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刹那トラッカー⑥まだナツ!大作戦

ロマンつめあわせ!

刹那トラッカー発動編⑥まだナツ!大作戦


「そーれでね、今まで使ってたセリフラウが彼方岸へ飛ばされちゃったからわたしは、外出時の公共の電波を使うことにしたのよ。」

「お主、それアウタナの製造コードじゃろ。」

「あー、舞ちゃん2にはまだ言ってなかったね。アウタナはセリフラウの親系統に当たるけど、その子、枝葉は剪定されて、破棄されるのをわたしがもらって、お庭に埋めてたのよ。」

「ふーむ、つまりお主の熱量で囲っておった、と言うわけじゃな。」


「あなた」は、横になりながらその話し声を聞いた。

次第に意識が回復して、頭が回り始める。

確かアロエとヒヤシンスと浜辺で砂遊びをしていた、もう夏は過ぎて秋の涼しい風が。


「まーだ終わってないよー!」

「そう、ワガハイらのナツはこれからじゃあ!」


順番は前後するが、刹那ロストと名の打たれた文章に、事の次第が明記されていたはずだ。


「そー、2回説明をするのは好きじゃないけど、ナインの物語が始まったのと同時に別媒体で、ダリアとハィエルルラの転写模倣体の記述を続けていたの。」

「それで、べふこのすまひょが2026年8月30日に謎の機能停止を起こしての。」

「もーこれはカヌメナーアの仕業よね?でその2人の限定を解除して、この世界の詳細解説を記述していたの。」


A、「何でもかんでも結びつけるのは短慮だと思う。」

B、「おのれカヌメナーアめ!水着の季節が終わっちゃう!」


運転席のべふこは、前方に何もないのに円形のハンドル中央ボタンを叩いた。

ぷわぁぁーん!


A、─「ほれ見ぃ、ナインにまで指摘されておるではないか!ちゅるる。」助手席のロータス2はあざ笑いながら、何らかのカップドリンクをストローで吸う。「うっさいわよー!」ばし、ぷぁぁーん!べふこはハンドルを叩いてまたクラクションを鳴らした。


B、「そーでしょそーでしょ!やっとわたし達がナインといちゃらぶちゅっちゅできる番だったのにー!」「そうじゃ!ワガハイもロータス1とアルカルブ2に邯鄲の私的使用申請を2回もして、その度に「ナインと夏の思い出を作りたいのじゃ。」と言う羽目になったのじゃ!」ばしばし、ぷぅわぷわぁーん!女神ロータス2は身を乗り出してクラクションを鳴らした。


よく考えると、この車両は前面を切り詰めていて、さらに車高と座席の位置が高い。しゃあああ。さらに駆動機関が座席の下にあるようだ。「あなた」が後ろを振り向くと、何かしらの資材箱のようなものが見える。


「あ、気になった?この子はわたしのキッチンカー!」

「第六世代ロミネンシアじゃ!」


何の第六世代なのかはよくわからない、ただこの車両が、何かのトラックのようなもの、そのヘッドだと言うことはわかった。


「どーせその時が来たらわかるわよー。」

「今回はそれも目的じゃからのー。」


前方のべふこが何かの包みを「あなた」に投げる。ロータス2は飲みさしのカップドリンクを手渡す。


「お腹減ったでしょ?もーちょい走るから齧ってて。」

「ふっふっふ、ワガハイと間接ちゅーじゃぞー。」


少し前、もう過ぎ去った日、「あなた」はべふこやロータス2ともエンゲージ、口付けを交わした。

それはそれとして、薄い桜色の口紅が付いたストローに口をつけるのは、気恥ずかしさがあった。

ぶらるぁぁ。

車はそれなりの音を立てて走る。

かたかたかた。

車高が高いため起きる振動で、運転席ダッシュボードに置かれた小物が音を立てる。

やはり準駆騎士のカランコエのウサギを使用したスポーツカーとは違い、このトラックはエンジンやサスペンション周りが良くない気がする。

ぱさ。

包みを剥がすと、薄切りにされたパンにスライスされたトマトとチーズが挟まっていた。

かぷ、もぐ。

「あなた」がパンにトマトとチーズに何を感じるかわからない。アレルギーのため食べられないかも知れないし、独特の臭みが嫌いかも知れない。トマトの液果が苦手かも知れない。

ただ、口の中には生命の輝きが広がった。淡白なチーズの塩気が、ただの薄切りトマトの鮮やかさを引き立てる。

ちゅー。

からころ、と溶けた氷をかき混ぜて内容物を飲む。薄まってはいるものの、四足獣の乳を搾ったもののようだ。

「見えてきたよー。」

「んーむ!何が待っておるか楽しみじゃな!」

かた。

2人の背中越しに見るフロントガラスの向こうには、ただ青い、雲ひとつない空が見える。

夏の空だ。

もう秋なのに。

「空しか見えないよ。」そう口を開こうとした「あなた」の目に─。

青黒い、影!

