22 魔法発動
魔法発動
孝之が別のことに気を取られて返事をしないため次のせりふを言われてしまう。
まあ、予想通りの言葉ではあるが・・・
「せめてもの情けだ、一撃で葬ってやるよ」
そう言って、馬を走らせてきた。
格好をつけたせりふと雰囲気はまさにはまり役だ。
問題は、『ターゲットが孝之』ということだった。
こんな時、ヒーローならどうするか?
魔法を放ってかっこよく決めるけど・・・
そう考えてこの世界の魔法を思い浮かべる。
例の迷宮で魔法師はどんな魔法を使っていたかな?
火と風がもっとも一般的だった。
中には、氷の槍を放つ者もいた。
氷だけに印象的な冒険者だ。
隆之はあの格好が良かった一流冒険者思い出す。
迷宮の六十階ぐらいのところを探索していた冒険者達だ。
四人で探索していた女ばかりの冒険者達だった。
前衛は武器と盾役だ。
それ以外、戦闘終了後に回復役を行っていた。
後衛の二人は一人が戦闘魔法、もう一人が回復と盗賊役だ。
その戦闘魔法を扱っていた冒険者だった。
魔法に特化していただけに威力があった。
『あのように、決められれば!』
冒険者は、隆之の作ったモンスターを一撃で串刺しにした猛者だ。
それを見て、魔法の凄さを感じた。
あの魔法を思い浮かべて賊の頭を見る。
狙うなら一撃だ。
万が一かわされたらそこまでだった。
撃てるかどうかは別にして、犬たちと同様に気配を探る。
攻撃を意識したところで、的のような物が現れた。
犬の時にはその前に大慌てで犬が逃げ出した為に意識できなかった物だ。
ねらいを絞っている所為か同心球状の的だ。
弓の的などに使っている同心円の的の立体的な物。
中央に近くなるにつれてよりはっきりした球状の透ける的だ。
それを、感じた時『魔法が撃てる』と察した時だった。
そして、冒険者と同様に魔法を放っていた。
放つ寸前、『もしかわされたらどうしよう?』と思う。
飛んでくる槍をかわすのは半ば本能だ。
かわされるのは当然ともいえた。
もっとも、接近する盗賊を把握していたのは当然だ。
例の同心球は盗賊と一緒に動いていた。
すると、氷で出来た槍はまるで誘導弾のような印象で盗賊の喉を貫く。
確かに、盗賊の男は回避行動をとっていた。
それなのに、そのかわした方向に氷の槍は動いたからだ。
盾で防ごうともしていた。
けれども、素通りだ。
その動きはまるで実体が感じられない。
物理法則を無視した槍の動きだった。
氷の短い槍は直前に掲げられた盾も無視した感じで盗賊に突き刺さった。
なんとなく、投げたというよりそこに具現化した印象の方が強い。
確かに、投げた槍が飛んでいくイメージはあった。
しかし、かわしたはずのところに突き刺さった槍。
・・・違和感の正体は血のりだ。
それと、反動だった。
もし、飛んでいって刺さったなら反動があるはず。
抜けきった部分に血が付くのは当然だ。
それなのに、刺さって背後に抜けた槍には穂先に血の痕がなかった。
なにより、それだけの質量が身体を貫いたなら背後に倒れるはず。
それなのに、盗賊の身体は馬と一緒に接近してきた。
結果的には意識がなくなったらしく目の前で落馬したけど・・・
驚くことに、盗賊が完全に『死んだ』と思われるとき現れたエフェクト。
まるで、迷宮でモンスターが死んだ時のような輝きだ。
そして、盗賊が装備していた装具一式を残して消えた。
人を殺した事に対する嫌悪感が一瞬浮かぶ。
しかし、なんとなく希薄な印象だ。
なんというのか、ゲームでモンスターを仕留めた時に似た印象。
殺した事より、『ヤッター』という印象の方が強かった。
死体さえ残らないために感じた印象だ。
『盗賊は、この世界の人間?』
その様子に感じた印象は少しおかしな印象だ。
前回の時には、冒険者の死体は確かに見た覚えがある。
なにより、一般の人の葬儀の列も見た覚えがあったからだ。
もし、モンスターの擬態なら装備が残った理由が判らなかった。
『まさか、モンスターが装備をしていた?』
そんな、ありえそうもないおかしな考えが浮かぶ。
「やばい、魔法師だ」
盗賊たちは一斉に散開すると隆之を囲むように動く。
もし、野犬との戦闘が先に無かったら気付かなかっただろう。
第三の目で把握する技術だ。
額の真ん中を意識するようにして把握を意識する。
立体的なイメージが心象に浮かぶ。
見ていないのに背後までの賊の動きが見える。
隆之は、第三の目で回り全てを把握していた。
氷では作るのに僅かな時間差が産まれる。
冷気を収束するのに時間が掛かるからだ。
先ほどは、盗賊の首領がゆっくり構えていたので時間が出来た。
今回はそんな余裕はなさそう。
隆之は別の魔法も思い浮かべる。
迷宮で、風を放っていた冒険者の女性もいた。
殺すのが目的ではなく、空飛ぶモンスターをけん制する意味だ。
風ではモンスターは殺せない。
モンスターを混乱させて仲間が止めを刺した。
それを、習って馬から落すつもりで風を放つ。
第三の目で把握している賊全部を目掛けてだ。
ただ、慣れない隆之はそれこそ全力で発動させてしまった。
残念ながら、賊は一人たりとも馬から落ちることなく隆之に接近してきた。
さすがに、それで生きてきた男達だ。
少々乱された程度で落馬する者はいない?
のではなく、単に胴体が乗っていただけ。
首なしの賊が隆之に接近してきた。
それほど、少ない抵抗で十人以上の男達の首が落された。
それも、ほぼ同時の攻撃だ。
最初の槍のようにかわす余裕などない。
『気付いたら首を斬られていた』という感じだ。
およそ、冒険者達の魔法とは次元が違っていた。




