第16話 出発しよう
目が覚めた。
見上げれば、顔を覗かせようと迫り上がる太陽の光で空は赤みがかっていた。
あれだけあった雲が何処かへ流れ。
薄闇の中に、未だに未練がましい輝きを見せる明星のように輝く星が見えた。
三分間だけ寝ると言った結果がこれだよ...。
...年かな?
物心ついて爺ちゃんと出会った後十年程度生きてたから俺の今の歳は十三、四歳か。
...なんとも歳食った十四歳だ。
俺のすぐ側にある鞄の上には、積み重なった二頭分の大蛇の皮。頭部にはしっかりと骨と牙まで残ってる。
あの世界で解体し、食べられた結果がそのままこっちに来ていた。
けど流石に二匹分は多い。これに肉が付いてる状態で持って行こうとか、無謀にも程がある。
...やれなくもないが。
でもこれそのまま運ぼうとしたら、完全に不審者だったな。不審人物の身体検査で首輪発見余裕でしたとか洒落にならん。
...いかん危ない危ない危ない...。
他には背もたれにしてる木には立て掛けてある短剣とブロードソードは手を伸ばせば手に収まる位置に。
洗いあがったぴかぴかな鍋は、取手の部分を草で縛って木からぶら下げてあった。
オーク達が気を利かせてくれたようだ。
解体の腕といい料理の腕といいなんかその...凄く悔しい。でも今度会うときの為にも、あいつらに新しい鍋や包丁を買ってあげたい。そんで素材も渡してもっと飯を作ってもらおう。
そういやあいつら普段寝床とかどうしてるだろう?
全員ほぼ全裸のようなもんだし...冬はまだ先だけど、ちょっと心配になって来たぞ。
約100弱の集団の生活...。蛇と狼にオーク。
大工道具と農具に、生活雑貨。
衣服に、寝具。
うぅ...俺たちだけの買い物かと思ったが、これもの凄い出費になりそう。食い物が必要ないだけまだマシか。
...蛇の皮と魔石どれくらい売れるかなあ。
「...」もぞもぞ。
ん?起きたかな?
子供達は俺の腕の中にいる。
白と黒のふわふわもふもふが、今も安らかな寝息をたてていた。
今頃どんな夢を見ているのだろう。
黒いリンクスの子供の洗いあがった艶やかな毛並みが、掠れた金の斑紋とともに朝焼けの光を浴びて。
それが幾重にも重なって光が乱反射する宝石のように、一層美しい輝きを見せていた。
親も美しい身体をしていたが、この子だって負けていない。
まるで夜空に輝く星のようだ。
しばしの間見惚れて思わずため息が漏れる。
...そういや、リンクスの子の名前も考えなきゃだめだな。
うーん...。この子の名前。
黒。
猫。
うーん...。
キャット黒田
『ガブッ』『ザシュッ』
「〜〜〜〜ッッ!!?!」
ラヴィネに指を噛まれ、リンクスの巻きついた尻尾の棘がびっしりと逆立った。先っぽの刃物のような棘じゃないだけ、まだ温情か。
どうやら寝ぼけてるようだ...その筈だよな?
「わふ...」「......ぴゃ」俺の視線に気付いたのか、二匹とも鼻をぐしぐしと俺の身体に押し付ける。
ぐふぅ...こ、このねぼすけどもめ。その可愛さに免じて今日は許してやろう。
ラヴィネをゆっくりおろすと、その場で前足を前に出して伸びをする。
だが、リンクスの子は俺から降りたがらず。
離れようともしなかった。
頑なに尻尾を巻きつけ降車拒否の姿勢だ。
そして...「ぴゃぁ」
その目はやはり...閉じられたままだった。
大蛇の皮は思った以上に頑丈そうなので常備していたロープを巻いて軽く縛って持ち歩くことにした。
焚き火ですっかり乾いたマントを装着する。
首輪を隠すように位置調整をしようとしたら、黒い毛が視界を覆ったと思ったら。リンクスの子の尻尾が首に巻きついた。
マントと一緒になって、首輪を完全に覆い隠した。
まるでマフラーのようだ。
「ありがとうな」
俺は彼女に礼を言ってぽんぽんと背中を撫でる。
そして、朝焼けの光を浴びて...明星のように輝いて見えた彼女の毛並みから名前を付ける。
「ステラ...今日からお前はステラだ」
「ぴゃああ」嬉しそうな鳴き声をあげるステラの頭を撫で回した。
途端に始まる喉のエンジン音が、振動になって俺に伝わる。
「お前の目は俺が必ず治してやる」
だから...
「わん!!わんわん!」自分を忘れるなと鼻で突いてくるラヴィネの頭も一緒に撫で回す。
「そうだな、勿論ラヴィネも一緒だ」
...これからもずっと、一人と二匹で生きて行こう。
「そうと決まれば出発だ!村で必要なものを手に入れて、目を治す手がかりを探すぞ!」
「わふ!」「ぴゃっ!」
村で何が待ってるのか。
期待と不安が胸の中で掻き回される。
だが、金と情報と物資を得るためにも、もはや迷いはなかった。
朝焼けの光を受けて輝く湖面に背を向け、俺達は歩きだした。
第ニ章終了ですここまで読んで頂きありがとうございます(´ω`)次章からやっと人間が出ます乞うご期待!
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