ジキィィィィィ!

耳鳴りのような、高い音!

目の前の青い空に溶けるように、それは「いた」!

「あと10秒で停車するよ。」

「最近鈍っておったじゃろ、海に入る準備運動がてら、あれを停止させてみい。」

キュシュアアアアアア!

その言葉を反芻する前に、べふこと女神は青い走査線に包まれる!

「ロミネンシア、貸したげる。」

「気ぃ張れや、なんせワガハイ'の'ミルクを飲んだのじゃからの。」

青黒い質量が、跳ねるように見える!

思考している余裕はない!


A、運転席に飛び移りハンドルを握る。

B、飛び降りて状況把握に専念する。


A、─「あなた」にトラックの運転経験があるかどうかはわからない。それでも、やるしかない!

B、─ドアを開けて飛び降りた「あなた」が目にしたものは、無数の黒い楔形の結晶体で、それぞれが煌めく槍を発射した。「はいざーんねん。「あなた」は死にました。」「べふこがロミネンシアを貸すと言ったのじゃ。それを棄てるなら、もう死ぬしか無いの。」無数の槍に潰された「あなた」は、再び選択肢に戻る。


ぎゅるるらあああ!

操作方法が不明なものの、「あなた」はハンドルを掴み、アクセルらしきものを力の限り踏む!

かたかたかたかた!

ダッシュボードに置かれた小物が跳ね回り、ハンドルの近くで割れるように開く!

目の前の青黒い「それ」はうねるように縮まる!

巨大過ぎて目視では彼我の距離を掴めない!

ざ、ざ─。

ハンドル左側のラジオから、無線のようなものが流れる!横目には赤く点灯したように見えるボタンがある!


A.構っている暇はない!アクセルを踏みながら「あなた」は「それ」と衝突しないようハンドルを切る!

B、どう見ても「押してください」と言わんばかりにボタンが点滅する!眼前の「それ」も大事だが、「あなた」はボタンを押す!


A、─ギュルルルアアアアア!想像以上にロミネンシアの速度が出ていた!轟音を立てて旋回するエンジンとその力強さに「あなた」の身体は、車体ヘッドは振り回される!ぐら、ぁ。そして、ロミネンシアはバランスを崩し、運転席の「あなた」をすり潰した。「お主ー、ただのトラックが急ハンドルしたら事故を起こすのは当然じゃぞお主ー。」「わざわざ赤く光るボタン付いてるのに触んないなんて、カスタムしたわたしに申し訳なくないー?」2人になじられながら、「あなた」の意識は選択肢に戻る。

B、─が、が!「あなた」はハンドルを右手で握り、夢中でボタンを押す!この繰り返す死は、間違いなくロータス2の邯鄲によるものだ!つまりこの状況は、今までのウサギとは別の、何らかのマシーンの操作方法、実地習熟訓練!情報が足りなすぎる!


ザ、ザザ─。

通信が入る。

「フラマワン、こちら指揮のナナカマド。目標は対惑星文明兵器ナラシンハ及び随伴兵器群。」

挿絵(By みてみん)

息を呑む。

ナナカマドの声は感情を排した、淡々としたものだ。

見知ったパートナーが今、「あなた」の知らない声色で、冷静沈着に指示を出した。

その声に「あなた」は視線をナラシンハに向ける。

フラマワン、と呼ばれた。間違いなく女神直属騎士隊フラマ セラタとその隊長、「あなた」ナイン・エルナの事を指している。

ボタンが赤く光る。

スイッチを押す。

ザザ─

「フラマワンは第六世代機を使用した初の実戦により、本官ナナカマドが指示を出す。宣誓せよ、UltraSuperGiganticロミネンシア、スタンドアップ。」

その声に、


A.「UltraSuperGiganticロミネンシア、スタンドアップ。」


A、─バヅ、ン。腰の後ろで、重量物が切り離された感覚がある。まるで腰に巻いた紐で引っ張っていた荷車が切り離されたような。


ザウウウ。

解き放たれた機体は次第に安定し、「あなた」の視界にあったフロントガラスは既に無く、

キュイエアアア。

運転席だったそこは、前方に数メートルの幅を持った空間が出来、下部と上部から覆いが「あなた」の視線の先へ上としたから、降りて来る。

チイイイィ!

