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異世界の歩き方!!  作者: Nihonshi-Sekaishi
信頼関係構築イベント
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23/24

惨劇の答え合わせ

『神の……神の使者??』


震え,怯え切った声色で

そうルナーシュは疑問を口にする

まるで彼女がその『神の使者』という

単語の意味や恐ろしさを知っているかのように


『ええぇ! そうですよ?

私こそが10いる神の使者、その一翼を担う

エウステノプテロン・デュプt…』


『黙れ!!!!

ふぅぅぅぅぅ………ふううぅぅうっぅうう……

お前が……お前が 

あの!神の使者なのか!!!

私のお父さんを殺し!

家族の仲を切り裂き!

私の好きだった人を狂人へと染め上げた!

あの! 忌々しい「神の使者」なのか!!!』


彼女はより一層プラティの亡骸を強く,強く抱き締める

彼女の怨嗟の声が蒸し暑い空気を伝い

あの男___デュプテルスの鼓膜にまで届く


『いや いや いやいやいや

それをしたのは私とはまた別の、

「堕」の天与の使者ですよ?

私ではないです?

って言 い ま す か

本当のことを仰りますと……

あなたのお父さんを殺し

あなたの家族の中を切り裂き

あなたの好きだった人を狂人へと染め上げた

それをしたのは「捩」の私でも「堕」でもない

”あなた”、でーすよね?』


デュプテルスは悪意らしきものは込めずに

ただ淡々と彼女に述べていく

ただ,次の瞬間彼の表情が

怒り混じりの狂気に染まっていった


『それよりも!!!

先ほどあなたは私の自己紹介を邪魔しましたよね?

私が名前を名乗る途中,

あなたはそれを遮り自分勝手にも話を進めていった……

それは!!

決して許されざる行為!! なぁぁぁのですかぁぁぁぁぁぁ?!!!』


彼はそう高らかに叫びルナーシュに

怨嗟と軽蔑の視線を送る


『その大罪!

痛みによって贖あがないなさいぃぃ!!』


彼は衝動に身を任せて

水の槍を弾いた時と同じようなことをする

両手を前に伸ばし、ものを捩ねじるようなジェスチャーを取ったのだ

そしてそのまま、「捩れ」と呟いた


次の瞬間,反撃のため

再度魔法を放とうと掲げたルナーシュの右腕が……

吹き飛んだ


……理解ができない

正体不明の力が彼女の腕に働き,

不自然に腕が捩ねじれていき骨の軋きしむ音が聞こえた

その後限界まで捩られた右腕は

瞬きの間に弾け飛び,肩から出た鮮血が宙を舞う

独立した右腕はそのまま石畳の地面に落下する

ルナーシュはその光景を目撃し当惑の表情を浮かべ,

遅れて彼女に激痛が襲ってくる


『あぁぁ………

ああああああぁあああああああああああぁああああああああぁああああああああぁあぁあああああぁあああぁああぁああぁあああああぁあああああああぁああああぁあああぁああああぁあぁあああぁああああああぁあああああああああ!!!!!!!』


右肩に走る,灼熱の釘を打ち込まれたような激痛に

彼女はただ叫ぶことしかできなかった

息をするのも忘れて叫び,

肺の中の空気がどんどんとなくなっていく

ルナーシュは突如として生まれた右肩から先の

「空白」に絶望を覚えるのみだ


『嗚呼ぁ…… ふふ

いい,いい叫び声ですねぇぇぇ??

嗚呼可哀想……実によぉぉぉぉぉく可哀想!……ですか?』


デュプテルスの発する人ならざる金切り声も

激痛に悶もだえ苦しむルナーシュには全く届いてこない

彼女に無視されたデュプテルスは

またもや苛立ちを覚えて

再度”ものをねじるジェスチャー”を取りかける


『え……

や…… いやだ!!! 

