トライカー編⑧選択
一対の交差する刃を手に取る。
それぞれの刃に取り付けられたグリップは太めの穴、細めの穴がそれぞれに穿たれていて、親指、人差し指などを通す。
さ。
切断したい対象を空いた手で持ち、支え予測した切断位置を刃の交点を当てる。
対象の持つ硬度によっては刃先で切断するのもいいが、今回は厚紙、内容物をちりやほこり、衝撃から保護するいわゆる化石油の加工素材ごと切断する必要があるため、特に力を込めやすい交点で─。
じょ、き。
支える刃と、押し切る刃が対象を切断してゆく。
この感覚は久しぶりだ。
天の川銀河中心天体、いて座Aスターの内部領域に再現された巨大岩石惑星、命球、そこでは全ての存在が、発生した瞬間に命が与えられた。 この地球での魂はどう管理されているかはわからない。
だが。
この切断しているパッケージたちにも、命があるのだろう。内容物を保護するために生まれ、今この瞬間までその役目を全うした。
す、オンボードSoC、オンソクを取り出して、ちゃぶ台の上に置く。
A、「今この時を以ってこのパッケージ達は役目を全うしました。彼らの尊い犠牲に感謝を。」
手にしたパッケージを掲げて、額に当て、瞳を閉じて祈る。
A、─「そんな、パッケージをハサミで切って開けただけなのに…。」
マチコの声がする。
「ナインは、ここに来るまでの戦いで沢山の、たくさんの死を見てきた、見過ぎてしまったのですな。」
ガルデニアが、ちゃぶ台の前に座りパッケージに祈る「あなた」の背中に抱きついて、
「だから、歩こう?ナイン。」
「あなた」の肩にガルデニアは頬を擦り付ける。
仄暗い8畳1間。
透ける白いカーテンから差し込む太陽の光が、「あなた」とガルデニアを包む。
「ナインが日本に送られたのって、こう言うことかよ…。」
マチコは呟いた。
「助けられなかった命も、助けた命も、奪った命も、ぜーんぶナインに絡みついちゃってるのですな。」
膝立ちになってガルデニアは「あなた」の頭を抱きしめて、撫でる。
「けど。」
「あなた」の耳元にガルデニアが囁く。
「ナインは、わたしを、カランコエやナナカマド、みんなを守ってくれないの?」
「あなた」は振り向く。
ぱ、さ。
パッケージを、手から落とす。
ぎゅ。
ガルデニアを抱きしめる。
「そうだよ、ナイン。」
ガルデニアの手が、「あなた」の顔に添えられて、口付けをする。
「わたしを選んでくれて、ありがとう。」
太陽の光を浴びて、「あなた」は─。




