第6話 既視感
予定通りというわけではないが、だいたい半日掛けて森を歩いて抜ける。
夜明けと共に出発したが、日が中天を抜けてそろそろ夕の刻に差し掛かる頃だ。
「わふっ!」
ラヴィネは行ったり戻ったりと、相変わらず元気いっぱいだ。
時々後ろ足で立っては俺の手を甘噛みしたり。撫でるようにと、頭をこすりつけたりしている。
大人の狼というには全然及ばず。
まだまだ甘えたのかわいい盛りの子供狼である。今度は鞄をひたすら鼻で突く。
ん?魔石?
駄目駄目貴重な換金材料だぞ?
「きゅうぅ、きゅぅぅん...」
...しょうがないなあ(大馬鹿)
此処までの道のりで、胡桃っぽい木と栗の木であろうものを見つけた。
実も前世と同じようなもので、爺ちゃんからも食べられると教えられたものだ。
桃栗三年柿八年の言葉にこの世界も当てはまるなら、栗の実を植えて三年経ったら食べられるという事か...。
いやこれも当てはまるかどうかはわからない。
今は鞄の余裕がないのでもって歩けないが、帰りに持って行こう。
まずは用事を済ませてからだな。
歩いてくにつれて木立の間隔が次第に伸び。
木漏れ日の降り注ぐ光が広がり、影が徐々に追いやられていく。
ざあ...。
木々のざわめきが一瞬止んだような気がした。
降り注ぐ太陽の光。
目の前に現れた水面が、風に揺られて波紋を作る。
さざめくような水の波は日の光を反射してきらめいて。溢れ返るような水の匂いが、草木のそれをより分け主張した。
知らない種類の鳥達が何処からともなくやって来てその湖の中へと降りて、滑るように湖面を進む。
水鳥の一種だろうか。
この世界で初めて見る大きな湖を前に、俺達はしばしの間立ち尽くした。
「凄く綺麗な場所だな...」
「わん!!」
ラヴィネは興奮したように吠えたものの、今度は俺にぴったりくっつくように動く。
初めて見た湖に、警戒心がようやく仕事をしたようだ。
湖面から顔を出す植物から、蜻蛉がついっと水を切るように飛び立った。
水辺には大ネズミの集団が、餌を探しては指で器用にとって食べている。
村に行くにはこの湖を回っていく必要がある。
だいたい一時間といった所か。
幸いラヴィネのご飯も見つかった。
ネズミの肉は初めてだが、喜んでくれるだろうか。
少し早いがキャンプ地を探そう。
そう考えた矢先の事だった。
草むらをがさがさ掻き分けてなにかが近づいて来た。
音だけが聞こえ、気配が全くしなかった。
全身が途端に緊張する。
「ラヴィネ...下がれ」
「...きゅう」
俺はいつでも迎撃できるように、ブロードソードの留め具を外して体勢を整えた。
ラヴィネは突然やって来た外敵に足が竦み震えている。尻尾は完全に股の下だ。
いざとなればこの子を抱えて拠点まで逃げようと考え。
...しかし、どうにも引っかかる。
確かに以前、こういう場面に出くわしたような...?
そうこうしてるうちに、それはやって来た。
...とんでもない、爆弾を抱えて。
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