その覆いは接合部で両端から火花が走るように密閉されていく。

シュラシュラシュラ。

視界の左、右、上と下からそれぞれ機械腕が輝く板を持ち、それらを組み合わせる。

クゥゥゥ、ン。

パネルが組み上がるのと並行して、車両用の丸型ハンドルやサイドブレーキ等は格納され、左右一対の操縦桿らしきものと、先ほどまで赤く光っていたボタン、ラジオ類が操縦桿の間に移動する。

シャシャ、コ。

「あなた」の腰掛けていた運転席シートはいくぶん硬質化し、それでいて弾力性を保つ。両肩から両腰へ襷状に、腹部にベルトが巻かれ、肩から首、頭部へ半固定式の防護板が組み合わされる。

ザザザ、

「あなた」は赤いボタンを押す。

「読者の「あなた」はこの文章を、例えば電車の中で立って片手で読む、または職場学校喫茶店自宅の椅子、ソファ、ベッド、または座布団の上、べふこのように寝たきりで、ベッドや布団の上かも知れない、が─。」

パネルには下部反陽転斥力エンジンユニットと分離を始めたナラシンハ砲撃ユニットが映る。

「─そこが、「あなた」の操縦席となる。」

ずずず、ずう。

電磁分離を行なったナラシンハが大気を震わせ、薄くは無い装甲板に覆われた「あなた」の全身を、腹部の奥にまで振動を伝える。

ジ、ザザ。

赤いボタンが光る。

「あなた」はそれを押す。

「この起動手順は略式の邯鄲により、カンマ数秒に圧縮される。」

プァン、パァ、テレレルラララ。

正面の輝く板は液晶パネルのように、水晶が奏でるような音色を発して、点灯する。

ザ、ザザ。

赤いボタンが点灯し、「あなた」はそれを押す。

「第六世代機は従来機と同様に炉心崩壊熱を機体各所へ伝達し、これにより駆動する。」

ふぉん。

前面のパネルにはナラシンハが映し出され、複数並んだ赤いランプとその上、細い黄色のランプのひとつが点灯する。

「あなた」はそれらを順番に押す。

ザ、ジ。

「騎士とウサギの接続には従来ぜネロジオを使用するが、第六世代機は騎士側へのバックラッシュが大きく神経を焼き切るため、一対の操縦桿並びに3つのフットペダル、操縦桿中央の計器、スイッチ類での操作となった。」

ファ、ン。

点灯した黄色いボタンを押すと同時に、液晶パネルに薄い青色で枠が表示され、F-1.USG-Rominenciaと白で文字と二脚の機体が表示された。恐らくはフラマワン、ウサギのロミネンシアと表記されている。

ジジジ、ザ。

「あなた」は通信を受けるため。

赤く発光するボタンを押す。

「左操縦桿側の右側には、左から駆動機関と左操縦桿の接続、左操縦桿上に機体頭部カメラと連動する照準器、機体中央カメラと後方カメラの表示切り替えまたパネル下部への表示オンオフボタン、操縦席内部空調ボタン、各種駆動系補修材散布ボタン、頭部カメラ洗浄ボタン、またそれら上部に各ボタンを有効化するトグルスイッチがある。また右側操縦桿は機体脚部爪部に装備された簡易ランサーまたは本体中央シリンのディスティノの照準器であり、奥側引鉄は簡易ランサーの発動またその継続、先端の親指ボタンはディスティノ起動受付開始ボタンとなる。まずはトグルを上げ、、各ボタンを押して有効化しろ。」

ぱち、ぱちぱちぱち、ぱちぱちん。

左から順にトグルスイッチを親指で押し上げる。

パネルに表示されたcamA.B.let.sli.air.rep.wip.の項目が瞬く。

ぱん、カンカンカンカンカン。

左から順にボタンを押す。

先の項目がそれぞれ白く塗りつぶされ、onlineと表示された。

ザ、ザ。

通信が入る。

「あなた」はその赤いボタンを押す。

「パネルに表示されるインジケータのそれぞれは、左から駆動機関、排熱放熱処理機関、操縦席内気圧及び酸素濃度管理、機体各部損傷強度を表している。」

注視すると、それぞれの細長い線にはいくつかの仕切りがあり、現在はそれらの間を青白い縦線が自由に上下している。

ザザザ。

赤いボタンを押す。

「フラマワン、それらインジケータに表示された数値が中央の仕切りを超えた瞬間に、パネル中央のボタンを押せ。」

それぞれのインジケータに表示される帯状の数値は不規則に増減を行う。「あなた」はそれを見定めた!

