、人間の立ち入りが不可能となり、閉鎖された遺構、
首都圏外郭放水路。
自然の光が閉ざされたが故に、そこに生まれた原生動物は、自ら発光し、思考を伝える事を選んだ。
真っ黒な空間で、巨大柱が並び立つ中で混乱したイングラが、無数に明滅する。
まるで、星空─。
その奥に潜む、或いは全てのイングラの母体となる、ドゥモナ・ディエナが、ただ、生きている。
地下神殿。
かつてこの施設が建築された頃、現地の地球人類、日本人はそう呼んだ。
カシュ、ン。
先行の水道局トライカーチームと合流する。
ザザ、
「既に周囲のイングラには持続性の交信を行った。暫くは続くだろう。」
水4が冷静に報告する。
ジジ、
「あんたがナインか。ディエナは任せたで。」
ガチャ。
水3は機体の腕部を「あなた」のトライカー:プロタガルテの腕部に当てた。
ここに存在している、と捕らえた─犠牲となった水2コマンダーの体内に存在するイングラは述べた。
「おーきさはわかりませんからなー。」
ガルデニアが「あなた」の腕の中、膝の上で身体をくねらせる。
A、「とにかく、出来ることをやるだけだ。」
「あなた」の言葉にマチコ、水3、4は頷き、
シュイィ。
トライカーはポンプ場へ、楔形陣形を整え、進み─。
ダララララララッ!
各機が散開!
今の清掃用弾薬は、左上と右奥の2方向から斉射された!
「何や、何やの!?」
マチコが狼狽する!
「まさ、か─。」
水4が、陣形を整えるように動き─、
ザイン!
左上から跳ね降りたトライカーのアークソードが、水3トライカーを、切り裂いた!
「今のは、水2の機体!」
水4が叫ぶ!
「ちい、っちゅーこちゃあ奥のは水1か!」
バチバチィィィ!
マチコのリベンジゴージャス2が、両腕のアークソードを展開する!
「アレの相手はアタイがやる!行けナイン!」
ギュアアア!
リベンジゴージャス2が、右奥水1に向かい突撃する!
「行こ、ナイン。」
腕の中のガルデニアに頷き、トライカーを進ませる。
ジャイイン!
パララララ、ラ!
剣戟と銃声を後に。
シィィィ。
トライカー:プロタガルテは滑走する。
暗闇へ、
人類の智慧が産んだ、その神殿の最奥、イングラ達の神の住まう場所へ。
キュアア、
トライカー:プロタガルテのローラー走行を止め、
カシャン、カシャン。
単純な二足歩行へ切り替える。
スウゥゥ。
バクゥン、バクン。
ポンプの動きが、鼓動のように聞こえる。響く。
「おー、ディエナですなー。」
「うわ、おお、大きいっちゅーもんやないで!」
ガルデニアの感想に合わせ、水1と戦闘中のマチコも覗き、声を上げる。
地球人類が、その重力に抗い、鳥のように空を飛ぶために作ったエンジン、それを転用したポンプのそれぞれにまとわりつき、
むぎゅううい、ポフン。
稼働するポンプの運動エネルギーを取り込むかのように、聳えるそれは、
とんつーとんつーつー、
明滅した。
トライカーの微弱な発光を、同族のものと混同して、「何の用?」と聞いたのだ。
A、つーつーつー、つーとんつーとん、「あなた」は発光信号を行う。「子どもたちを、連れ戻した。」
ポプン、ポプン。
ゆっくりとした、駆動音が響き。
つーとん、つーつー。
その発光と共に、ポンプにまとわりついた肉の腕がプロタガルテに迫る!
その意味は、「負け犬に用は無い。」
ぷろぼくぅ!
ギャキィリリリリ!
不測の事態にも準備していた「あなた」は予備動作が見えた瞬間にプロタガルテを駆けさせる!
A、「ルニア、アロエ、展開用意!」
バヂィィィイ!
カタカタカタカタ!
「あなた」は叫び、回避行動を続けるプロタガルテ背面サブアームに掴んだコンテナへロック解除コードをコンソールのキーボードへ打ち込む!
A、─「けっきょく、こーなっちゃうんですなー!らー♪みどりのくさはらー♪」ガルデニアが圧縮言語の祝詞を歌い!
「ルニアの祝詞、コード変換!送信します!」元スマートフォンのアロエが輝く!
ぶぉろぶ!
肉の腕は弾けるように欠片を飛ばす!「読めている!」これはトライカーの公式試合、ランクの低いコマンダーが行う弾幕!食い殺した水道局コマンダーの脳記憶から学習したのだろう、が!
結局その学習ベースは地球での下水管保守点検作業を行うコマンダーだ、次元騎士として最前線で対惑星文明兵器と戦ってきた「あなた」には!
ばくぅん!
肉腕も!
だぽぽぽぽ!
肉弾も!
ジャリィィイン!
トライカー:プロタガルテの腕部アークソードで斬り払う!
見えている!
A、「コンテナ投下!」
内壁を跳ね飛びポンプ、ドゥモナ・ディエナ直上で「あなた」はコンテナを切り離した!
ヒュカア!
コンテナが肉の塊の上で開く!
A、「あゞ、おひさまのうたー♪」
ガルデニアの歌がサビに入り!
コンテナから散らばるイングラ、かつてガルデニアの白い花に捕食された120本の指が!
ぽぽぽぽぽん!
花と咲き、筋骨隆々の男性の脚が生えた!
がパァ!
それぞれの花の中心には人間の口が開き!
むしゃ、あ!
ドゥモナ・ディエナに噛み付く!
「うおお、すっげぇ…。」
マチコが「あなた」の腕に顎を乗せ、感嘆の声を上げる。どうやら水1は撃破したようだ。
むしゃむしゃと、その肉体は喰らわれ、白い花が咲いてゆく。
「うおおえっぐいことすんのー。全部ガルデニアの花にされとんの?」
「だいたいそんな感じですなー。」
ザザ、ジ、
「フルツガヤだ。全球の各方面下水管並びに戦域でイングラの敵対行動停止及び順化を確認した。作戦終了、各員帰投せよ。」
AAoE、全球機構の総司令の通信が流れる。
「これけっきょく、ドゥモナ・ディエナは殺したんちゃうの?」
マチコの問いに、「あなた」は
A、「人聞きが悪い。いち組織の構成員が組織として殺人を犯した場合、最終的な責任を取るのはその頭だ。」
「んー、まあ、まあわかるで、けどなぁ。ここまで引っ張って結局殺すんは─。」
マチコは食い下がる。
A、─「ごめんなさい、も言わないで暴れ出したディエナがわるいのですなー。現場判断でしけーですぞしけー!」
元地球人、幸拓 結実子が製造した対惑星文明兵器ノーカラーズマークシックス、ガルデニアはそう笑った。




