第4話 女の子
泣きじゃくる彼女をひとまず置いて、死後硬直する前の熊を逆立ちさせたまま近くの木に立てかける。
解体する際に切り込みを入れる予定の部分に短剣を深く突き刺し切り口を広げるように動かす。
途端に大量の血が傷口から溢れ出した。
釣られるように、陥没した顔面の傷口からも滲み出て若干えぐい。
血で汚れた短剣を水袋の水で軽く濯いで振り払った。
今はこれでいいだろう。
どうせ凍らせるなら今血抜きをしなくてもと思ったが、解体する際にどうしても完全な死体からだと血は抜きづらく。
死んですぐのまだ臓器が動いてる状態の今のが断然にやりやすいからだ。
それに現状血を回収したところで使い道は殆ど無い。血を料理に使うための設備も今はない。
今回は血は回収せずに、そのまま垂れ流す。
さて、問題は...
「ひっく、ひっく、ぐすん...うぅっ」
今もぐずり、泣き続けている彼女だろう。
銀の髪が綺麗な、とても可愛いらしい...思わず胸が高鳴るような女の子だった。
歳は、今の俺と同じくらいか若干若い?多分十代前半か。
ゆったりめの藍色のショートローブから覗く白いワイシャツの胸元は空気を入れたように張りがあって、彼女の胸の大きさを知らせており。
胴を覆う革製のコルセットのようなものが、余計にその大きな胸を強調している。
...本当に同い年か自信なくなってきた。
銀色の髪を覆う藍色の帽子は色が良く、丁寧に作り込まれ。
上品なレースで縁取りを飾る質のいいシャツに相反して質実剛健な造りの頑丈なローブが、眼鏡を持っている事も合わせて、彼女の家が持つ格の高さを想像させる。
ひょっとしたら貴族か商家の娘だろうか?しかしそれなら何故こんな場所で採集を?
ただ眼鏡を持っているからということと、上品で上等な服である事が判断材料なのでなんとも言えない。
これが一般的な可能性も十分にある。
ただ、この世界は一応透明なガラスの作成並びに繊細な加工を可能としているらしい。
人一人と出会う。
それが偶然なものであれ、得られる情報は多い。
...まあともかく、間に合って良かった。
あ、それから一応シャツとローブは無事だ。
問題はロングのスカートとその中身だろう。
このまま一緒に街まで行って、彼女を衆人の目下に晒す事は流石に躊躇われた。
となると。
鍋でラヴィネの氷を溶かして水袋の水と合わせ、ムクロジ擬きの実で洗って乾かすしかないだろう。
下着かあ...どんな形なんだrいやいや何生々しい事想像してんだ俺。
頭を振って邪念を振り払うと、彼女から少し離れた場所で途方に暮れるラヴィネを優しく撫でる。
俺以外の人間を見たのは恐らくこれが始めてだろう。
泣きじゃくる事態にどうして良いか分からず見ているしかなかった。
でも、鼻を鳴らしながらも彼女の事を心配しているのには間違いなく。
ステラもまた、彼女の一挙一動に耳と鼻を傾け必死に情報を収集していた。
この子達は小さいながらも、自分に出来る事を頑張っている。
...いつもありがとうな。
でも君たち、さすがに匂い嗅ぐのはやめてあげなさい。
(´ω`)へんたい...
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