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洒落怖・閲覧注意まとめ  作者: はまゆう


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136/165

第135話 追悼会

781:本当にあった怖い名無し:2026/07/25(土) 22:16:08.41 ID:V7mQ2kLs0


前に、亡くなった政治家の資料を整理していた時のことを書いた者です。


覚えてる人がいるかわからないけど、木内先生という元国会議員が、入院先で医療事故に見せかけて殺され、その後、自分を殺した青木院長の一家へ復讐したという話。


あの時は長くなるから書かなかったが、数年後にもう一度、木内先生に会っている。


今回はその時のことを書く。


782:本当にあった怖い名無し:2026/07/25(土) 22:17:34.92 ID:c3Yp8NwR0


前の話読んだわ

医者の息子を事故らせた政治家だろ


783:本当にあった怖い名無し:2026/07/25(土) 22:18:11.67 ID:M5tF1bXq0


もう一度って

成仏したんじゃなかったのかよ


784:781:2026/07/25(土) 22:20:46.18 ID:V7mQ2kLs0


俺もそう思っていた。


前に現れた時、木内先生は「もう行くべきところへ行く」と言っていた。


だから二度と会うことはないと思っていた。


二年前の春、東京都内で、昔の政治活動家や元議員を追悼する集会があった。


今の国会議員が何人も来るような大きな会ではない。昭和の終わり頃に政治改革を訴えていた人たちの、同窓会に近い集まりだった。


参加者もほとんど七十代以上で、亡くなった人の写真を並べ、昔の映像を流し、最後に献花をする程度のものだった。


そこで、伊沢という古い友人に会った。


785:本当にあった怖い名無し:2026/07/25(土) 22:21:39.04 ID:J2uH6sDa0


伊沢って前の話にも出てた?