死にたくないぃぃぃいぃ!!!』



彼のする行動にルナーシュは本能に刻み込まれた

圧倒的恐怖感を覚える

そしてルナーシュは咄嗟にプラティの亡骸を片腕に抱えて

背を向け,屋敷目掛けて走り出す


彼女の足取りは人一人を抱えていることもあって

非常におぼつかず,とても速いとは言えない

デュプテルスがもう一度今度は体全体を対象として

遠隔で捩れば,簡単に彼女の命の芽は奪えそうだ


だが彼はそれをしなかった

彼は屋敷の中に逃げ込んでいくルナーシュをみすみす見逃し

その代わりに,にやりと邪気を孕んで笑うのみであった


***


『はぁはぁはぁはぁはぁ………

ああぁかはっっっっ』


屋敷のエントランスに入ったルナーシュ、

息も途切れ途切れになりなんとも転びかけもしたが

なんとか立ち上がり,助けを求め歩み続ける


エントランスの正面には

カガミ=フウマ作の巨大なカレンダーが飾られており

過ぎた日付にはバツマークが付けられている


『姫さん!!! 今の叫び声って……?

……………は?』


右手に続く回廊の奥から焦りながら現れたのは

テリウム・エーギルだ

目の焦点があっていき,

ルナーシュとプラティのあまりに酷すぎる惨状が見えていくと

やがて彼は立ち止まり言葉を失う


『あ…ああ…… 嘘だろぉ……嘘だろ!?

おい! 姫さん!! プラティ!!』


***


『…………さぁ、あなたも「あの地」へ送って差し上げましょうか?』


テリウムが目の前の光景に絶望する暇もなく

遅れて屋敷の玄関に単騎乗り込んできたのは

エウステノプテロン・デュプテルスだ

彼が屋敷の敷地に足を一歩踏み入れた瞬間,

屋内の空気が一気に禍々しいものへと豹変し

絶望というものが形を縁取り,実体化してルナーシュとテリウムに降ってかかる


『あいつは……あいつは神の……ごほっ,使者だ

私たちで敵かなう相手じゃ…ぅうぅ,ない』


ルナーシュはテリウムの瞳を見つめて哀願をする

彼女はこれが人生で最期のお願いになることを覚悟していた

その上で彼に今すぐ逃げるように諭したのだ


『……ちぃっ てめぇが神の使者かよ』


「神の使者」その単語を聞いた瞬間,彼の顔が更に曇っていった

だが彼はすぐにデュプテルスの方を向き

怒りを心の内に秘めたまま問いかける


『ええそうですそうです!!!

私は10つある神からの贈り物、「天与」の内

「捩」の天与を受け賜りし者ぉ!

エウステノプテロン・デュプテルス……なのですか??』


今度は別の人物から再び名を問われた

彼は恍惚こうこつの感情に顔を歪める

したらば嬉々として自己紹介を始めた


『神の使者は狂人、キチガイ揃いと聞いてはいたが

まさかここまでとはな……

まぁ……取り敢えず,なんだ……

プラティを殺したその罪を

地獄で永久に後悔していろ!!』


テリウムはそう威勢よく発破をかける

そして右手を前に掲げ,


『パーク!!!』


ありったけの憎しみを込めて魔法名を叫ぶ

そしたら彼の掌の上に拳大の大きさの火の玉が現れて

迷うことなくデュプテルス目掛けて飛んでいく


『あーー まーたこれですか?

実は,こういう飛び道具系って私と相性最悪なんですよぉ?』


狂気に染まった笑顔でデュプテルスはケタケタと笑う

彼は変わらずに

体の前でものを捩るジェスチャーを取った

するとデュプテルスに命中するまで残り3寸もない

距離のところで火の玉はあえなく霧散した

まとまりを失った火球は無数の火の粉になって

屋敷の床に舞い落ちていく


『ほぉぉぉらぁぁぁね?』


火の粉を眺めながら

デュプテルスはわざとらしく歔欷きょきの声を漏らす

取ってつけたようなつぎはぐの慈悲を纏いながらも

足を動かし満身創痍のルナーシュに詰め寄っていく


『来るな!

てめぇ,姫さんに指1本触れてみろ!!

屋敷ごとてめぇを燃やすぞ!!!』


『そーんなそんな!

そんなことやめてくれませんか?

もっと,もっともっともっと,建物というものは大事にしたほうがいいですよ?

だって建物,それもこれほど大きな豪邸ですよ?

一体どれほどの人たちの努力によって築き上げられた

と思っているんですか?

そんな……そんな血と汗の結晶である豪邸を燃やすなんて!!

