第5話 お洗濯しよう
「ラヴィネ、しばらくその娘を頼む」
彼女のお守りというか監視をそのままラヴィネに任せた俺は木と岩がちょうど目隠しになるような場所をすぐ近くに見つけ。
そこに石を円形に組み、枯れ枝と枯れ葉を集めて簡単なコンロを作った。
鞄から火打ち石と鉄片を取り出し、あらかじめロープの端を解いて削って作った火口を枯葉に落とし、火打ち石を鉄片で打ち付ける。
『カツッ!』という音とともに火花が散って、瞬く間に火口が煙を黙々と吐き出し。
そのまま息を吹きかけると、火口の火種は空気を吸って大きくなって枯葉へと燃え移った。
火打ち石を打ち付ける時に出る匂いに、ステラは敏感に反応して音のする方角へじっと耳を傾けている。
ちゃんと火が燃え移ったとこを見届けた後で、鍋を設置して水袋から水を適量入れる。
これにラヴィネが必要な分だけ、その都度適量の氷を入れるだけで良い。
長い枝を数本組み上げ、その上からマントをかぶせて目隠しを作った。
あとはムクロジ擬きの実を用意して準備は完了だ。
使った後は種を取り出し、炒って食べる事も出来るが今のところ集めるだけに留まっている。
...フライパン欲しいなあ。
「きゅぅぅん...」
ラヴィネを呼ぼうとして後ろを振り返ると、白狼の子供は女の子の頰をおずおずと舐めては離れ、前足をあげて下ろしてお手のような仕草をしたりと大忙しだ。
その甲斐あってか女の子は泣きじゃくるのをやめ。ラヴィネの精いっぱいの献身に、はにかむような笑顔を見せてくれた。
そろそろ声を掛けても大丈夫か。
「あの...」
「!は、はははい!!」
声をかけられた彼女は驚いたような声をあげ、帽子を深くかぶり直して俯き。
両手でスカートを抑えるように隠す仕草に思わず顔を背けた。
「すまん...」
「ご、ご、ごめんなさい...」
前世を合わせて女性経験皆無童貞120%な俺の、この対応力と配慮の無さよ。
でもいいんだ。
どうせこの先の人生もそうだろう。
俺は孤独に、いやラヴィネとステラと一緒に生きていこう。
...しかし何故人を助けたのに俺は精神に余計なダメージを受けてんだろうか?
俺はなるだけ無表情を装い。彼女に努めて優しく話しかけた。
「向こうに目隠しを作って水を入れた鍋を用意しました。あとはこいつで洗ってください」
「あっあ、泡立実ですね...わざわざ、ありがとうご、ございます...」
「いえ...」
消え入りそうな声で礼を言って、恥ずかしそうにスカートを抑えたまま片手で俺から実を受け取る。
なるほどこの世界では泡立実というのか。
無患子と違って直球的な名前だ。
「ラヴィネ、鍋に適度に氷を足して水を作ってやってくれ」
「わん!」
それと彼女をありがとうな。
感謝の気持ちを込めて優しく撫でてやる。
耳を伏せ、うっとりとした顔で手を受け入れる姿に心が癒される。
俺は地面に落ちた籠を拾って、バラバラになった薬草ときのこを束ねて入れ直した。
まだ容量に随分と余裕があるな。
よし。
「俺はこいつを集めて来ましょう。何かあったら大声で呼んで下さい」
「えっ、あ...そのっ」
洗う音を聞かれても恥ずかしいかもしれない。
あと熊を持ち帰るにあたって、虫除けの薬草で焚いた煙で軽く燻してやらないとノミとかダニが怖いからな。
決して会話が怖いとか、間を持たせる自信が無いから逃げたとか。
そういうふうではないという事を知らせたい。
「...ぴゃあ」
だからステラ、棘を出しつつ締めなくて良いんだ。
(´ω`)ここまで読んで頂きありがとうございます!
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