A、各種計器と操縦席コンソールの接続統合スイッチを押す。

それらは、スイッチを押した瞬間に同時に起こった。

挿絵(By みてみん)

A、─まず、操縦席が「あなた」の座標を中心に前後左右、上下へ軋むように揺れた。が、グォン。

同時にパネルにはF1 hand console.luminous sea in the dark and cold.paffiltenilla sundariggan.と矢継ぎ早に表示された。

フラマワンよ、操縦桿を掴め、

暗く冷たい光の海に、

白檀の銃把を握れ。

そして、「あなた」の口が自然と開く。

「UltraSuperGiganticロミネンシア、スタンドアップ。」

挿絵(By みてみん)

ギャリィィィィン!

ロミネンシアの脚部足首先端、鋼鉄の鉤爪が地面を掴み!

ギャシイ!

蹴り飛ぶ!

か、クァ─。

跳ねる!

「「コネージョ・ソルタンド。フラマワン、ナイン・エルナ。」」

ロミネンシアの魂が、機械音声により「あなた」の搭乗を認証した!

「あなた」の正面、液晶パネルでは左上に高度計/深度計、右上には基点平面座標軸と機体の角度傾きを表示し続ける半立体の図が表示されている!

─ひゅああ、あ。

まるで背面から棒高跳びをした時のような、後頭部から倒れる時のような浮遊感が、「あなた」の心を包む。

ティーティーティーティー。

計器類が騎士の受ける体感重力と脳に送られる血流、酸素量の減少を警告する。

カチ。

「あなた」は点灯した緑のスイッチを押し、即座に意識が清涼になる。酸素供給が行われたのだ。

ちょうどナラシンハ下部エンジンユニットに対して斜め上まで跳ね上がったロミネンシアは、その頭部をナラシンハへ向けていた。

ジジジ。

「あなた」は赤いボタンを押す。

「フラマワン、現在主目標のナラシンハは随伴兵器群を生産している。」

黄色のスイッチのひとつが点灯し、「あなた」が押すとパネルのナラシンハの各部に彩度の高い赤い文字でmain hatchと丸型の表示と文字が表示された。

続けて点灯した赤いボタンを押す。

「第六世代に於いても、基本兵装及び戦術は第三世代と同様である。健闘を祈る。」


A、「それだけ聞ければ十分だ。」

B、「ありがとう、マドカ。」


「あなた」は左手の操縦桿を握り直し、手前へゆっくりと引く。


A、B、─「ザザンザ、ジば─。」

ナナカマドからの返事は、既に高速戦闘機動に入ったロミネンシアの通信機器では受信出来ない!


「あなた」は試しに左手操縦桿上の照準器を親指で軽く押さえる。

キュウア、ン。

思ったよりも速くカメラが一回転した。

ナラシンハだけでなく、この戦闘区域一帯をカメラは捉えて見渡した。

「あなた」の鼓動は、心拍数と呼吸間隔は上がる。「さすがにこれは、ピーキーすぎる。」そしてこれが、べふこのロミネンシアだと再確認する。つまり第六世代のウサギを使用した戦闘は、この領域なのだ。

今までのウサギ、カタギリのシリンに搭乗して両足でぜネロジオを接続して操作していた時は、まだ視点の移動には騎士である「あなた」本人の膝、腰と肩首に目の動きで十分だった。それが第三世代のウサギでの限界でもあった。搭乗した騎士の身体保護にはルリローで編まれた制服で十分だった!

機体姿勢を直下のナラシンハへ向ける。

跳ね上がってからの一連の動作時間はカンマ数秒であり、砲撃ユニットへの電力送信と発電、随伴兵器群の生産に集中している下部ユニットでは、ロミネンシアの動きは補足しきれていない!


A、反転跳躍を行い機体位置を撹乱する。

B、本体自由落下に合わせてナラシンハへ跳躍させ、加速力を上げる。


バグゥン!

砲撃ユニットには、ロミネンシアの動きが補足出来ていた!

数十キロメートル換算の尻尾状ユニットが重力制御技術により、軌道計算された鞭として、音の速さを超えてロミネンシアを狙う!


A、─「読めている。」「あなた」は無数の死により体得した知識から、ナラシンハは上下で1組の対惑星文明兵器、下部ユニットは無防備なため、上部砲撃ユニットは生体指向性誘導弾のみならず格闘性能もそれだけで通常の惑星文明戦力なら皆殺しに出来ると知っている。飛鷹のぜネロジオで計算予測と実際の観測で修正を加えてロミネンシアを3次元的に、つまり三角定規をその中心の穴に指を通しての回転のように、その回転一瞬一瞬に先端全てを蹴り上げるように、ロミネンシアを跳躍させる!


