第6話 ペンダント
「ギルドへ行くぞ!」
「わふっ!」「ぴゃあ!」
俺達は再び記憶の世界に入り、ギルドのある大広場に向かっていた。
イルダナフさん達とは、あとで街の外で合流する。
《...敵は記憶の世界から抜けたようです。現実世界に移る直前で、足止めを食らっているようですが限度があります》
──持ってせいぜい一、二刻程でしょう。
エアとワンダさんは此処しばらく現実世界に抜け出ようとしている手駒を仕留めて回っていたそうだ。
俺と出会う直前には数十ものゾンビが徒党を組んでケセルナを目指していたと言う。
俺は編成の終わったオークを首領とイルダナフさん二人に預けた。
槍で武装した二十名に大蛇二匹をイルダナフさんに。
投石の他様々な武器と盾を持つ散兵三十名を首領に。
五十匹の狼はラヴィネの両親が率いている。
機動力と氷魔法を生かして、首領とイルダナフさんの部隊をフォローして欲しい。
ワンダさんは指揮は得意では無いとのことでエアと一緒に遊撃手としていくそうだ。
なんでも一番強かったから警備隊の隊長やってたとか。
ただ仕事の管理と人員配置はいいが、指揮だけは苦手だったからアインさんに任せてたって...
...兎も角此処からは時間との勝負だ。
大広場のあの場所で、使えるものを探しだす。
みんなの生存率を底上げする為に。
一手でもより良い手に繋げる為に。
夜にだけ訪れる世界だと思っていたこの世界は、俺が一度辿った道を鮮明に映し出している。
迷う心配がない。
己の力をエアに教えられたその時から。
『記述』と『越える力』が何であるかという事を覚えていた。
この感覚をどう説明すれば良いのか解らない。
突然降っておりたものが、自分の中で呼吸をする生体活動に基づく常識のように根付いていたかのような。
五分前に出来た世界から続く自分の意識の合流のようで...
それは邪神の狂気による浸蝕か、はたまた神の教えによる啓蒙か。
...だが、まだ全てでは無い。
エアの言っていたことが超越者の全てではない。
急に作り変え塗り替えられていく自分の常識に怯え、胸のペンダントを握り締める。
──いいかい?ちゃんと帰って来るんだよ。
事情を全く聞かず。
アルナさんはそう言って、俺に白金貨を数枚握らせ...
「ほら、こっちに首向けて屈みな」
無理矢理俺の頭を抑えて屈ませて首に何かを掛けた。
それは不思議な色合いの...銀のようなものに紫色の宝石をあしらわれた。
ひと目で分かるほど力の込められた、精巧なとても素晴らしいペンダントだった。
「旦那にやるつもりだったんだ。あたしが若い頃に作った雑な黒歴史をいつまでも首からぶら下げててね...恥ずかしいから外せって言っても、聞きやしない。いつか王様に請われて王都に出向いた時に、無理矢理奪ってでもコイツに変えてやろうとしたもんさ...」
そう寂しそうに笑って、俺の頰を撫で続ける。
「良い男の顔だ。...旦那もワンダもあのクソ餓鬼も、本当に良い男は今のあんたと同じ顔をするのさ」
──だから。
「ちゃんと帰ってきな。あんたは明日っから文字の勉強をしなきゃなんないんだからね」
此処まで読んで頂きありがとうございナス!(´ω`)




