ようやく掴んだスタートライン
「おい!! おまん! だから無理だって! おい!! 歩けねぇよ!!」
おっちゃんは必死に僕を止めようとしているが僕の鼓膜には届かない
あの山に登って、奴隷商人たちを殺さないと、、、殺さないと、、、
あの子が殺される、、、、、、
「ちょいちょい!! ねぇあなた! 何立ってんのよ!!!
あなたは病人よ!? 安静にしてなさい!」
少女はここ一番の焦りを見せた
「ごめんなさい、、、 どいてください 僕の行手を阻まないでください」
「何を言ってるの!? どこに行こうって言うの?!
ここ一週間は絶対安静って言ったよね!!」
少女は僕の替えの衣服を持ったまま立ち尽くす
「ごめんなさい ごめんなさい ごめんなさい」
「謝るだけじゃわからないって!! なんで、、、
なんで言いつけを守ってくれないの、、、」
少女は自分の無力さゆえか涙目になっていた でも、ここで止まるわけにはいかない
「おれに、、、おれに助けさせてくれ!! 俺が助けないと!!!」
「誰もあなたに助けなんか求めてない! お願いだから寝台に戻って、、、」
「ごめん」
そう言い放って、僕は力を振り絞って少女を押しのけた
病院から出てすぐはあの少女も僕を追ってくるだろう
ので、病院から出て300メートルくらいは兎にも角にも全力で走った
痛かった、苦しかった、辛かった、それは肉体的にも精神的にもだ
包帯は足が地に着くたびゆるゆると解けていき、痣と傷だらけの皮膚が
露出していった
あの子を僕が泣かせてしまった あの子の願いを僕が破ってしまった
その事実が僕の心を蝕んでいった
でも、、、走り続けた
そしてなんとかおっちゃんが言っていた山の麓には現着できた
「ふぅ、ふぅ、はぁっはぁはぁ、、、
こっからが勝負だな」
麓から山頂までの道は悪路と呼ぶにふさわしい
枝に引っかかり顔に傷がつき、時々転んで雨上がりでできた泥も体につく
でも、まだ走り続ける
そうやっていったら少しずつ、少しずつ蔚々とした森に光が差し込み始めた
「よしあともう、、、はぁはぁはあ、、あとちょっとだ!」
僕があの子を救うんだ いずれくるバットエンドからあの子を助けてあげるんだ!
「はあはぁはぁはあははははぁ、、、うぅ!?」
誰かの話し声が聞こえて僕はすぐに草木に身を隠す
おそらく、多分、絶対、、、山頂にいるのはあの奴隷商人と愉快な仲間たちだ
底がない邪気、黒く渦巻いている悪意を孕んだ声で話しているから間違いない
「、、、笑 僕あんな声をしちゅうやつと話しとったんかよ」
やはり僕の読みはあってた 奴隷商人らはこの山のてっぺんにいた
予想だとここを仮の拠点として、病院に復讐しにいく機会を見計らっていたのだろう
それはいい、、、それはいいのだが
ここからどうする?
当然だが僕には戦う力はない 戦闘IQもない
唯一の武器の未来予知ももう役目を終えた
「っくっそがよぉ、、、」
とりあえず策を考えるんだ 無策で突っ込んでも勝機はない
考えろ、考えろ、考えろ、考えろ、考えろ、考えろ、考えろ、考えろ、
かんが、、、、、、
『パキッ』
あ
「ん、、? おい!! 誰かおんぞ!」
しまった、バレた ふらついた足が小枝をふんじまった
「っちくそが,,,,,, もう,,,もうこうなったら破れ被れしかねえだろ!!」
僕は勢いよく駆け出し、奴隷商人五人対僕一人が山頂で激突する
その刹那、「クウォーターアクアリウム!!!!!!!!」
その声に草が揺れ、木々が揺れ、僕ら六人も揺れる
そして、、、、奴隷商人らの頭上に、25メートルプールくらいなら
軽く満たせる程の大量の水が脈略なしに突然現れて、、、
落ちてきた
奴隷商人らはその水に無情にも流されて、山頂から転がり落ちていった
『ぐしゃり』『ぷきゃ』『ごきゃり』『きゅごる』『ぱぎゃ』
耳を塞ぎたくなるような、、、悪夢のような音が鼓膜を襲う
あいつらは山頂から転がり落ちて、斜面に生えてあった枝に串刺しにされたり、
樹木に叩きつけられたり、どこかの崖下にでも落下したのだろう
僕はその場で立ち尽くし、やがて膝から崩れ落ちた
それを心配しているのか、少女が優しい声で言う
「大丈夫?」
「、、、、、、あんたは」
「私? さっき病院であなたと口論した女の子よ それは覚えているわね?」
「う、、、あ、あぁ あんた、なんでここに?」
「あなたが病院から出ていった後、心配で心配でついていったのよ
そしたら目の前にあの外道どもが現れて、、、」
「病院で言ってた『私を助けたい』ってこのことだったんでしょ?
「あ、、あ、ああ」
「、、、、、、あなた、本当に私を助けてくれたのね 本当に,本当に、、、
あなたは、私を,,,,助けてくれたのね」
「ありがとうね!! 私を助けてくれて!」
少女は慈愛に満ち、微笑みかけるように言った
「まず、怪我の処置をしないと、、、
でも,この段階の怪我はもう地方病院じゃ厳しいかな、、、、」
「よし! 決めたわ! 治療とお礼を兼ねて、
あなたを私の宮闕に招待するわ!!」
少女は張り切ってそう言った