B、─「追いついて、みろ!」砲撃ユニットの尻尾を掻い潜るように、ロミネンシアは下部ユニットへ向けて跳ねる!あたかも、野うさぎが狼の牙と爪を躱し、荊の野を抜け、巣穴へ逃げ込むように!


一跳躍ごとにぐん、ぐ!と機体は加速し、ピーピーピーピーピー!操縦席の受ける重力加速度がヒト種の許容限度を超えつつあることを警告する!

パネルは既に格納した!既に「あなた」の瞳は充血し、頬や首は皮膚が張り裂けて血が噴き出している!


A、「我は、白檀の銃把を握り─。」


A、─眼前に迫る下部反陽転斥力エンジンユニットを前にし、「あなた」は右操縦桿のディスティノ受付ボタン、トリガーに指をかける。バグゥン。祝詞の入力を受け、ロミネンシア機体中央の操縦席ユニットが、他ユニットとの物理的接続を解除する!


B、「激鉄を起こせ、我は─。」

シャコアアアア!操縦席前方を覆っていた鋼鉄の顎は、今や螺旋の掘り込まれた円形の筒となる!キィー、操縦席後部には加圧加熱圧縮されたUltraSuperGigantic魂炉心の崩壊熱が螺旋を描くように、ただ一点へ添えられる!その矛盾自体が、これから起こる破壊の威力を物語る!


シュピャアアア!

ナラシンハ下部ユニットと生産された随伴兵器群が、ロミネンシアへ、「あなた」へ無数の質量槍を発射する!

黒い槍が!

目前に迫る!


C、「我は、運命の主人!」トリガーを、引く!

ぱん、あるいはズギュウウゥン。

かつて選抜騎士寮の締め切った暗い部屋で、ガルデニアやカランコエと共に、西部劇の活動写真の弁士をしていたナナカマドなら、そう表現しただろう。

元来の跳躍型ウサギと同じく、破壊力をシリン、操縦席ごと弾頭に集約した必殺の弾丸は、下部ユニットと随伴兵器群の放った黒い槍を粉砕、本体を貫通した。頭部保護のヘルメット、全身各所に装着した保護装甲板が衝撃を受け溶融、圧壊する。


そしてこれは、第三世代機でも起きていた標準的なディスティノ使用の結果である。

射出されたシリンはその後ファルタ ポデンカにより置き去りにしたパーツと再結合を行い、再度の射撃が可能になる。

しかし対惑星文明兵器ナラシンハの下部ユニットはその再生力により、ウサギの出力を直結させたランサーの連続射出「イェキ」でも焼き切れない。

そしてこれが、フラマワンたるナイン、読者の「あなた」が単騎でのナラシンハ破壊という本来なら決死の作戦に選ばれた理由。

手段は一つ。

挿絵(By みてみん)

A、「フラマワン、ウサギアウト。」

「あなた」は、着弾の衝撃後にシートを外し、操縦席を飛び出し、保護装甲板を振り落とすように身を捩り、振り向く。


A、─「フラマワン、ナイン!ナインさん!」

冷静さを失ったナナカマドの声がする。

しかしそれも、今は心地良い。

ひゅううう。

大気の粒子が「あなた」の身体で引き裂かれ、泣き声を上げる。

空に浮かんだナラシンハは、穴の空いた下部ユニット越しに砲撃ユニットが見え、当然のようにそれは無数の光、生体指向性誘導弾を「あなた」1人に向け、放つ。


「あなた」は、落下しながら左腕、紫電の龍を撫でる。


A、「暗く冷たい光の海に─。」祝詞を口にする。


A、─ぶぁ、くうぅあああん!

置き去りにした音が、下部ユニットの上部で爆発した。


B、「我ぞ花よと舞い踊る─。」左腕の龍は紫電を纏い、黒い渦を描き、「あなた」に到達するはずだった爆音と閃光、衝撃波そして無数の生体指向性誘導弾を巻き取る。


C、「黒い渦の、光のつるぎ。」


─C、かつての勇者ゲンザンのように、トモのように、万葉万倣アイクルミエェタのように、準勇者ダリア・アジョアズレスとダリアノワールのように、星姫アセデリラ・アルマコリエンデと対惑星文明兵器モモ・クルルテラのように、そして、かつて準勇者転写模倣体と戦った時の、第九次元人の「あなた」のように、─次元騎士ナイン・エルナとして!


