トライカー編22 蠢動
タパパッ!
肩部砲塔に装填した塩鉄弾を散布!
ジェイイィン!
蠢く無数の手指を、アークソードで切り払う!
ぼとぼと、ぼちゃ。
キィキィキィ。
かさかさかさ。
ねずみやごきぶりが、這い回る。
カシュン。
マンホールを抜けた。
背面にマウントした中継アンテナを設置する。
妙だ。
A、「目下最大の脅威である手指は、下水管内部に生息している昆虫、ネズミやたぬきなどの哺乳類には危害を加えていない。」
しいいい。
探査記録は「あなた」のスマートフォン、アロエをガンベルトに装着し、ボディカメラとしている。トライカー、プロタガルテへの音声指示はアロエに入力、カメラ映像受信用アンテナを送信利用とした。
A、─「ほんとーに、たぬきさんやごきぶりさん、ねずみさんには悪いことしてませんなー。」
ルリローを無数に咲かせた白い花に歌わせる事で安定化、カネクトゥス化させ、直接歌う必要が無くなったガルデニアは、泣きじゃくるマチコを膝に乗せ、「あなた」に呟く。
かしゃん、かしゃん。
プロタガルテは戦闘用の機動では無く、試運転などに使用する歩行モードで。これには帰還用の燃料だけでなく、水道局トライカーチームの、恐らくは手指に喰い荒らされたであろう残骸を回収するためだ。
ぶぉぉぉ。
作業用のガス換気ファンが唸り、響く。
ぱちぱち、ぱち。
依然として腕部アークソードの光は1メートルほど先しか照らせない。
ごぼ、ぐうう。
背後から大きな質量を持つうねりの音。
タァン、
プロタガルテを跳ねさせ、
ガチィ、
壁に張り付かせる。
ごぽごぽぽ。
見ていて気持ちの良いものではない、生活する、生きるひとびとが産み出した澱み、汚水が大量に流れてゆく。
ガシャ、アン。
つま先からかかとに着地させる。
「あなた」は「ふうぅ。」とゆっくり息を吐き、なるべく臭気を感じ取らないように、「はぁぁぁぁぁ。」口元を薄っすらと開けてゆっくり、肺から呼吸する。
「実際に吸う訳じゃ無ェのに。」普段のマチコなら、そう笑い飛ばしていただろう。
しかし、常に身を戦場に置くという意識を保つ事で─、
ぬら、
ぴたああ。
背後、側面から、汚水から手指が生えてきた!
キュウイィン、ガシャ、カチャ!
脚部関節を沈み込ませ、胴体と腰部関節をロック、固定された重心は足首膝関節に本体重量、移動していた運動エネルギーを負荷として蓄積させる!
タパパパ!
微細塩鉄弾を散布!
ギュア、
シュパアアアン!
一気にそれらを解放し、反動で得られた勢いで胴体をひねらせ、アークソードを振り抜く!
ざ、ざん。
だっぱぁぁあ。
切り払われた手指は、再び汚水へ戻ってゆく。
「おかしい、ですな。」
半狂乱となっていた商店街の人たちを花で包み、横にさせていたガルデニアが疑問を口にする。
A、「うん、このブロックは既に確保していた。」動体反応を示すセンサー表示には、小動物達しか映っていなかった。
ふおおおお。
定期的な換気装置も機能している。
A2、「あの手指が汚水を通っていたとしても、その流れが見えていない。」
何か、見落としがある、はずだ。
ぴちゃ、ぽちゃ。
下水管。
人工の、整備された洞窟。
有害な可燃性ガスが発生するため、作業用の送風ユニット式ファンと排気管で換気を行う。
ぼこ、ぽこぽこ。
一切光の届かない暗闇の中、前方から機械駆動音、一度汚水を組み上げ、送り出し流れを作るポンプの音が響く。
「水4のロスト地点がちかいーねー。」
ガルデニアの言葉に「あなた」は頷いて、
チャキ、カチャ。
トライカー:プロタガルテの背面サブアームが清掃用弾薬、つまり家庭用トイレ洗浄剤のボトルカートリッジを再装填する。
A、「参る。」
朧げに、蠢く無数の手指。包まれるトライカーのシルエットを「あなた」は認識した。




