トライカー編⑦ルール解説
「うん、よくわかった。」
マチコは「あなた」とガルデニアの言葉を聞いて頷く。
「トライカーのコマンダー、つまり小さな子どもから大人までだけど、この公式競技や大会にはいくつか種類がある。」
マチコがなぞる指の動きは、手のひらほどの板を愛おしむようにゆっくりとして、
「オンソクに書き込むプログラムとコマンダーの戦術だけが勝敗を分ける「疾風」。このルールなら負けた機体も破壊はされない。」
ちゃぶ台に広げたパッケージの山から、スターターキットと書かれたものを選び、「あなた」とガルデニアに見せる。
「子どもながらの自由な発想と限られたお小遣い、大人の経験、そのどちらも、このキットだけを使って同じ土俵で戦うんだ。オンソクのプログラムもじっくり行えるから、1枚1枚を大切に扱うならこっちだな。防衛機構のヘッドハンターも「旋風」からコマンダーを見つけてる。」
次にマチコは、カスタムパーツを並べてゆく。
「次に無制限、何でもありの方だ。ルールの名前は「暴風」こっちは防衛機構に最新兵器を売り込むプロモーションとして、トライカー向けに調整したパーツなんかを使い放題だ。負けた機体は爆発する。とにかく派手で見栄えも良いから、人気がある。」
マチコの表情に、一瞬の陰が見えた。「あなた」の視線に気付いたマチコは、顔を上げて。
「アタイらのチーム、「ゴージャス」はちびっ子にトライカーを純粋に楽しんで欲しいから、「疾風」のルールやデコレーションを楽しんでもらう方向で指導してる。」
A、「だから、「暴風」に憧れる子どもには疎まれていたのか。」
あの喫茶店での戦いも、少年のものは重厚なな装備を付けていた。レールゴージャスは一見派手な装飾だったものの、戦闘用の風貌には見えなかった。
A、─「そんな所だな、確かにアタイらがガルデニアの服装に騒いでたのも悪かったよ。」
またマチコは頭を下げる。
「そんなに気にしなくていーよー。」
ガルデニアがマチコの手を握って続ける。
「所でナインはどっちにしますかなー?」
並べたグレードアップパーツは確かに高機能で高性能なものも多い、しかしその分、スターターキットのみで戦う「疾風」も味があるように見える。
A、「疾風で。」
そう、まずは基本からだ。グレードアップパーツは特殊な用途のものも多いが、その最終的な目的は同じ、勝利すること。ならばまずは─。
A、─「いーや、両方組んでもらう。」
マチコが少し強めに言う。
「どーしてですかなー?」
「喫茶店での戦いを見た通り、トライカーの勝負はいつどこで起きるかわかんねえ。」
ガルデニアにマチコは続ける。
「例えば、街中でナインが勝負を挑まれて、「相手の機体が「暴風」用のセッティングだから戦えませーん。」なんて泣き入れたらどう思う?」
「んーむ、けっこーしょっぱいですな?」
「そうだな、だから─。」
パチン。
マチコはガンベルトにセットしたトライカーの下、弾倉入れの留め具を外す。
「これを「疾風」用のトライカーにその場で装着するんだ。」
「あー、パンにバターを塗るみたいなものですなー。」
「うー、ん?まあそうだな、基本的な戦術を「疾風」で練り上げて、「暴風」で拡張する。ナインも軍人さんならわかるだろ?」
頷いた「あなた」は口を開く。
A、「複数のセットを戦闘中に切り替える事は可能なのか?」
マチコの眉が上がる。
A、─「ルール上は可能だけどよ、付け替えてたらその間は無防備だぞ?」
頷く、つまりやりようはある、と言う事だ。
「なんだかナイン悪い顔をしてますなー。」
「まー言うだけなら何だって出来るんだ、まずはオンソクにプログラムの書き込みからだな。」
マチコはちゃぶ台に乗せたパッケージ群を脇に置き、オンソクのものだけを「あなた」に渡す。
「さあ、スマートフォンを出しな。」




