トライカー編28 理解
とん、つー、とんとん、つー。
「あなた」の入力に合わせ、下水管の中にいるトライカー:プロタガルテは肩部ライトを明滅させる。
つーつー、とん、つーつーつー。
群体となる事で知性を獲得した、と判断される原生動物の群体、仮称イングラは、数度のやり取りの後、AADA出向の研究者の即興で考案した学習法により、モールス信号のやり取り手順を理解した。
「今のは何て?」
「あなた」はこの地球(「あなた」の知る地球とは別の星の歴史を辿った)に馴染むため、商店街の町中華店主としてこの地域で生活を始めたが、この地域の人たちは少々発話の際に、意味を理解するのに必要な言葉や語尾、助詞、副詞を省略、簡略化させている。つまり、「今の「あなた」のモールス信号と、イングラの発光での応答は何を意味しているのか?」と言う意味になる。
「今のやり取りですと、「こんにちは」に「おはようございます」とお返事されたのですなー。」
「あなた」の膝に座り腕にもたれるガルデニアが、発言者に解説をする。
「ちょっとずれてるんやねー。」
「せやけどだいたいおーとんな。」
「かっしこっ、おとーちゃん負けとんのちゃう?」
「えーねん、知らんでも生きてけるわ!」
商店街の人たちがおしゃべりをする。
「ではナインくん。」
恐らくは研究者が、「あなた」に促す。そして「あなた」は頷き─、
A1、入力を開始する。つーつー、とん、つーつー、─。
「これは何て?」
「わたしはナインです。ですな。」
A2、続けて入力する。とん、つーつー、とんとんとんとん─。
「わかった!あなたのおなまえなんてーの?」
「おーすげー。」
「ほら見ぃ、こんなちっちゃい子でも理解しとんのや。」
「ほなおかちゃんわかんかい。」
「知らんでも生きてけんのや!」
隣で争いが勃発したが、少しして、
A1、つー、とんとんとんとん、とん、つー。
A2、とんとんとん、つーつー、とんとんとん。
イングラは発光応答を返した。
「お、返事来よったで。」
「これは何て?」
「どうもありがとう。やて。」
「律儀なやっちゃな。」
「その次は?」
「私は家です。」
「おうち?」
「家、あー、家族って事かいな?」
「いっぱいあつまってるからかぞくー!」
場のみんなが、あたたかい空気に包まれた。
未知の存在と、コミュニケーションが取れたのだから、当然だ。
ざ、
そこへ、足音。
「む、水2コマンダーのムカイか。」
水4コマンダーが声をかける。
「ああ、自力で幻覚から復帰されたのですね。」
恐らくは研究者が、近寄ろうと─。
「あなた」の視界の端、モニターではイングラが発光する。
とんとん、とんつーつー、とんとんとんとんとんとんとんとんとん!
即座に「あなた」は椅子から跳ね飛び、研究者を突き飛ばした!
「な、何や!?」
「ナイン君!?」
す、
ランサーを構えた「あなた」の目の前で、水2コマンダーの目と口から、
ぬちゃ、あ。
指が、生えた。
「みんな、」
モニターを見ていた女の子が、口を開く。
「おなかが、へったって。」




