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迷宮の輪舞(ロンド)  作者: いかすみ
迷宮探索1
25/27

25 タカユキ

タカユキ



「そのタカユキというのは何物ですか」


下手なことを言うとまずいような雰囲気。


心当たりがあるだけになおさら聞けない。


名前が偶然のように装って内容を聞く。


「タカユキ様というのは白国の迷宮の神様です」


「迷宮の神?」


「はい、50年前に白国に降臨されて、学校迷宮を作られた方です。その後、

 最高神がその迷宮を各国に作られて、今では世界中に恩恵を施されています。

 ただ、残念なことにこの黒国では迷宮の神様が不在のため恩恵がありません

 けど。賢者様の名前がタカユキというのは?」


ここまで説明されて、隆之がその迷宮神であることが判った。


孝之自身は楽しんで迷宮を作っていただけ。


まさか、神格化されているとは考えてもいない。


そして、町長の態度はあきらかに隆之を期待している雰囲気だ。


「いや、私の名前は両親が付けてくれたもので、おそらく迷宮神にあやかった

 物だと思う。そんな大それた名前であることを初めて知ったぐらいで」


下手に期待されても困る。


他人を装って誤魔化すことにした。


「そ・そうですか」


がっかりしたような町長の姿。


隆之に何が出来るのかもわからない状況だ。


下手な期待を持たれるより、期待されずにいた方が今後もやりやすい。


その意味で、訂正はしない。


それより、気になるのは現在位置だ。


迷宮と思われる大平原をさまよっていた。


それに対して、周りは平和な印象に感じる。


あれだけ、モンスターが徘徊していた割りに落ち着いた雰囲気だった。




「それより、ここはどこなのですか?」


迷い込んだ形で場所を聞く。


「ここは、黒国の大平原の町です。周りを大平原に囲まれていますけどこの町

 だけは、モンスターに襲われません」


「他の町へは?」


隆之の疑問に思うところだ。


鷹の目で確認した時、この町だけ独立していた。


食料は? 水は? 薬や資材などはどうしているのか?


聞きたいことは、いろいろあった。


「ワープゲートが使えますけど、一度は走破しないと使えませんから」


その言葉を聞いて、ここが迷宮であることを確信した。


「迷宮のゲートと同じなわけね」


「はい、苦労して突破された方が食料や薬を運んでくれています」


かなり良心的な者らしい。


それと、あれだけのモンスターの間を突破した実力は大した物だ。


犬達は結果的に逃げ出したけど、目の前の町長など一噛みだ。


そうして、考えるとかなりの実力の冒険者に感じた。




「生活するには問題ないわけですね」


「ええ、しかし、この大平原のモンスターが少しづつ強くなっていたところに

 賢者様の出現で期待したのですが・・・」


名前と魔法の威力から異常に期待をさせてしまった印象。


隆之自身、なぜここに呼ばれたのか知りたいところだ。


「それより、賢者様食事の準備が出来ましたので」


目覚めたと同時に食事の準備を進めていた印象。


その手回しの良さは魔法使いが欲するものを理解している気配だった。






町長が用意してくれた食事を食べている。


その量にまず驚かされた。


隆之自身そんなに食べる方ではない。


それなのに、用意された食事はどう見ても五人前だ。


もっと、驚いたのはそれを食べていく隆之だった。




いくら食べても満腹感が感じられない。


訂正、飢餓感が解消されない。


冗談抜きに豚一頭分を食べた印象。


けれども、満腹感は感じられない。


驚くのは、地球ならそれだけ食べれば呆れられる。


なのに、隆之がそれだけ食べていても不思議に思わない住人だ。


漫画などで誇張されている食事表現。


明らかに体格より多い食事量のアニメなどだ。


それを、実地にやっている隆之には笑えない。


隆之自身、食べた物はどこへ消えたのか疑問に思うほどだ。




どうにか食事が終わりに近い状態になる。


食べた量を考えると、皿の山が出来そうだ。


実際にはすぐに片付けられているので目立たないけど。


某アニメの一シーンを思い出してしまった。


終わりに近いのは町長も気付いた感じだ。


隆之の空腹感が消えて、食事を食べる速度も落ち着いたからだ。


町長夫妻は、そんな様子を察したようにデザートに取り掛かった。




用意されたデザート皿を見て、隆之は困惑のど真ん中だ。


正確には食べ終わって、デザートが並べられたところだ。


見るからに質素な白い寒天のようなもの。


『杏仁豆腐』を思わせる物だ。


それ自体、美味しそうな物だった。




食べる事については気にしない。


問題は、その器が四つあることだ。


その数が問題なわけではない。


全部食べても大した量ではないからだ。


隆之が助けた町長の奥さん以外の四人の女性。


彼女達がじっと注視していることが問題だった。




これって、その皿を食べたら・・・


念のために観察を含めて一皿取り寄せた。


女性の中の一人がすごく嬉しそうな顔をする。


残った皿の娘の落胆した表情が気になった。


慌てて、皿を元に戻す。


嬉しそうな娘が落胆したのが目に見えた。




どうやら、皿と娘が対応している印象。


選んだ皿が伴侶を意味する可能性が高い。


皿の並びがそのまま娘達をあらわしている。


それが判るだけに下手に選べない。


場の雰囲気からすると、断ることは許されそうもない。


美女の四人だ。


年齢的には隆之より少し上程度。


隆之には、なんら文句はないところだけど・・・


最初に皿に手を伸ばした時の嬉しそうな娘の表情で気付いた。


慌てて手を引っ込めて、がっかりしたような娘の表情。


残った娘の安心した表情が選択の難しさを現している。


助けられた娘が感謝を込めた物なら喜んで食べたのだけど・・・


選ばれなかった娘の表情を考えると下手に選べない。



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