第5話 錬金術師協会会長
(´ω`)この回は視点変更してお送りします。
その昔。
警備隊の隊長だったワンダから身元の保証人になってくれと言われ、預かった身寄りの居ないガキが居た。
住む場所が無く、親も居ない。
親代わりになっても何をしてやっても噛みついてくる可愛くないガキだった。
魔術を教えようにも性に合わず、剣や槍を振り回していた方が似合っている。
頭はキレるが勉強嫌い。
ただ、ワンダにだけは心を開いていた。
そんなガキでも時が経てば大きくなり...
周りが無理だと散々言っていた警備隊の試験を突破して。
気付けば副長としてワンダの元で働くようになっていた。
...あいつが今のように丸くなったのはいつからだろう?
ワンダの娘を預かり、今も見捨てず鍛えているのは自分を拾ったワンダへの恩返しか。
──バカだね、生きてるうちに返しなよ。
そう思っていたら子供を押し付けられた。
警備隊の隊長どもは、あたしの事を託児所か何かと勘違いしているようだ。
だが子供というには年をとっているし、クソ餓鬼みたいに礼儀知らずでもなし。
おまけに可愛い白雪狼と黒い猫を連れた、不思議な坊主だ。
文字は読めず、書けず。
けれども名前は書けるし数字は読める上に計算が出来る。
世の中の常識には疎いが、何故か礼儀正しく。
実力を持ちながらあの年頃で粗暴でもなく、気遣いが出来る品性があり。
本当にちぐはぐな坊主だった。
だが時折見せる優しい男の顔は、あたしの旦那の見せる顔によく似ている。
...随分とおかしな坊主を押し付けられたものだ。
だが、嫌いじゃあない。
あぁ...嫌いじゃないが、気になった。
だから昼飯のステーキにマルムルクックの卵詰めと飲み物から添え物まで全部大盛りにしてやった。
やっぱり優しい男は大きくならなきゃあだめだね。
食後に語られた坊主にこれまで起きた事を聞いた。
黒い猫が幻獣リンクスだと知ったのはこの時が初めてだ。
ギルドで用事を済ませて帰り道を歩く。
ルンナのこんな明るい顔を見たのは何時頃だろう?
...坊主達が居るからかねえ。
ラヴィネにステラ、どちらも本当に良い子ばかり。
おまけに久しぶりの大物になりそうな弟子に、婆あながらも胸踊る。
「付いたよ」
坊主がこれから暮らす家を見せた。
坊主は目をパチクリさせてあたりを見回し、天翁樹を見るや動きを止める。
旦那が此処に住み始めると同時に種を埋めて、来る日も来る日も魔力を注いで育てた木だ。
やはり珍しいのだろう。
息をするのも忘れたように見入っている。
...しかし、どうしようか。
やっぱりあたし達の屋敷で寝泊まりして貰うかねえ...?
屋敷と長屋を見比べてるうちに、坊主達はいつのまにか姿を消していた。
──錬金術師。蒼玉のアルナにその気配すら感じさせずに。
何処へ行ったかすらも分からない。
「...ルンナや、坊主達を見なかったかい?」
「え?あ、あれ?いい、いない?」
不思議ながらも二人であたりを見回しているうちに坊主は現れた。
...元の場所に、まるで最初から動いていないかのように。
「坊主...?」「たっ、タリオンさん?」
ラヴィネとステラも一緒に居る。
「...アルナさんにお願いがあるんですが」
「...なんだい?」
坊主の顔というか、目が全く変わっていた。
新しく暮らす環境に期待と不安を寄せている子供の顔じゃあない。
「──この皮と魔石って幾らで売れますかね?」
あたしが数年前に見た顔だ。
「...さてね......」
旦那とワンダが、エアと戦いに行く前に最期に見せた──
「今からでもお金にして、この子達の明日からの魔石代と...狩りに使う『道具』を揃えたいんですが...」
──覚悟を決めた男の顔だ。
此処まで読んで頂きありがとうございナス!(´ω`)
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