第13話 祭りのあとで
あれから暫く経って。
気付けば狼とオーク達は蛇の肉を食って騒いでる。
湖の周りのあちこちで焚き火が焚かれて、ちょっとした焼肉パーティのようだ。
皮はこの上ない程綺麗に剥ぎ取られて、売るのに全く困らないだろう。
解体の腕が俺より上手くて、ちょっとした敗北感を味わう。
蛇の血は少量の水が岩塩と胡椒に、鹿ジャーキーと洋梨擬きハーブ薬草、おまけに砂のように砕いた胡桃擬きに何処から見つけたのか舞茸のようなきのこを混ぜて煮られて、ソースのようになってる。
ちろっと味見したが不思議な味わいで、ちっとも悪くない。
ハーブと薬草が元々匂いの弱い蛇の血の臭みを消し去り、舞茸より濃密なきのこの出汁が岩塩と胡椒で引き締められ、果物の甘さが見事マッチングしている。
全てを繋ぎ合わせるのは姿が消える程煮込まれた鹿ジャーキーと歯ごたえを楽しませる胡桃擬きだ。
...要するに凄く美味い。
棒に刺された焼いた肉を、作ったソースに入れて食べる。
たちまち鍋の前に長蛇の列が出来上がる。
狼達は肉にシンプルに血を掛けたものを味わって食べている。
大蛇二匹分とはいえみんなに行き届くか不安だったがなんとか配りきれたようだ。
太もも程度の太さとは言ったがもうひと回り大きくてそれが十数メートル程の大きさか。
それが二匹居て、オークと狼合計で100弱の集団だから...
...まあ、足りるのか。
誰かが俺の肩を叩く。
振り向けばそこには二つの大きくて綺麗な魔石。
おっとすまない。
オークが蛇の死体からわざわざ持ってきてくれたらしい。
受け取ると持ってきたオークはにこりと笑って親指をぐっと上げ、陽気な足取りで帰っていく。
俺の短剣とブロードソードを使って、見事な解体の腕を披露してくれたオークだった。
手の平に若干余る二つの魔石。
今あるオークの魔石より一回り大きくて色の違う綺麗な石。
首領オークには若干劣るが良い値段で売れそうだ。
...って
「おおい何食ってるのキミら!!?」
「「「「?」」」」
?って、全員不思議そうな顔すんなや!
首領オークもなんで止めないんだよ!?
え?
本蛇二匹の許可はとった?
指差す方向を見ればオーク達に手渡された余りの肉をそのまま飲み込む二匹の蛇。
...
自分で自分を食うのか(困惑)
これからは此処で暮らす仲間になるから、自分達の肉を食べて欲しい...か。
本人(蛇)が言うなら、何も言えないじゃないか。
みんなもすまんかった。そのまま続けてくれ。
え?
お互いの肉だから微妙に違う、ってもうええわ!
...なんでツッコミ役やってんだ俺。
何故意思疎通出来るかもわからないが、この世界では不思議なことじゃないらしい。
生まれついて瞳の無かったリンクスの子に、瞳を生やした世界だし何でもありか。
俺の目の前ではみんなで仲良く並んで食べる狼の子供達。そして一緒に行儀よく食べるラヴィネにリンクスの子供。
一応表面を焼いて、血を一旦煮沸させたものを掛けて食べさせている。
食いつきが大ネズミの比じゃない。
うーん...あまり贅沢なものに慣れさせてもなあ。
おっと魔石は鞄の中にしまっとこう。
「此処に居たか」
魔石を鞄にしまったところで、首領オークが白狼二匹と一緒にやって来た。
どうやらもう食い終わったらしい。
「元々此処では腹が減らないし食ったところで意味はない。まあ楽しめはしたぞ」
そう言って腹を叩いて笑う。
でも知ってる。
みんなより一番早く食って、早々に姿を消したこいつは。自分が居ては部下のオーク達が真にリラックス出来ないと考えたのだろう。
変なところで理想的な上司だよな。
...でも、オークのみんながちょっと寂しそうにしてたから今度は余計な気を使うなよ。
「ふんっ、善処はしよう」
首領オークはそう言って頰をかいた。照れ屋め。
白狼二匹は慈愛の眼差しで子供達みんなを見守っている。
リンクスの子供も勿論入ってる。
運動会の後も、子供達みんなを...そして誰よりも彼女を優しく毛づくろいしてくれた。
親から捨てられた彼女に対する優しさがとてもありがたかった。
リンクスも親狼二匹にたくさん甘えて...。
お陰でラヴィネがヘソ曲げて、俺の腕の中に収まって唸ってたがな...ははは。
最終的に俺の腕の中に収まってたラヴィネを親二匹がかりで毛づくろいしてようやく機嫌を直した程だ。
あっちを立てれば、こっちが立たず。
何も地球だけに限ったことじゃあないか。
「何はともあれ、目が治って良かった」
「その事だが...」
ん?
「治ってない」
...え?
「この世界から戻ればあやつは再び元のめくらよ」
(´ω`)ううむ...未だにルビがうまく使えない