「あなた」は叫ぶ!「ヤリラ ルーマ!」


しゅ、ぱあああ、あ。

光の奔流が、上下のナラシンハを、光に飲み込み、ただの熱量、光の花を咲かせた。


ひゅうう。

「あなた」の身体は自由落下により、落ちてゆく。

「そう言えば、降下用装備、忘れてたな。」

そう「あなた」が呟いたその時。

ふにゅ、ふわ。

柔らかな、それでいてふよふよとした、マシュマロと言うよりは、

「おーナイスキャッチー。」

まるでガルデニアやナナカマドの物よりは、カランコエのものに感触が近い、

「そーじゃろー、そのために大きくしたからのー。」

ロータス2の肥大化した胸部に、全身を受け止められていた。


A、「ちょっと刺激が─、」

B、「─強すぎ、る。」


「あなた」はそう口にして、柔らかな弾力に包まれて、瞳を閉じた。


 ─────


意識が戻って来る。視線を動かす。ナラシンハのものより明るい、模倣太陽の光をそのまま乱反射する、明るい夏の青空が見える。

ビーチパラソルが立てられ、「あなた」は砂浜に敷いたビニールシートの上で、柔らかくはある膝の上に寝かせられているのだ、と理解した。

「んー、ナイン起きちゃったみたいだねー。」

べふこの声と共に、優しく頭を撫でられる。

「むう、ワガハイもしたかったのにのー。」

声の主に肩や腹を、撫でられる。

「あんたそー言ってさっきちちまくらしたじゃない。」

べふこの指先が、「あなた」のほっぺを軽くつまむ。

「乳のない女に言われると気分がいいのう。どれ、お主の乳でナインの頭を包めるかや?」

ロータス2の指先が、もう片方の「あなた」の頬をつまむ。

「言うじゃない。そのままナインにちゅーしよーとしたえロータス。」

「回収のどさくさに紛れてナインを脱がせた変態の言葉とは思えぬのう。」

「あなた」の頭の上、視線の先で2匹の雌猫が喧嘩をする前の唸り合いをしていた。


A、「ふたりとも、落ち着いて。」

そう「あなた」が口を開こうとした瞬間、そっと2人の手が「あなた」の頭をビニールシートの上へ下ろす。


A、─「ふーっふっふ!」「はーははは!」2人はビーチパラソルの外、浜辺の方へ駆け出す。

薄い紫がかった銀髪の女神と、青い髪と耳に尻尾の、原作者。

2人は片手を繋いでくるくると周り、そのまま顔と顔、胸と胸を密着させてないしょ話をしている。

挿絵(By みてみん)

「ゆくぞ。」

「おけ。」

確かにそう聞こえた。

2人は片手を繋ぎ合ったまま片足を上げ、空いた手を伸ばす。

挿絵(By みてみん)

「なーいんー!」

「ワガハイらとー!」

2人の顔は、模倣太陽の、

「浜辺で!」

「青春!」

ビーチの反射を受けて、

「いちゃいちゃ!」

「しよーぞ!」

眩しく輝いた。

きらきら。

青、紫の入った紅い髪が揺れた。

おおとろべふこが最初期に描き出した、ダリア・アジョアズレスの原型。

爽やかな花の香りと共に、その少女は現れた。

「ふふ。」

かつて、光剣ヤリラ ルーマの反動で左腕を紫電の龍に焼かれた「あなた」を、邯鄲の時間圧縮で5年ほど、寝る時から朝の挨拶、昼の入浴の介助、献身的なリハビリを行った、「あなた」に恋をして、パートナーの1人となった少女。

「ナイン。」

フィンネル。

ただそう名付けられた。少女。

彼女が「あなた」の眼前にいるだけで、ロータス2やべふこ、このビーチも霞んで見えた。

挿絵(By みてみん)

「2人は置いといて、ぼくと青春しよう。」

フィンネルは、髪色と同じ水着を脱ぎ捨てた。

「オイルを塗ってくれるかい?」

 ─────

ちゅどおおん。

きゅいいいい!

「待つのじゃー!」

「ちぃっ!泥棒猫!」

あれから、3日経った。

挿絵(By みてみん)

「ふふ、もっと力を込めて握ってくれても、構わないよ。」

「あなた」は、フィンネルを抱えたまま、

「またイチャつきおった!」

「みゃああああああ!!!」

浜辺を走り回って、逃げていた。

「くうう、ナイン、そやつを置いて逃げれば話は早いのじゃ!」

「わたしが初期に創造した主人公枠なだけあって、フィンネルの主人公補正力が高い!!!」

吠える2人を尻目に浜辺を駆け回る「あなた」は、既に日焼けしきって、こんがりと焼けている。

「ほら、ぼくのここももう少しで焼けてしまうよ。」

腕の中のフィンネルが身じろぎすると、まだ焼けていない白い肌が見える。

ごくり、とそのコントラストに生唾を飲み込んだ「あなた」を見て、フィンネルは再び微笑みかける。

「ぼくを守り切ってくれれば、今のぼくの全ては君のものさ。」

紅い髪に紫や青が差し、海の底のような深いマリンブルーをたたえた瞳。彼女フィンネルがダリア・アジョアズレスの原型であるのならば、

「フィンネルとエンゲージ、口付けを交わした「あなた」は、既に準勇者ダリアの肉体とキスをして、一緒にお風呂に入って一緒にベッドで過ごした、と言っても同義かも知れないね。」