そのような心の持ち主は

「あの地」に行くのには不適な存在です?!!!

一体全体,どれほど傲岸不遜な行為なのですかぁぁ????』


降って湧いた激情に彼は身体の操縦を任せ

テリウムの方を向いて

再び両手で捩るジェスチャーを取りかける

やはり,そのジェスチャーを取るのが

彼の能力「遠隔でものを捩る」

の絶対の発動条件なのだろうか


『あなたのその腐った心根!!

私の慈悲による介錯によって!

赦しを与えましょうかぁぁぁぁぁ?!!!』


『ああぁ もう……

くそがぁぁぁぁぁぁあぁあああぁよ!!!』


叫びながらもテリウムはデュプテルスの躯体目掛けて

体当たり、タックルを繰り出した

その加速は圧倒的なもので

10数mはある2人との間合いを

文字通り瞬きのうちに詰め寄って,

デュプテルスに渾身の一撃を叩き込んだ

それをモロに受けたデュプテルスは

体勢を崩し床に倒れ込む


見てみる限り,彼が捩り切る前にタックルをかましたので

テリウムの体には傷1つもなかった


『姫さん! 今,旦那は書斎にいる!!

そこに行け!!!

カルシュならどうにかしてくれる

こいつにも勝てるかもしれねぇ!!』


『え………でも

テリウムが……』


『誰が気にして欲しいなんて言ったんだ!?

頼むから自分のことだけ考えてくれ!!!

行け!!』


その決死の喝を聞き届けたルナーシュは

プラティを片腕で抱えたまま

黙って,遥か奥にまで続いている廊下を駆けていく


 ***


『あぁぁ……

嗚呼……痛い,痛いぃぃぃ

私,少々興奮してしまって足元が疎かになってましたか?』


デュプテルスはやおら起き上がり

尻餅をついたときの痛みを喘ぐ

そしてお尻についた埃をぱっぱっと

手で払いこう話を続けた


『ところで,話は変わっちゃいますが…………

あなた……今苦しいですよね?』


『……はぁ?

ったりめぇがろうがよ,

てめぇのせいでこちとら人生最悪の日を迎えているよ!!』


厳戒態勢は決して解かず

警戒をしたまま彼はデュプテルスを激しく睨みつける


『いやいやいや

今に限らずに

これまでの生活の中で!きっとあったでしょう?

理不尽なこととか,

したくないこと,

めんどうくさいこと

痛かったことや

言われて嫌だったこと……

必ずそれらを日頃から感じているはずですか?

そしてそれに苦しんでいる

なぜあなたが苦しまきゃいけないと思いますか?

その理由はあなたが”生きているから”です

生きているからこそ苦しみが生まれて

容赦無くあなたに襲い掛かかってくる』


デュプテルスは戦闘中にも関わらず

狂気に顔を染めながら話をしていく

 

『はっ!!!

なんだよ,じゃあこっちに死ねっていうのか?

それで無となり,楽になれと???

笑わせんじゃねぇよ!!』


『ぷっ, くすくす……

あいえいえそんな

死というのはあくまであなたの長い人生の

”折り返し”なだけですよ?

通過点である死を乗り越えた先には

「あの地」

があなたたちを待っているのです

そこには苦しい,痛い,絶望などの負の感情は一切合切存在せず

全てが文字通りに完璧な状態のまま存在している

机は決して壊れたり足が折れたりすることはなく完全に永遠不変のままいる

いえば,この世にある全てのものは

所詮「あの地」の物体の粗悪な複製品、模造品に過ぎないのです


そんな理想の世界、そこに到達する唯一の方法は「死ぬ」ことしかないのです?

だったら,たったいっときの死への恐怖なんて

こんな苦しみに満ちた現世から脱し、「あの地」へ至るための

ほんのちょっとの通過儀礼と思えばよいのですよ?


善良で無辜むこな人々には死という名の救済を!

私欲にまみれた悪人には生という名の罰を!


それが私の、

こんな下衆で傲慢で強情で卑賤ひせんで鄙劣ひれつで粗陋そろうな私に

神から与えられたたったひとつの使命なのです?!!!!!!!!』


もはや興奮を隠しきれずに

エウステノプテロン・デュプテルスは自身の思想や主張を露わにした

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