第14話 身元保証のお話
「あー、やっぱ其処から説明しなくちゃならないねえ」
「身元保証ですよね?ただ証明して終わりじゃないんですか?」
キョトンとした顔をしたココが首を傾げる。
一応美少女の類ではあるので小癪にもちょっとかわいい。
「お前この街の警備隊の一人なら、ちっとは法律を覚えような?」
「わふん」
ぺすっと腑抜けたチョップを食らって目を瞑りながらも尻尾をぱたぱた振るう姿はまごう事なく駄犬そのものだ。
「まあなんだ...外を知らずに生きて来たならこのルールを知らないだろうし触れる必要もないし、まあしゃあないか」
「いいからとっとと説明しな、あたしゃ忙しいんだよ」
差し出された紅茶のようなものを啜り、憎まれ口を叩くアルナさんは俺とルンナさんの間にどっかりと腰を下ろし。
ココはアインさんの隣に自分のカップを持って座り直している。
「へいへい、読んで字のごとく身元を保証。まあ自分は何処其処の誰某ですよってのを、証明する人間が身元保証人だ」
ふむふむ。
うん、この紅茶っぽいの美味しいな。
「普通の買い物の際にはこの身元保証はあまり必要がない。金を落とす客を制限とか馬鹿な話だからな...この国じゃ無いが、他所の何処かの国では買うものにすら制限が掛かるところなんてあるらしいぞ」
まじか。
「問題は物を売る時と特殊なものを買う時、あるいは大量の購入だ」
カップのお茶を揺らして回すアルナさんが説明の後をつぐ。
「ふん...他所からやって来た人間の身元が確かなものでない限り、取引を禁ずる法があるのさ」
なん...だと...?
「は、始めて、しっ知りました」
「普通に生きてりゃそりゃ滅多にある事じゃ無いしな」
アインさんはカップに残った茶を飲み干して続ける。
「その売り買いしてる人間が山賊や追い剥ぎだったりしたら問題だろう?国の弱体化を測る間者かもしれない。そんな連中に活動する為の金や物資を渡す訳にはいかないからな」
...おおう。
その法律俺にめたくちゃ突き刺さるやつじゃないですかやだー;;
あれ?でも俺モダ村の住人って言ったよね?
「まあ君の言いたい事は大体分かる。モダ村に籍があるって言いたいんだろう?」
そうそれ!
「これがまた面倒な話でね、普通なら自分が何処の出身で何処に住んでて何しに来たとかいう証明になる手形を、役所や村長から発行されてて持ってる筈なんだが──」
其処で言葉を切って俺をちらっと伺う。
「...君、持って無いだろう?」
...ないです。
「となるとまあ、本来の籍のある村まで戻って手形を再発行してもらうか、役所を通じて村か王国の管理局まで言って確認と手形の発行をするわけだ。ちなみに確認から手形を作るだけで銀貨二、三枚は取られるからな?あまりおススメはしないし...当然村や王国まで確認しに行く人間の費用もとられちまう。何よりも時間も掛かる。早くても二週間で遅くて一か月だ」
一か月も掛かって、金も取られた挙句
何も成果も得られませんでしたぁ!!
とか言われた日には泣く。
そも俺はモダ村で無実の罪で捕まって奴隷になってるし、籍が残ってるかどうか怪しい。
そうか...手形ってそういう役割があるんだな。
自分の置かれた立場が想像以上に弱い事に若干ショックを受け、膝の上の二匹を撫で続ける。
「とまあ、此処でうっかり手形を無くしたり最初から持ってない人間を救済するルールがあるわけだ」
!?
「わぅぅ」「ぴゃぉぅ」
撫でる手が止まって抗議の声をあげる二匹。
ご、ごめん。でも今大事な話だから..!
「まずこの街の警備隊隊長である俺の、この者を無実無罪と認める書類証明が此処に二枚ある...んで、ばあさん」
「...ふん」
アルナさんが元からある机の羽根ペンを手に受け取った証明用紙に、何かを書いていく。
そして最後に自分の親指の先をデコピンしたと思ったら、二枚の紙にそれぞれ押し当てた。
ラヴィネとステラの鼻と耳がピクリと動いた。
...まさかさっきの動作で、親指に傷を?
今のも魔法なんだろうか?
「ほい出来た。婆さん達筆過ぎてアレだけどこの者の身元を証明するっていう一筆と拇印...これで身元保証の書類は完成だ」
アインさんが俺に広げてみせる書類の内容がなんなのか判らない。
くそう...文字が読めたらなあ。
「一枚は役所に届けて貰って、もう一枚はギルドに持って行くんだ。其処で君が持ってるものを売ったり買ったり出来るだろう」
おお...やった!!
(´ω`||)のどいたい...ブックマーク評価ならびに此処まで読んで頂きありがとうございます。
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