第1話 ケセルナ警備隊隊長
このお話は視点変更しております。
第1話 ケセルナ警備隊隊長
ケセルナの朝は早い。
女神の住まう三つの月が最も高くなる時に門を締め切り。
太陽が半分以上顔を出す頃には門を開ける。
夜中に到着した者に関しては余程の事がない限り入れないし出られない。
まあ、それも事前に登録して発行された手形さえあれば、大門のすぐそばにある通用門から入る事が出来る。
あと貴族はほぼ問答無用で出入り自由だ。
おまけにどいつもこいつもわざわざ大門を開けさせやがる。忌々しい。
開門!じゃねえよ張り倒すぞ。
例外はこの街に住む者で。
どうしても必要になった場合に限り、出入りを認めてるというかなんというか。
...まああれだ。
街の規則に照らし合わせりゃ一切の出入りを禁ずる。ってなっちゃあいるが、それじゃあ暮らしていけない人間も沢山居る。
そういったときの方便と暗黙のルールで、
俺達は一切何も見なかっ「ルンナちゃんおはようございます!!」
......
「コ、ココちゃんおはよう...」
「これから薬草取りに行くの?んもー冒険者のみんなも薬草くらい取りに行ってくれればいいのに!おばあちゃんがいつも依頼出してるでしょ?」
「い、いいの...ポーション作りだけじゃ、気が参っちゃうから。き、気分転換に...その」
見ればうちの隊一番の馬鹿である駄犬娘が。
「んうううもおおおルンナちゃあああん」
この街の権力者たる錬金術師長。
その人の孫であり弟子でもある娘に全力で絡み倒して、無理矢理抱きつくと言ったわいせつ行為を働いており。
「はわわわ!こ、ココちゃんっ...!?た、たすけてくださいー!」
...眼福だが婦女暴行はあかん。『ドゴォ!』
「あづっ!?」
「朝っぱらから五月蝿えぞ、ちったあ近所迷惑も考えろ」
頭を抑えて蹲る駄犬娘から錬金術師のタマゴであり、駄犬の幼馴染であるルンナを解放して助け起こす。
彼女はローブに付いた草を払い、とんがり帽子を深く被って赤い顔を隠す。
「今の一撃で、死んだ父ちゃんが...手を振ってたのが、見えましたよう...」
「ちっ」
惜しい。
「部下が死にそうなのになんで「ちっ」なんですか!!」
死の間際から直行で戻って来てるじゃねーか。
「アイン隊長、あ、ありがとうございます」
「いやいや、うちの馬鹿が毎度済まない」
馬鹿の首根っこを掴んで道から退かすと、通用口の鍵を外す。
「ま、ひとりごとだが気をつけてな」
「は、はい...それではいっ、行ってきます」
ルンナは丁寧にお辞儀をして、通用口から出ていった。
人見知りが激しく内気な彼女は、権力者の娘だがいつも礼儀正しく、心根が優しい良い娘だ。
出来る事なら俺の厄介事を増やすこの馬鹿と交換して欲しいくらいだ。
その彼女が。
かれこれニ刻(四時間)程経ったにも関わらず、帰って来ない。
いつもなら、一刻ほどで籠いっぱいに薬草と少量のきのこを集めて通用口に帰ってくる筈だ。
「ルンナちゃん、どうしたんだろう...」
大門と通用口の間に設けてある詰所の中で。
駄犬娘が目の前を行ったり来たり、せわしなく動く。
暗黙のルールで今まで何も問題が無かったのが、今まさに起きようとしている。
...いやもう起きてるのか。
「探しに行くぞ」
「は、はい!」
人手を集めるために立ち上がったその時。
門の向こう側から、よく知る彼女が歩いて来るのが見えた。
「ルンナちゃん!...よかったぁ...?」
...背後に熊を軽々と持ち上げ、平然と運ぶ黒髪の少年と白雪狼を従えて。
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