歯車を一押し
「うぅ、、、うう」
ああもうこの世界に来て何回呻き声をあげたのだろうか
本来僕の初呻き声は魔王戦って決めていたのに,,,
「なんなんだよこれ,,,,, 身体中痛すぎだろ!!!
あのおっちゃん ぜってぇしばいてやる!!!!」
「てめぇ,うっせえよ!! ガキは隅で黙っていろ!」
ボロ衣を着た荒くれ者はそう言い僕の土手っ腹を殴った
そいつに合わせて他の人たちも止めどなく僕を殴っていった
ここの人たちはみんなピリピリしている 空気が重い
全員が全員と睨み合っている そんな中僕が突然叫んだらそりゃあパンチの一つや二つくらいはあるだろう
、、、多分だけどここは港町だ 波の音と潮の匂いが仄かにするからだ
とりあえずここが港町のどっか寂れた倉庫の中、ってのは確定でいいだろう
そんで僕がなんで港町にいるのかもある程度予想ができている
これから僕は奴隷として海を超えたどこかの国へ売られるのだろう,,,
あの時、あの居間で、あの男は自分は
奴隷商人だ、って言っていたからおそらく的中している
周りにいる男たちも同様に誘拐されてここに来たのだろう
さしずめ今は奴隷を乗せるための船待ち、といったところだ
もう僕には鼻がない 出鼻を挫かれすぎた
「、、、笑 異世界、、、、、厳しすぎんだろ,,,,,,,」
そんな中、僕をぼこすか殴ってる一人の男があることに気づいたっぽい
「おいおいおいおい お前ら!! こいつの袋の中にたんまりと食いもんあるぞ!!」
あっと、、、これはまずい
僕はパシリの帰りに異世界召喚されたのだから当然パンとかが入ったレジ袋も持っていた そんで流石に持ちっぱはきついとのことから、ジャージのジッパー付きのポケットに入れていたのだ
(因むとあの奴隷商人は身体中煤まみれとかほざいてたのに、洗濯せずに普通にジャージ姿のまま僕を寝かせていた くそが)
んでそれがばれた
こいつらは僕含め奴隷になる予定の人なんだから、まる一晩まともな食事はなかった
故に部屋中の奴隷たちが僕のポケットめがけて襲ってきたのだ
「おい!! お前!! その袋の中のもん寄越せ!」男が言う
「黙れ!そん食いもんは俺のものだ!!!」 また別の男が言う
「なんだとこの野郎!」
,,,なんか僕を抜いての乱闘が勝手に始まった
ん? 待てよ、、、、、 いまの爆発寸前って感じの会話、
どっかで聞き覚えが、、、、、、、、、、、
あ!!!! あれじゃねぇか!! あの奴隷商人と話してて、急に頭痛がしたときに聞こえてきた会話と同じじゃねぇかよ!!!
あのときは爆音のノイズだらけでうまく聞き取れなかったが、 いざ答え合わせを聞いてみたら、確かに完全に一致している,,,,,,
,,,,,,,,,,,,,,,っつと〜 どういうことだ?
なぜ未来の会話があの時流れてきたんだ?
これが巷で噂されていた『予知夢』 って言うやつなのか?
いやいやいや予知夢はぐっすり眠った時に見るもんで、流石にあんな痛みまみれにはならないだろ,,,,
ってことはもう残った可能性は一つだけだ
,,,,,,,,,「未来予知?」
もうそれしかない気がする
,,,ということは僕が異世界召喚時に授かったチート能力とは
痛みあり、爆音ノイズ、情報量皆無の『未来予知』、
なのだろう
「、、、、、、笑、、、いやくそ能力すぎんだろ!! いくらなんでも!!!!
なんだこれどうやって使いこなせって言うんだよ!!!!!!」
「、、、あ?」
僕の情けない怒号が生み出したのは乱闘騒ぎの沈静化、そして標的の変更だ
「っていうかそういや俺らの目的はこいつが持っとる食いもんだろ?
なに俺らで騒いてたんだ?」
「そりゃそうだな、、、よし!お前らこいつの身包み全部剥がせ!!!
奪った食いもんは山分けだ!!!」
いちばんガタイのいい男が威勢よく言った
そしてそこからは僕のボコられパーティーだ
部屋中の男どもが結託して僕のジッパーを下ろして食料を奪おうとしている
おそらくこの世界にはジッパーは存在しないのだろう
それにかなり苦戦しているようだ
一応僕にも抵抗する権利はある なのでそれなりには応戦したのだが
基本的にパンチは当たらず、当たってもあいつらの屈強な肉体には
傷一つもつかなかった
「負けてたまるかよぉぉぉおおおおお、
パシリで鍛えた脚力もとい筋力舐めんな!!!!!!!!」
それから何時間経ったのだろう、、、ちょうど朝日が昇っている最中だ
「かはぁっ,,,,, ドブカスがよぉぉ,,,,,,」
みてのとおり僕は完敗した 食料は当然奪われ、
体は血にまみれ、痣がところどころに見え始めている
顔の輪郭は、、、申し訳ないが綺麗な楕円形とは言えない
僕を殴りまくったあいつらも疲弊と時間のせいか大分衰弱している様子だ
異世界召喚初日の危機とは異次元の『命の危機』。
「、、、、、っち ここで かはっ,, ゲームオーバーかよぅ,,,,,,」
床に這いつくばって僕はそう言う
外の人々の喧騒が聞こえる、、、多分僕たち奴隷を乗せる船が来たのだろう
死ぬ,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,
ドゴゥウォーーーーーーーーーン!!!! 地を裂くほどの轟音が鳴り響いた
「ちょっっと!! 丁寧に優しくそぉーーと壊すって言ってたよね!? これじゃ瓦礫が人に当たっちゃうじゃない!!! ねぇ聞いてる?? プラティ!」
「,,,はっ 申し訳ありませんでした師匠!! 以後は魔力調整、
気をつけます!!!」
この汗臭い空間には似ても似つかない天使のような声がこの部屋にこだまする
「わかればそれでいいのよ それよりも中の人たちの搬送を急いで!! 救護班!
怪我人がまず最優先ね!!」
救護班? なんだ,,,こいつらは奴隷商人の仲間じゃないのか??
「,,,え? ちょっと!? あなた!! 大丈夫なの!?
なんて酷い怪我,,,, プラティ!!!急いでこの人を運んで 早く!!」
「師匠!! ただいま!!」
女の子がその弟子?に指示を出している
僕の心の中は感謝と安堵で埋め尽くされた
感謝の理由はもう言うまでもない
安堵は,,,もうなんか,,物語が進んだことに対する安堵だ
女の子の,高い身長よりも、何色にも染まっていない白髪よりも、純真で宝石のように光っている翡翠色の目よりも、天使のように優しく弾むような声よりも、
物語という歯車をこの子が一押ししてくれたことへの安堵が、大きかった




