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トライカー編21 管

ダンッ。

商店街の隅にある「あなた」のお店の裏、総合的な排水溝の脇に大きめのバケツをふたつ置く。

じゃああ。

お店の洗い場から伸ばしたホースで水道水を流し、貯める。

「探査用のオンソク、追加プログラム書き込みが完了しました。」

ひっくり返した野菜用ダンボールに置いたスマートフォン、アロエが話す。

ちりちりと暑さの残る秋空の下、「あなた」は汗を拭う。

「お店も夜まできゅーぎょーのお札を貼って来ましたなー。」

ぽろ。

15.6インチのポータブルモニターを2枚とアンテナ受信機を抱えたガルデニアの口から、指が落ちる。

惑星大気内で「あなた」とガルデニアに危害を加えようとする人物はいるかも知れない。

ぽろ。

しかし、毎分1.2本の人差し指を失う。そんなコストを支払ってまで無駄な行為を繰り返す二足歩行の知的生命体は、いないはずだ。

「うんうん、やーっぱりここの先にいそーな感じですなー。」

ぽろ。

指の落ちる頻度が目に見えて増えて、対象に近付いた、とも判断出来る。

「洗剤買うて来たでー。」

マチコがお得用、と書かれた洗剤ボトルを抱えて来る。

チュイイイ。

トライカーのギヤ仕上がりを確認。

カチャ。

トライカーは安全上の理由から生物、無機物に戦闘機動で接触すると自壊するため、あえて接触用の切り離し型装甲を付ける。

「にしても排水溝の先、下水やで?人間が生きとるっちゅーのは考えたないやぁ。」

「マチコはいがいとおじょーひんですなあ。わたしのそだったところはもっとすごかったですぞー。」

ぽろぽろ。

口から指が落ちるガルデニアを「あなた」は抱きしめて、頭を撫でる。

かちゃり。

金属製の蓋を持ち上げ、その奥の様々なごみが絡み付いた金属柵を外す。

「やっぱり、やんのけ…?「おまえ」の大事なトライカーやで?」


A、「水道局と連絡を取った。下水管への破壊行為を行わない限り、トライカーの武装使用も許可されたよ。」

こう言う時、AADA方面司令官とのコネクションを作っておいたことで、社会的信用が担保されているのが効いて来る。

「こーこーに、水道局のひとたちのトライカーもがぞーきてますなー。」

ポータブルモニターの1枚、画面を四分割して水道局トライカーのカメラ映像が表示される。

「意外と大事(おおごと)になってもーたなー…。」

「ガルデニアちゃんの口から指出てくんのがもう大事やて。」

「なんとかせーな気味悪いしなー。」

「何や何や、何しとんの?」

「妖怪退治やて。」

呆れるマチコの後ろで、商店街の人たちが喋る。野次馬も増えて来たようだ。

じじ、

「これより水道局トライカーチーム、探索を開始する。」

モニターに映された映像が、多少の乱れがあるものの動き始める。


A、「ナイン・エルナ、出る。」

キュイイ、タンッ。

A、─「あなた」の手から放たれたトライカーは、排水溝へ侵入を開始した。

異星文明との争乱、破壊と復興による都市機構の再構築があったものの、その基本的な構造は「あなた」の現実地球の物と大差無い。

ちぃぃ。

トライカー肩部のライトが、光の届かない、暗黒の洞窟を照らし、

きゅいいん、かしゃん。

進む。

ジジ、

「水1、異常無し。」

「水2、こちらも。」

「こっちゃー定期点検やっとんねん。人間の手ェ生えた生き物なんて─。」

「水3、任務に集中しろ。水4、異常無し。」

水道局トライカーチームもこれと言った異変は発見出来ていないようだ。

きぃきぃ。

「あ、ねずみちゃんですなー。」

ぽろ。

「そりゃー下水道やからなー。」


A、「獣の、胃袋の中に入った気分だ。」

暗く、圧迫感のある筒の中、汚水の流れる音とトライカーの駆動音、ネズミが鳴く声。

静かだ。

A2、「見つめられている。」

あまりに自然なほど、不自然だ。

「あなた」と水道局は、この下水管を調査に来たはずだ。

しかし、トライカーのカメラから見る、下水管の暗闇は。

A3、「観察されている!撤退を!」

トライカーを壁伝いに後退、リヤカメラを表示しつつ前面カメラ画像を注視する!

A.─「おいおいナイン、もう参っちまったんかい。」

マチコが軽く笑う。

A2、─「ねずみちゃんや、ごきぶりさんではないですかなー?」

ガルデニアはカメラに映る生き物たちに手を振る。

A3、─「おいナイン、さすがに怖がり過ぎやて─。」

マチコが「あなた」の頬をつつこうとした、その時。


ザザジジ、

「うおおああー!」

「水3、どないした!水3!」

「水2、水1信号ロスト!」

動いた。

「な、何や、きゃああ!」

隣の水道局モニターを見たマチコが悲鳴をあげる!

ぱらら、ぱら!

比較的低威力の清掃用弾薬を撒き散らす音がする。

「ナイン、わたしがで─。」

左腕を溶解させ排水溝を睨み、入り込もうとするガルデニアを手で制止する。


A、「フラマワンプロタガルテ、アークソード展開。」

シャリイィィン!

A、─トライカー腕部のアークソードが、暗い下水管の中を青白く照らす!


B、「水道局トライカーチーム、現況報告を。」

ザザ、

B、─「くそ!弾薬が切れそうだ!」「囲まれた!」「水1のロスト位置が塞がれてる!」

「ナイン、ナイン見えとる?何や、何やのこれぇ…。」

トライカーチームも、マチコも狼狽えている。

「らー♪遥か夢のー♪」

ガルデニアは、商店街の、集まった人たちと、離れた場所の水道局チーム、ここにいる全員をルリローでの保護を開始した。


C、「プロタガルテ、これより水道局トライカーチームの救援、並びに─。」

下水管の奥から蠢く、無数の手指に告げる─「真相究明と、事態の解決を行う。」

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