トライカー⑥消耗品
「さて、それでこのオンソク、メインの基板だが。」
かんたんなちゃぶ台を3人で囲み、マチコがパッケージの1枚を手に取りヒラヒラさせる。
「中にゃ水素の結晶がチップ、つまりSOCってのが入っててだな。他のもだが、パーツはほとんど絶対零度って温度になってる。」
ちゅー、カラララ、コ。
カップの中のドリンクを飲み、氷が音を立てる。
「とーぜんそんな温度のモノは人間にゃ危険だろ?」
ぐ、ぐり。
ガルデニアは冷えて固まりすぎたカップアイスにスプーンを突き立てている。
「そーです、なー!」
「あなた」は、自分のカップアイスの柔らかい部分を掬い、ガルデニアの口元へ持って行く。「あむむ。」おいしーですなー。と言う風な表情をしてガルデニアは目を細める。
「サラッと夫婦ムーブしやがって…とにかく、そこは幸拓さんの研究の成果が公になった事で解決済みだ。」
「んぅーむ。しつちょーはお姉ちゃんたちとわたしもかいぞーしましたからな。それくらいなら余裕でしょうなー。」
じじ、じ。
ガルデニアがまばたきをすると、胸の前に青い線で構成された、ピアノの鍵盤のようなものが現れた。
「だろーな、幸拓さんは異星文明の観測機を使うほどの技術を開発して、それを検知されて戦乱が起きたんだ。」
マチコはその鍵盤をまるで見慣れたものかのように横目で流し、自身のスマートフォンを手に取る。
「さて、早く組み立てたくてうずうずしてるナインにゃ悪りーが、もうちょっと説明だ。」
カチり。
マチコは自分のガンベルトからトライカーを外し、スマートフォンのアプリを起動させる。
ぴりりりれれ。
流れる電子音と共にディスプレイを文字が流れ。
「何だここは、」
トライカーが声を発する。
「こーゆー感じでトライカーの挙動、性格なんかを細かくスマートフォンで設定すんだ。起動もそれでやる。」
マチコは「あなた」の前に並べられた数枚のオンソク、基板を前にトライカーを置き、
「一度設定して、オンソクに書き込んでパーツも付けりゃ動かせる。」
マチコは「あなた」の手にあるパーツを指で弾く。
「だが、そりゃ一方通行だ。保存は利かねェ。」
喫茶店での戦いで、マチコのグループメンバーが敗北した時の光景が思い起こされる。「ありがとうマスター、楽しかった。」そう言って手の中のオンソクは煙を上げた。
「ふむ、それでは私が直接トライカーの演算知能として振る舞う事は難しいですね。」
手元のスマートフォン、アロエが声を出す。
「アロエちゃんもナインのお嫁さんのひとりですからなー、でも。」
ガルデニアが言い淀む。
「言いてー事はわかる、オンソクに書き込んだプログラムは、所詮は消耗品になる。それでもコイツらは、生きてるんじゃねェかってな。」
「あなた」の心には、「姉は、私ナツコは、弟のために死ねるなら幸せだ、そう割り切っていた、けどこうして実際に話をして、触れ合って、離れるのが、怖いんだ!」と泣きじゃくった、「あなた」の現実での死を肩代わりする形代として死に続ける姉、ナツコたちの姿がある。
A、「消耗品じゃ、無い。」
このオンソク達も、ナツコも。
そして、「あなた」自身も。




