8話 婚約破棄は決定なのです!
新連載を始めました。
只今、毎日何かしら更新中です。
……いつまでも続くかな?
「白雪、その辺で終わりにしてください」
わんわんと泣いて抱き合う白雪と瑠璃に、鈴から制止の声がかかった。
鈴は白雪に怒ったような、安堵したような複雑な表情を浮かべていた。
「鈴……ごめんなさい」
白雪は鈴の言い付けを破ったことを、叱られた子供のように謝った。
後悔はしていない。
けれど、皆に迷惑をかけてしまう事には申し訳ない気持ちがあった。
「……やってしまった事を悔いても仕方ありません……それに、貴方が出なければ私か翔が出ていましたから」
そんな白雪に、鈴は苦笑いを浮かべると怒りを解いて軽く抱き締めた。
「ここで瑠璃さんを見捨てるような白雪を……私達も見たくはありません」
「鈴!」
ひしっと鈴に、抱き付く白雪。
実に微笑ましい光景であっただろう。
────通常であれば。
「はいはい、その辺で。周り、すごい見てるから。鈴も止めに入ったんじゃなかったの?」
3人で友情を確かめ合っている雰囲気を壊すかのように、少し気まずげな翔声がかかった。
「……あー、どうしましょう? これ……?」
ようやく冷静さを取り戻した白雪が、辺りをそろりと見回すも周囲の支線は白雪へと釘付けであった。
「相変わらず、考えなしだな白雪」
「ぅ……これは、しょうがないのです!……鈴、どうすれば…」
白雪らしいと笑う双季に、抗議しようとしたが何も言い返せない白雪。
白雪が表に出るのは、実際もう少し先の予定であったのだ。
「それは……」
しかし、当然の如く事態を予想していなかった鈴に答えを出せる筈がなく、鈴は口ごもってしまった。
「──少し、お話いいかな? 氷の姫君?」
そんな気まずい空気が流れる中で、1人の中年の男性が白雪達に声をかけた。
「お父様……?」
「えっ!? 瑠璃ちゃんのお父様ですか? 瑠璃ちゃんには、いつもお世話になっています!」
男の正体が瑠璃の父親であると知った白雪は、ペコリと頭を下げた。
瑠璃の父親は王族特有の同じ髪色と瞳の色で、雰囲気が瑠璃と似て優しげな人であった。
「いや、此方こそお礼を言うべき立場だ。瑠璃を助けてくれて、本当にありがとう。瑠璃もすまないね……私達も人を見る目がなかったようだ」
水の国の王たる男が、白雪に礼を告げた。
そして、瑠璃に申し訳なさそうな笑みを浮かべると、その頭をひと撫でした。
「お父様……」
「光の国の王子とは、彼方の望み通り婚約は破棄にする」
目を赤く腫らす瑠璃に、父親は笑顔でキッパリと言い切った。
一輝の名を呼ばずに黒い笑みを浮かべているあたり、瑠璃の父親の怒り具合が感じ取れる。
「いい、のですか…? あの婚約は水の国にとって……」
自分の為に無理を言っているのではないかと、瑠璃は父親に恐る恐る尋ねた。
「必要なものだね」
瑠璃の問いに、キッパリと言い切る瑠璃の父親。
娘への愛情も勿論あるが、国の利益を全く考えていないわけではないのだ。
「なら──」
「けれど、別に相手が光の国でなくてもいいんだ」
瑠璃を安心させるように、瑠璃の父親は微笑んだ。
「それ、は……?」
「氷の国の姫君、白雪殿と言ったかな? 水の国は、氷の国との親交を結びたい」
それは1人の父親として覚悟であり、国王としての責務からの申し出であった。