「ここここやつ地の文に介入しおったぞ!」

「きいいいい!もともとフィンネルの語りで始まる怪盗物語だったから、あの子こーいう介入得意なのよー!」

ロータス2とべふこの絶叫を聞きながら「あなた」は更に駆け回る。

そう言えば、なぜ三日三晩、不眠不休で女の子を抱えたまま、女神や原作者から逃げ回れるのだろう。

「うーん、それはきっと、君がこのミルクを飲んだからだね。」

フィンネルが胸の間から、「あなた」がロミネンシアの中で飲んでいたカップのドリンクを取り出す。

「あやつついにナインの思考と会話しおったぞ!」

「しまった!あの子はもーとりあえず何でもいー感じに盗っちゃう怪盗なのよ!」

キュン!

どかぁん!

ロータス2が目から放った光線を避ける「あなた」の腕の中、フィンネルは胸元に抱いたカップに何かを搾る。

「んん、どうやらぼくにも出来たようだ。飲んでくれるかい、愛しい「あなた」。」

「あわわわあの女ー!ワガハイの専売特許をー!」

「しまった!舞ちゃん2の能力を盗られた!」

フィンネルの差し出したカップのストローに口を付けた「あなた」は、喉が渇いていたこともあって、その中身を吸い上げる。

ちゅうううう。

ちゅぽん。

ストローを口から離す。

蘇った気分だ。

いくぶんか、ロミネンシアで飲んだものより薄く、さっぱりした口当たりに感じる。

「ふふ、ぼく'の'ミルクを飲んでくれたんだね。愛しているよ旦那さま♡」

フィンネルが「あなた」の首に腕を回し、頬に口付ける。

そして追撃者2人の手が─。

 ─────

潜次元戦艦リコペルシカの艦長アルカルブだ。中継の途中だが、恋人同士、つまり「あなた」と色ボケヒロイン供の時間が始まってしまったため、ここからは私が選んだ新規読者用特別番組「むきむき英雄!ないんくん!第一話」を放送する。はぁ、あのボケナス供め。

 ─────

わいわい、がやがや。

「日も暮れたのに、この辺りはひとがいっぱいだ〜。」

ぼくは、カヌメナーアに燃やされたこの世界を救うため、ダリアってお話の中にやってきた元読者。

「何だいちびっこ、ここはねこねこダンスタウンさ、まだお前の年じゃ早えから家に帰んな。」

知らないお姉さんに声をかけられちゃった。

そうだよね。寮のみんなも心配してるから、早く帰んないと。

街の色んなところで、キャットウォークって大会で勝って猫のすがたになったひとや、ねこみみとしっぽだけ生えたひとたちが踊ってる。

細くて暗い道から、

「主人公の「あなた」だけに、猫ちゃんダンスチケットありまーす!」

この声、聞いたことある!

しかも、「あなた」ってぼくのことだよね!

ちょっとこわいけど、ぼくはその道に入ってみた。

「主人公ないんくーん!」

みかんって書いた段ボールの箱に、作者のべふこが入ってて、「ダンスチケット200えん」って書いた板を持ってました。

「きみもついに、ねこねこダンスにきょーみが湧いたんだねー!」

べふこは段ボールから出て、ぼくにほっぺをこすりつける。

「けど早く寮に帰んないと。」

「えーそんなおかたいこといわずにー!」

べふこはぼくの前で、くるくる回っておしりをふりふりする。

「ほーら、お姉ちゃんとねこねこダンスしたくなったでしょー!」※姉ではない

べふこは、ぼくの顔を覗き込んだ。

「ま、真顔で泣いてるー!」

早く寮に帰りたくて、

「ど、どうしたの?お姉ちゃんに言ってみ?」※姉ではない

ぽわわわわん

ぼくとべふこは、思い出の世界に入った。

「わー、ホントに異セ界だー!」

ダリアってお話を読むと、その中に行けるって聞いたぼくは、読んでみたらほんとにいけちゃった!キラキラしたきいろの制服や、目の前にはきょーりゅーさんもいて、

「うむ、ちびっこナインじゃな。ここでよく学び、よく遊ぶとよいぞ。」

女神のロータスさまに頭をなでてもらって、ぼくは

「そうだな、まだちびっこのナインにはモテモテルートより、友情と努力と勝利、カッコいいロボットにも乗れる英雄ルートがおすすめだぞ。」

ウラニシせんせいもそういってて、ぼくはカッコいいUltraSuperGigantic第六世代や、ランサーでちゃんばらもしたかったし、おでこがきらって光るおぼっちゃまや、めがねのはかせくんみたいなおとこのこと、みんなでカッコいいロボットで、英雄になりたくて、このルートを選んだんだ。

