4話 真なる王族
前半別視点です。
そこは、孤児院では考えられない程の絢爛とした空間だった。
昔、孤児院の年上のお姉さん達が、女の子皆が憧れる舞台だと語り合っていた。
その場所に、私は今いる。
お姉さん達が語る絵空事でない。
王子様達と出会い恋に落ちて幸せになる未来が、私にはある。
「詩音、分かっているね? 私はお前の義父様だ。私の力になってくれるね?」
私の新しい父親になった男の人が、私の肩に手を回しながら言った。
男の人の名前は、須々木 新。
私の居た孤児院のある領を治める辺境の田舎の地ではあるが、光の国の男爵だ。
私は記憶を思い出し力を得てからは、ゲームと同じ設定になるように行動した。
主人公はその力を見初められ男爵の養女となり、光の国で開かれる舞踏会で攻略対象者達と出会う。
だから、私は自ら力を隠さずに披露し、男爵の目に留まるように仕向けた。
そして思惑通り、私はこの始まりの舞台へとやって来た。
正直、男爵の事は好きではないけどね……
男爵の目的は、私の力とそれが引き寄せる権力だ。
私の精霊であるレイレイは、氷の精霊。
氷の精霊の加護を受けし者は、この世界にとって大きな意味を持つ。
この世界で、氷の精霊の加護は既に喪われてしまったとされているのだ。
緩やかに終焉へと向かう世界の中で、その力は奇跡のようなもの。
皆が求める力。
ゲームでもそうだった。
永い時を経て現れた氷の国の姫君、それが私だった。
私は必要とされている。
私には、今は亡き氷の国を復興させるという役目がある。
この世界では、私が主人公だ。
必要不可欠の存在、代わりのきかないたったひとりの存在。
孤児院に居た頃とは考えられない程の豪華なドレス、豪華な食事。
カサカサだった肌も、パサついて薄汚れていた髪もメイドによってお姫様に相応しく磨き上げられた。
まぁ、髪を銀色に染められたのは驚いたけど……地毛だと思ってたけど、ゲームではそんな裏設定があったのね。
思ってもない裏設定を知る事になったが、これで条件は全て揃った。
私はゲームの開始を、この日を、王子達との出会いを心待ちにしていた。
なのに──────
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「──まぁ、あれが噂の?」
「見事な色彩だ。氷の国が滅びて久しい……やはり、王族の方達の
色は染料などでは決して出せない色だな」
「あぁ、今日参加した甲斐があった。それに色彩だけでなく、容姿も美しい。まるでお伽噺の女神のようじゃないか! 氷の国の王族は、皆際だって容姿が優れていたという伝承は事実だったのだな!!」
ザワザワとした喧騒の中、白雪は様々な視線に晒されながら瑠璃と共に会場を歩く。
そして向けられる視線は白雪だけでなく、一緒にいる瑠璃にもまた向けられていた。
「瑠璃ちゃんすごいです……私は気になって舞踏会どころじゃないのに……」
先程からチラチラと声のする方に視線を向けてしまう白雪と違って、瑠璃はまるで何事もなかったのかのように振る舞う。
そんな瑠璃に、白雪は尊敬の眼差しを向けた。
「これでも、私は舞踏会に参加する度に影口を叩かれてきましたから、こんなのは慣れっこです! 白雪も、貴方に悪意を持っている訳じゃないんですから、シャキッとしなさい!」
胸を張ることではないが、瑠璃はそう言って白雪にアドバイスをした。
「はいっ!」
瑠璃の言葉で、白雪は周囲の視線を完全にシャットアウトした。
「その意気です、白雪」
瑠璃も何時もなら完全にシャットアウト出来ているわけではない。
けれと、今日は白雪達がいる。
それだけで、背筋を伸ばして凛として居られたのだった。




