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子育て?超越者(ヒュペリオン)  作者: 樽腹
第四章 超越者
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第20話 超越者 対 超越者

新春すぺしゃるでお送りしております(´ω`)


──強い。


それがその男に感じた第一印象だった。


大鎌を操り、的確な操作で矢を弾く。


見慣れぬ武器で違和感があるが。

それは...人の手によって、脈々と受け継がれて洗練された、確かな技術だった。


主武器はあの大鎌か...

エアから聞いていた事とはいえ、かなり手強い。


それどころか、渾身の一矢を防がれた。


運動エネルギー増幅、あるいは帰結する結果を倍増させる『力』を用いた。


これ以上無いタイミングだった筈だ。


行き止まり(blindalley)】か...



なんにせよ、ピンチだったあの女の人は無事だ。


地面をバウンドして、ボールのように転がっていったが。スマートに助ける余裕など全くないので、必要経費だと思ってほしい。


今はこれ以上の奇襲は無理だが、替えの効くカス札一つで相手の手札を一枚ー使わせた。


まずまずのスタートだろう。


やるべき事を成す為に現世に戻ったココに、俺の『マナ』を用いて現世に再生させたワンダさんを付けるのは、まだ些か不安が残るが仕方ない。


──負けた時の事を考える。


警備隊の元隊長が言った言葉は、後ろ向きではあるが確かに必要な事だった。


その為にラヴィネとステラの配置を──





...今の攻防を持ってして、俺の勝ち筋が見つからない。


黒づくめの男が、記述によって生じた闇を従え近づいて来た。


ローブというには洗練されたコートのようなデザインに、革のズボンとブーツ。そして手袋までも。


纏う雰囲気とオーラといい、すべてが黒づくめの男だった。


違うのはフードの中から覗く、病的なまでに白い肌と髪。


何よりも、目の黒さともいうべきか...深淵とも言える程に深い。


人と呼ぶに躊躇う程、深い闇。


...欲とか、そういう問題じゃない。

エアは一体この男の目に、何を見たんだ?



──残り約数十メートル。



俺は再び矢を番て狙いを定め。


「同胞よ」


腕を上げ、手を開いて見せた男の声を聞いた。


...同胞?


あれだけの攻撃に晒され、敵意は無いのか。


「弓をおさめたまえ」


大鎌を自ら支配空間の中にしまい。

尚且つ仲間と定めて、こちらに呼びかけている。


相手はある意味、異世界の人間だ。


文化も言語も違う筈の人間が、何故この世界の言葉で話をする事が出来るのか。


「今一度言おう。弓をおさめたまえ」


両手を前に差し出し、男が再び呼びかける。


出来る事ならば、この世界から速攻で立ち去ってもらいたいが...


「いいだろう」


俺はこの男から情報を引き出す為に、言葉通り弓を下ろして背中の留め具に掛けた。


「感謝する」


男は尚も近づき、俺から凡そ十数メートルの位置で止まる。


ケセルナに続く道から、ほんのすこし離れた場所で、二人は対峙した。


俺はケセルナから離れて森に続く丘を背負い。

男は中天を過ぎた太陽を斜めに背負う。



纏った闇が光を遮り、長い影となって地面に降りた。



「そして...お初にお目にかかる。私の名はキリル。この世界から遠く離れた我が故郷...グネマデラより、極寒と飢餓に喘ぐクロトガの地にて生まれ。そして超越者として覚醒(めざ)めし者」


流暢な言葉で嘘の無い出自を語り、一礼する。


「どうか、お見知り置きを」


付け焼刃ではない、あまりに自然な礼儀正しさ故に、益々違和感を覚えた。



──首筋が、ちりちりする。



「...タリオンだ。この世界の事など何も知らない。ただ、この国に住んでたモダ村の爺ちゃんに拾われて育てられただけの、それだけの男だ」


俺は俺の知る情報を、男を真似て答えた。


その場に合わせた嘘を考え、まくしたてるような頭と心臓を、俺は持ち合わせていない。


何よりもこの男を相手に、嘘はあっさりと見抜かれるだろう。


「これはこれは...どうやら、私の方が貴方よりもこの世界に付いて詳しいようだ」



キリルは含み笑いをしながら俺に背を向け。両手を広げ秋の陽にその身を晒す。


「どういう事だ?」


少なくとも、こいつはこの世界にやって来て学ぶ間も無く閉じ込められていた筈だ。


「おや?......成る程、覚醒めてからまだ日も浅いようで」


当然、言葉や世界の常識や地理など知る由も無い。

...何故こいつは知る事が出来たんだ?