そして、ぼくが教室ではじめて出会ったのが、

「フッ、英雄になりたいのか。ならばまずは筋トレだな。」

いつもマスクを付けて、黒いぴちぴちのぱんつをはいた、ムキムキマスクマンの谷川くんと。

「英雄ですか?い〜ですよォ〜!まずは筋トレですねぇ〜!」

七三って言う髪型で、くるりんってしたお髭がカッコいい、ぴちぴちぱんつのムキムキシチサン、ダンディトオルくんだったんだ。

ぽわわわん。

「なーるほどそーだったのね。」

べふこはお顔に手を当てて考えてから。

「じゃー泣いてたのは、ねこねこダンスしたことなかったからなのね?」

ぼくは

「ちがう!」

とってもおおきな声が出ちゃった。べふこはとびあがってる。

けど、いつもの時間になったから、全身の筋肉が、負荷を求める!

「すううううう!」

ゆっくり息を吸って、頭の先から足の先まで新鮮な酸素を送り、血流量を増やす。

びく、びく!

胸、肩、腹、上腕、前腕、大腿、筋肉が脈動を始める。

「はああああああ!」

ゆっくり息を吐いて、力が漲って来たのを感じる!

「筋トレの!」

両肩両腕を振り上げて!

「時間が減るから!」

振り下ろし、右手で左手の手首を掴む!

「泣いてたんだっ!」

ビッキいいい!

筋肉が膨張して、全身を縛っていたルリローの拘束具、制服をビリビリに引きちぎる!

バキィィィィィン!

筋肉が、ぼくの魂が、咆哮を挙げる!

「筋トレー!!!!!」

飛び上がったまま後ろに何回か側転をして、べふこはぼくから距離を取った。

「へえ、仕上がっとるやん、ボウズ!」

挿絵(By みてみん)

ビキビキぃ!

その言葉に、ぼくの筋肉は反応してさらにポーズを決めちゃう。

ぱんっ、ぱんっ!

いつの間にか集まって来たひとたちが、みんなで手を叩く。

「かーたにウサギ乗ってんのかい!」

誰かが声をあげる。

ピッキィーン!

ぼくは両拳を前で固めて、肩と腕の筋肉を見せつける!

ぱん、ぱん!ぱんぱんぱんぱん!

会場のボルテージが上がる。

ぼくの筋肉も盛り上がってくる!

「素ー手でナラシンハ千切れんのかい!」

また別の方向から声がかかる!

バキバキバキキキィ!

ぼくは背中を向けて、仕上がった首と背中の筋肉を見せ付けた!

「フッ、筋トレの時間になっても帰らないから見に来たら。」

「いーですよォ〜!むきむき英雄!ないんくん!いーですねェ〜!」

こうして熱狂の夜が、更けてゆく。

 ─────

「んんー、きんとれ気持ちよかったねナイン♡」

「ほれこっち向けぃ、んっ♡」

「あ、ぼくともだよ♡」

模倣された月の浮かぶ夜の浜辺で、「あなた」は3人と重なるように寝そべっていた。

「ルルちゃんに色ボケって言われたけどさ、背負いすぎちゃうのもよくないと思うんだよねー。」

「その生真面目過ぎたアルカルブの破滅を描いたのもべふこじゃろー。」

「それより、あのむきむき英雄!ないんくん!の世界線の記録を選んだの、アルカルブ艦長なんだよね…。」

「すごい筋肉だったねー。」

「あの世界線は、ナインは元よりべふこもむきむきじゃったが、当然転写模倣体のワガハイも…。」

「おそらくぼくも…。」

「あなた」は「たぶんガルデニア達もだよ…。」と続けた。

「マルくんもむきむきマッチョメンに筋トレさせられるんじゃない?」

「マルバノキはダクトロじゃぞ?筋肉は…あったほうが良いかのうあの優男。」

「ふふ、ぼくは今の「あなた」が一番すきだよ♡」

「あーまた抜け駆けしたー!」

「こやつー!」

「ふふ、」

夜は更けてゆく。

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