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子育て?超越者(ヒュペリオン)  作者: 樽腹
第四章 超越者
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第10話 数年越しの再会

Tips


【移層】 分類:記述


我々の住む現実世界の裏で、辻褄を会わせる為の世界がある。

他者と見ているものの差異がある記憶の世界...別名精神界。

人ならざる者や死者の住処たる霊界ないし魔界。

全ての大元となる玄界。

管理者たる神の住まう神界。

本来存在しない筈の虚数世界もあり。

超越者はこの記述の力により、一つの世界に何層にも重なって存在する別世界を行き来する事が出来る。


記憶の世界にココと共に移って、一歩横に移る。


「......お父ちゃん...?」


俺という遮蔽物が取り除かれて再会する親娘。


「お父ちゃん!!」

「ココぉ!!!」


遅れてラヴィネがココから離れ、互いに向けて駆け出した。


感動の再会に水を差す程馬鹿じゃない。


と言うか、今の内に魔道具やら矢筒を買いに行かなければならない。


「じゃあ一時間...じゃ無かった半刻ほどしたら「──のばかあああああッ!!」(ドゴォ!)

「ォボギュッ!?!」


父親(ワンダ)の顔にめり込む右アッパーストレート。


たたらを踏む父親。


続けざまに肝臓(リバー)目掛けて、ステップインからの左フック。胃にショートアッパー脾臓にショベルフック。

大の男がくの字に曲がってガラ空きになった顎へ突き刺さる娘の(フィニッシュ)


ケツを上に向けたまま地面に崩れ落ちる英雄ワンダ...出会い頭からその間僅か数秒。


警備隊の支給装備が革手袋で良かったなガントレットだったら多分死んでたぞ。


「うわああああんお父ちゃぁああぁん!!」


自分でボコっておきながら大声をあげて泣きさけぶココ。

多分俺と同い年なんだろうけど、泣いてるその姿は数歳ほど幼く感じる。



...俺もああやって葬り去られるとこだったのかな?

「わ、わふっ」「ぴゃん...」



...やっぱ早まったかなあ?


アルナさんとルンナさんには戦いから無事帰ったら、俺と超越者について詳しい事情を説明するつもりだったんだが。


イルダナフさんも下手したらアルナさんに『手入れ』されそうだな...



...


「あっはっは!良いパンチだ!」


急にガバっと起き上がって笑い声を上げるワンダさん。


ダメージは無いのか、泣きじゃくるココのヘルメットを取り上げてわしゃわしゃと頭を撫で付けた。


「んもおおおお!どうして直ぐに帰って来なかったの!?お家帰ったらお母ちゃんにもたっぷり叱って貰うからね!」


父親の身体にしがみついて、怒ったような笑ったような顔で頭を押し付ける。


髪色にくせ毛と耳の形状に尻尾。

どれをとっても一緒で、本当に親子なのだと実感が湧く。


「...悪いがそれは出来ないんだよ、ココ」

「どうして?」


抱きついたまま呆けた顔を上げるその姿は、本当に子供そのもので。

とても俺に斬りかかるなんて思えない程だ。


「俺はやっぱり死んでるからさ...こうして再び会えたのも、其処に居る超越者(タリオン)のお陰だ」


イルダナフとワンダ。


この二人の偉大な英雄は遺体のままこの街に帰って...。


埋葬されたのだ。


「やだ...いやだよぉ!だって帰ったら遊んでくれるってあの時約束したもん!」


約束も誓いも、死によって全て無くなってしまった。


「すまねえな......」


ココを抱きしめて謝るワンダさんが本当に辛そうで...


...やはり、会わせるべきでは無かったのかな。


「でも...」


ココは目に涙を浮かべたまま。


「でもね......帰って来てくれたから、良いの」


にっこり笑ってみせた。


「...ココ!」



地球で保証人として借金を返して終わった人生を経ていても。

今世で十数年生きて、今は狩人として過ごしていても。

俺に、この問題のちゃんとした答えは出せなかった。


歳を食えば答えは簡単に出てたのだろうか?


地球で八十年余り生きて寿命で死ねば二人の問題に口出し出来てたのだろうか?


「──これからお仕事なの?」

「む」

「だってお父ちゃん、悪者をとっちめる日はいつもそんな顔してるもの」


ワンダさんが言葉に釣られて、自分の口元を手で掴むように覆った。


「......そうか」


気づけば俺は記憶の世界を抜け出る事も忘れて、親子の会話に耳を傾けていた。


「私ね、警備隊に入ったよ。お母ちゃん...今は私兵団辞めてお家で弟を育ててるの」

「おうおう、それでお前があいつの予備のショートソード持ってたのか」

「お母ちゃんが使えって言ったの...魔法が掛かってるし頑丈だって。それでね──」



親子の会話はまだまだ続くようだ。




...少し時間を取られたが、まだ挽回できる。


済まなそうに頭を掻いて俺に謝るワンダさんに手を振って返し。



...こっそり記憶の世界を抜け出した。


(´ω`)此処まで読んで頂きありがとうございます!

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