両手を広げて背を向けたまま、なおも笑うキリル。


──ちりちり、ちりちりと首が疼く。



「それでは教えましょうか?


何故、貴方より詳しいのかをっ!」



キリルが此方を振り向いた時。



俺はエアとこいつの言葉の意味を理解し──



逆手で腰から抜き放った山刀(マチェット)を振り抜く。


(ザンッ!)


──首を狙って影から飛び出たサメの化け物が。

真っ二つに裂けてその身を地面に投げだし、ビチビチと蠢きながら、陽光の元にその断面を曝け出した。


「...何故、分かったのですか?」


哀れな姿となった手駒には目もくれず。


先程までの紳士然とした態度と成りは影を潜め、邪に歪んだ顔で俺を見る。


「当ててみろ」


奇襲を防いだ牢鉄製の山刀に、一切の曇りも欠けも無い。


...コイツを相手に情報を引き出すなどと言う、甘い考えをしていた自分が愚かだった。


最初から分かっていた事だが...やはり、戦うしかないようだ。



「ふ...ふはっ!はっは、ははあはあはひゃあはああはははははッッ!!!!!」



すでに見破られた仮面を脱ぎ捨て、本性を露わにしたキリルが、笑い、打ち震えながら大鎌を取り出す。


「良いだろう。どのみち答え合わせは必要だ」


既に隠す必要もないと分かっているのか。

いびつな笑みを湛えながら、鎌を振りかざし...



「お前の死をもって、その正答を知るとしよう」



その身に纏った闇が、影と同化して怪しく蠢いた。



俺は山刀を鞘に戻しながら弓を取り出し、先程斬り捨てた鮫から離れた。


死体を元に使う記述があるからだ。

エアから知った敵の情報を元に、安全に立ち回る。


戦力と記述で勝てない俺の、唯一の強み。


「チッ!」


それを見て舌打ちしたキリルが、懐に手を入れて何かを取り出し、地面に投げつける。

それは巨大な壁となって、俺の前に突然現れ立ちはだかった。



...なるほど効果的だ。



人の遺体が金属で覆われ、石で塗り固められて出来たそれを飛び越えるには、多大なリスクを覚悟せねばならない。


あいつが懐に隠し持っているはずの攻撃手段が、俺にとって最悪の手となる。



だが、言い換えれば俺も壁で守られている。



キリルは次の一手を打ち出した。



「来たれ、我が(しもべ)よ。

肉体という隷属の鎖に今も尚繋がれた哀れな魂よ...此処に!」



詠うような言葉と共に



「【再生(rebirth)】!」



力ある言葉が世界を変え、実体を得た記憶を──手駒を、この現世に現した。


それは、速攻で造られた壁よりも高く。

石よりも頑丈な身体を伏せ、しなやかな翼を折りたたんだまま現れた。


...翼竜(ワイバーン)を見るのは、これが初めてだ。

この世界の翼竜との違いは、一先ず置いとこう。


「やれ!」


男の言葉とともに起き上がり、力強く羽ばたきはじめた翼竜が、首を伸ばして壁越しに俺を見る。

その瞳には生き物独特の感情はおろか、意思すら見出す事は出来なかった。


だが、情報を取得するに当たってその二つの瞳に重点を置く事は。人を含めた大半の生物にとって、当たり前に行われている事だろう。


俺は用意していた一個の玉を取り出し投げつけた。



地球と同じ発想かどうかはさて置き。


この世界の魔法と技術を元に造られた()()は。

奇しくも結果も同じ様に、音までも丁寧に満遍なく容赦無く撒き散らす。


(カッ!!)


──ご存知、閃光弾(フラッシュバン)だ。


「!!!」

「くっ!?」


翼竜の前で破裂したそれは、抗う事の出来ない音と光を放ち。瞬く間に飛竜の視覚と聴覚を奪う。


どの様な命令が下されるか知らないが。

視覚から入る情報を元に、その手駒が命令に従い、命令を遵守するならば。


「っ、貴様!動け!!この鈍間が!!!」


実行不能になった途端に、たちまち行動不能に陥るだろう。



そして、今。



「──来たれ、(とも)


苦難を乗り越え、幸福を分かち合い。


新たな時代の、その先へ──」



俺に、戦う勇気を与えてくれた仲間達よ。



「仮初めの(にくたい)と共に、今...」



俺を親として必要としてくれる子供達よ。


そして、この街に生きる人よ。


願わくば



「此処に」



...これからも、ずっと。




「 ──【再誕(rebirth)】!!」


新春すぺしゃる(長いとは言っていない)

此処まで読んで頂きありがとうございナス!(´ω`)v

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