08 失敗迷宮
失敗迷宮
隆之は実際の迷路がどういう風に設置されているか見てみたい。
その点を人工知能に聞いてみた。
『すでに、設置されている迷路を見ることは出来るのか?』
このあたりは迷宮設置には全然関係が無い。
どちらかといえば、経営ノウハウに通じる部分だ。
あまり期待せずに返事を待っていた。
「できません。けれども、その町の酒場は見る事が出来ます」
意外な返事だ。
『出来ません』と書かれたときには『やっぱり』という思いが浮かぶ。
その後に、文章が続いたことが意外だ。
『見せてくれるのか?』
「はい、参考のため一箇所だけですけど。それ以上は1000G必要です」
どうやら、一箇所だけはサービスでみせてくれる。
けれども、複数の場所の調査は有料らしい。
なんとも、世知辛い印象だ。
他の迷宮を見るのは禁止項目らしい。
当然といえば、当然なのかな。
うまく経営している迷宮を見て真似する者がいる。
だから当然だ。
ここで、初めておかしなことに気付く。
孝之は、他に迷路があるのが当たり前のように考えていたからだ。
『他にも迷路があるのか?』
念のために質問してみる。
「ありますよ。表示します」
そういって、見せてくれた地図に追加される。
最初から割りと大きな地図だ。
今回は、世界地図から見せてくれわけではなさそう。
都市に思えた三倍ほどの都市があった雰囲気だ。
都市に思えたのは勘だ。
迷宮と共に街が出来て迷宮が消えれば街が消える。
まるで、鉱山と都市のような関係に感じる。
それだけの数の迷宮があったことに驚く。
それ以外、現在活動中の町にも迷宮は存在していた。
大きな街なら三個ほどの大きな黒い点が存在している。
割と近くの都市にまだ白い大きな点が存在していた。
それ以外、特徴的なものは白でも黒でもない緑の点があることだ。
緑の特徴的な大きな点が二つ。
それ以外、緑の小さな点が無数。
『これが、全部活動中の迷路か?』
「違います」
そう言うと、次々と黒い点が塗りつぶされていった。
残っていたのはほんの一握りの20個ほどだ。
9割が潰れていた。
あの黒い点は間違いなく失敗作だ。
『なぜ?』
なんとなく呟いていた。
「簡単すぎて、潰れたのがほとんどです。3割ほどは難しすぎて誰も挑戦しま
せん。十年誰も挑戦者がいない迷路は破棄されますので」
『どうして?』
そこに迷宮があるかぎり挑戦者はいるとおもうのだけど?
その疑問に人工知能が返事をする。
「中のモンスターが共食いを初めてレベルアップを勝手に行います。そうなれ
ばあまりに危険になるため入り口を塞がれます」
モンスターの共食い?
初めて聞く話だ。
なんにしても、要は失敗作だ。
迷路に人を呼べなければ当然だった。
孝之が最初に作ったような迷路では失敗だ。
複雑すぎて隅々まで人が来ない。
迷宮にはいってからも人は生活する。
巨大すぎる迷宮は最初から敬遠されるのは当然だった。
『では、簡単な迷路はなぜ?』
しかし、少し工夫すればなんとかなりそう。
「モンスター出現ポイントを全部潰され破産した迷宮です」
それで、理由がわかる。
浅い階で、モンスターを狩りつくされたケースだ。
そして、予算を食いつぶされた。
なるほど、最初の10000Gポイントでは結構厳しい。
『浅い階で稼ごう』とした失敗作なのだろう。
まともだったら、隆之もこれらの失敗をするところだ。
隆之は既に最初のシミュレートで方針を決めていた。
それと、迷宮ポイントを売るべき理由も想像できた。
破産回避のため、背に腹は変えられないケースだ。
しかし、それがどんなケースなのかは判らない。
どちらにしても、失敗した時には違いない。
『それでは、酒場を見せてくれるか?』
気分を変えて市場調査に出て行くつもりだ。
失敗作のことばかり考えていては気が滅入る。
「どこの町を選びますか?」
『大きな町に面したところがいい』
あの成功している街の酒場もよい。
けれども、緑がまだ出来立てを意味しているなら参考にはならない。
三つの黒に囲まれて、現在白い大きな迷宮の街を選んだ。
ここなら、歴史もあって様子もわかりやすいだろう。
「判りました」
そういった途端、隆之は酒場の前に立っていた。
割と大きな酒場で人が盛んに出入りをしていた
『金を持っていないけど・・・』
そう思って、ポケットに手を入れる。
数枚のコインが手に当たる。
どうやら、金を用意してくれた印象だ。
その点は安心だった。
服装はいつの間にか黒いローブになっている。
絹を思わせる光沢。
かなり豪華な印象だ。
そのまま、酒場に入る。




