神の使者さん曰く、「自己紹介は気持ちいい」
能力名『未来予知』は未だ不完全なので
ノイズが多く混じっている
ですのでその雑音をできる限り除いた上で
情報の開示を続けていく所存だ
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『ザザッザーーーザザッッッッ
きゃぁぁぁぁぁぁザぁぁぁぁぁザザッぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』
2度目の未来予知、
1回目と同様に視界が突如暗転し場面が切り替わった
私は屋敷のエントランスから大門へと繋がる
石畳の一本道にいる
辺りを見渡してみると
ルナーシュの悲痛な哀咽が蒸し切った空気中に響き渡る
のが聞こえた
恐らく今回の未来予知は
1回目の予知より前の時間軸を映しているのだろう
『プラティ!!! プラティ!!!!
目をザザッ…覚まして! ねぇ,いつもみたいに笑ってよ!
ねぇお願いだからぁザッぁぁ!!』
ルナーシュは石畳に横たわるプラティの亡骸を抱えて
我を忘れ泣き続けている
プラティの死体の状態は1回目の未来予知の時とは少し異なっている
首と一対の兎耳に包丁の様なものが深く突き刺さっているのは同じだが
胴が真っ二つに寸断されてはいなかった
『ふぅぅぅぅっっ……ふぅーーーっ
あなザッたら! 一体どこの極悪人だ!!
死ぬ前に聞ザザッッッき届けてやる! 名を名乗れ!!!』
ルナーシュはプラティを抱きかかえたまま
目の前に立っている10数人余りの連中を激しく睨みつける
その連中は大門を背にして
プラティの亡骸の前に我が物顔で鎮座しており,
彼らが彼女を殺害したのは火を見るより明らかであった
彼らは頭かしららしき1人の男を先頭にし,
ピラミッド状に並んでいる
服装は兎にも角にも独特且つ奇抜で
裾のあっていない袴のようなものを履いており,
黒の洋服を羽織っている
頭である男を除いた他のすべての男は
全く同じ服装,背丈,体格,表情をしていた
『……え?
今あなた…………「名を名乗れ」と……
そうおっしゃいましたか?』
先頭にいる頭の男がそう興奮気味に口を開いた
ただでさえ奇抜な集団の中でも,
この男だけは突出して異質な存在だ
その男は唯一他の者たちとは容貌が大きく異なっている
頭の男の容姿を簡単に述べていくと
髪色は淡い灰色,
髪型は長さを完璧に揃えたパッツン,
目は限界まで見開いており,
口角は不気味にも常に上がっている
そのせいで不潔な黄色の歯が剥き出しになっている
服装は他の男らと同じだが,
所々服の縫い目が解けて,ボロボロになっているようだ
その中でも最も目を惹く特徴
それは背中から薄緑色の翼が生えていることだ
まばらに穴も空いてて萎れてもしまっており,到底それを使って飛べるとは思えない
でも確かに頭の男には翼が生えていた
……ここまでの容姿を総括して
一言でいうのならばまさしく、「狂人」だ
『そう言った!!
もザーーザザッーガガッッザザッーーう一度言うぞ,名を名乗れ!!!
次も同じようにはぐらかしたら直ちに殺す!』
彼女はこの世で最も憎しみにまみれた表情をし
怨嗟に身を任せて叫ぶ
『本当…に? 本当に? 本当に?
ほぉんとうにいいんですか!?
ああ…神よ! こんな私に,名を名乗る____
自己紹介という機会を与えてくださってぇ
ぁぁありがとう!!』
男はその場で両手を大きく広げ天を仰いだ
そして狂気と喜びを孕みながらも神に感謝を述べる
『直ちザッッッに殺すとザザッ言っザッーたはずだ!!
貫け! スピアアクアリウムゥゥ!!!』
ルナーシュはプラティを抱えたまま
右手を勢いよく前へと突き出す
そのまま彼女が魔法名を声高らかに叫ぶと
宙に浮かぶ水の槍が目の前に現れた
するとその槍が男の心の臓向かって疾風の如く突進してくる
『嗚呼… 嗚呼ぁ……
やっぱり対話する意思がないというのは悲しい……ですか?
他人と手を取り,話し合いをするのが
心安やかに「あの地」へ行ける唯一の術なの……
ですよね??
ああ,やっぱり……悲しいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ』
そうやって笑いながら咽び泣く間,
男は自身に向かって穿ってくる水の槍を眼光を光らせ凝視する
その上,両手を前方に突き出し,
五指の内薬指と小指を極限にまで曲げる
後,その男は
『捩れ』
これまでの薄気味悪い楽しさとは一変
重低音の声で小さく呟いた
彼は突き出した両手を使い,
手首をひねって”物を捩ねじるようなジェスチャー”を取る
その瞬間,
ルナーシュの水の槍が突然弾けた
綺麗な槍の輪郭をなぞっていた水の塊が
その原型と推進力を全て失って
無念にも地面に落下していく
『……は?』
自慢の魔法が敵の目の前でいきなり弾け飛び,
彼女は驚きを隠せていない
驚愕したまま数秒固まっていると
代わりに男が口を開く
『では……あなたも落ち着いたところでぇ
自己紹介をしても……いいのですかぁ??』
以前彼女は固まったまま男を睨み付ける
『沈黙は拒否の意だけどぉ……
ごめんなさいね,やっぱりしてもいいですか?
嗚呼…でもやっぱり自己紹介って素晴らしいですよね?
自分自身のことを赤裸々にさらけ出し,
相手に自分という個の存在を知っていただく……
幸せで愉快で幸福で愉悦で充足で安楽で陽気で欣喜で欣快で
至福で極楽で安寧で平安で和楽で幸楽で嘉福で康楽で誠福で
景福で清福で多幸で胸が躍り朗らかで心地よい……
そんな行為が「自己紹介」なのでしょう?!!!!』
男は前傾姿勢になりながらも
興奮を隠しきれずに早口で捲し立てる
それとは対照的に後ろの男らは
身じろぎ1つせず無表情のままでいる
『でぇはぁ…………
とうとう自己紹介を』
男はルナーシュに向かって1歩だけ歩み寄って
こう紹介をした
『私は
神の使者、「捩」の天与を賜りし者……
エウステノプテロン・デュプテルス
…………と,言うんですか?』