786:781:2026/07/25(土) 22:23:58.73 ID:V7mQ2kLs0


名前だけは出したかもしれない。


若い頃、一緒に政治運動をしていた男だ。


集会やデモの手伝いをして、選挙になると候補者の事務所に泊まり込み、ポスターを貼って回った。今なら問題になるようなこともかなりやった。


伊沢は途中で政治の世界を離れ、東北に移った。


それから何年も連絡が途絶えていた。


共通の知人から、病気で亡くなったと聞いたことがあったので、会場で顔を見た時は本当に驚いた。


「死んだと聞いてたぞ」


と言うと、伊沢は笑って、


「死んだのと変わらん生活をしてたから、話が混ざったんだろ」


と答えた。


痩せてはいたが、顔も声も昔のままだった。


787:本当にあった怖い名無し:2026/07/25(土) 22:24:51.26 ID:g9Cs4QeK0


その時点で帰れ


788:本当にあった怖い名無し:2026/07/25(土) 22:25:20.48 ID:R8dL3zWp0


死んだと聞いてた奴が追悼会に来るの嫌すぎる


789:781:2026/07/25(土) 22:28:07.53 ID:V7mQ2kLs0


でも、会った時は全然怖くなかった。


老人になると、誰が生きていて誰が亡くなったのか、本当にわからなくなる。


同姓同名と取り違えたか、俺が別の人の訃報と混同したのだと思った。


集会が終わったあと、伊沢と二人で近くの個室居酒屋へ入った。


昔の仲間の消息や、政治運動をしていた頃の話をした。


俺たちも若い頃は、自分たちが世の中を変えられると思っていた。


伊沢が、


「みんな大臣になるつもりだった。実際になれたのは、人の後ろをうまく歩いた奴ばかりだったな」


と言って笑った。


そのうち話が、木内先生の死へ移った。


790:本当にあった怖い名無し:2026/07/25(土) 22:30:24.64 ID:V7mQ2kLs0


木内先生は、政権にとって都合の悪い資料を国会で公表しようとしていた。


その直前に腹痛で入院し、容体が急変して亡くなった。


当時から、入院先の青木院長が政権側に買収されたという噂があった。


もちろん証拠はない。


俺が、


「先生は病死じゃなかったと思う」


と言うと、伊沢は妙な顔をした。


「お前、本人から聞いたみたいな言い方をするな」


と言われた。


俺は前に木内先生が現れた時の話を、伊沢にはしていなかった。


だから笑ってごまかした。


791:本当にあった怖い名無し:2026/07/25(土) 22:31:18.77 ID:e1Kn7BhM0


その友人には話してなかったのか


792:781:2026/07/25(土) 22:33:26.55 ID:V7mQ2kLs0


言えるわけがない。


死んだ政治家の幽霊が出て、自分を殺した医者の息子たちへ復讐したと話した、なんて。


伊沢は酒を飲みながら、


「青木院長も、ろくな死に方をしなかったな」


と言った。


青木院長は前の年、自宅の庭で倒れて亡くなっていた。


脳卒中と報道された。


青木の長男は海外赴任中に会社の金を使い込み、事故死している。


次男は父親と同じ医師になったが、家庭が崩壊し、一時は精神科へ入院していた。


それが前の話で木内先生が、自分の復讐だと語った内容だった。


俺たちが話していると、外で雨が降り始めた。


793:本当にあった怖い名無し:2026/07/25(土) 22:34:40.83 ID:q4Va9JtC0


また雨か


794:781:2026/07/25(土) 22:37:12.29 ID:V7mQ2kLs0


その日は朝から曇っていたが、天気予報では雨になると言っていなかった。


個室には窓がなかった。


それなのに、途中から天井の上へ雨が当たるような音がしてきた。


店は雑居ビルの二階だから、天井のすぐ上は別の店舗だったはずなんだが。


伊沢は気にしていなかった。


二人で日本酒をかなり飲んだ。


しばらくして伊沢が、


「ちょっと便所へ行ってくる」


と言って席を立った。


俺は一人で飲みながら待っていた。


十分くらいたっても戻ってこない。


店員を呼んで捜してもらおうと、卓上の呼び出しボタンへ手を伸ばした時、向かい側の座布団が沈んだ。


795:本当にあった怖い名無し:2026/07/25(土) 22:38:07.35 ID:R8dL3zWp0


来たか


796:781:2026/07/25(土) 22:40:44.18 ID:V7mQ2kLs0


最初は伊沢が戻ってきたと思った。


顔を上げると、木内先生が座っていた。


前に現れた時と同じ、三十代くらいの姿だった。


実際に亡くなった時は六十を過ぎていたはずなのに、写真でしか知らない若い頃の顔をしていた。


木内先生は俺を見て、


「久しぶりだな」


と言った。


俺は驚いたはずなのに、なぜか逃げようとは思わなかった。


前回と同じだった。


その人が死者だということを忘れ、目上の政治家と会っているような気持ちになる。


俺が姿勢を正すと、先生は笑った。


「前に、もうこれで終わりだと言ったな」


そこで少し黙り、


「あれは嘘だった」


と言った。


797:本当にあった怖い名無し:2026/07/25(土) 22:41:42.67 ID:c3Yp8NwR0


成仏するする詐欺


798:本当にあった怖い名無し:2026/07/25(土) 22:42:16.90 ID:M5tF1bXq0


笑えないんだが


799:781:2026/07/25(土) 22:45:08.22 ID:V7mQ2kLs0


先生は青木の次男について話し始めた。


次男は精神科を退院したあと、父親の病院へ戻っていた。


その頃には医療法人の理事長になり、自由診療専門のクリニックをいくつも経営していた。


二か月ほど前、その医師が執刀した女性患者が、手術当日に亡くなっていた。


ニュースにもなった。


死亡したのは銀座で会員制クラブを経営していた女性で、遺族は病院側の説明に納得せず、警察へ相談しているという内容だった。


俺も記事を読んでいた。


「それも先生がやったんですか」


と尋ねた。


先生は、


「そうだ」


と簡単に答えた。


800:本当にあった怖い名無し:2026/07/25(土) 22:47:43.71 ID:V7mQ2kLs0


医師は手術前から手の震えを感じていた。


それでも理事長自身が執刀することを宣伝していたため、今さら代われなかった。


手術中、血管と別の組織を見間違えた。


助手が止めた時には遅かった。


先生は、


「私が少し、手元を狂わせただけだ」


と言った。


俺は亡くなった女性は無関係ではないか、と聞いた。


すると先生は笑った。


「あの女も善良な人間ではない。店を使って政治家と業者をつなぎ、何度も金を運んだ。犠牲にしても構わない人間だった」


その言葉を聞いた時、前とは何かが違うと思った。


801:本当にあった怖い名無し:2026/07/25(土) 22:48:29.36 ID:J2uH6sDa0


完全に化け物になってるじゃん


802:本当にあった怖い名無し:2026/07/25(土) 22:49:03.14 ID:e1Kn7BhM0


悪人なら殺していい理論になってるな


803:781:2026/07/25(土) 22:52:10.67 ID:V7mQ2kLs0


前に会った時、俺は木内先生を殺された被害者だと思っていた。


復讐の内容は恐ろしかったが、怒るのも当然だと感じた。


でも、その夜の先生は違った。


人を殺した話をしながら、楽しそうだった。


それなのに俺は、


「ああいう連中なら、死んでも仕方ありませんよ」


と言ってしまった。


本心からそう思ったわけじゃない。


先生に逆らうのが怖かったのか、酒に酔っていたのか、自分でもわからない。


先生は俺の言葉を聞くと、満足そうに頷いた。


「君なら、わかってくれると思っていた」


そう言って、テーブルの上へ名刺を一枚置いた。


804:本当にあった怖い名無し:2026/07/25(土) 22:53:12.56 ID:g9Cs4QeK0


何の名刺?


805:781:2026/07/25(土) 22:55:46.91 ID:V7mQ2kLs0


木内先生自身の名刺だった。


肩書は衆議院議員。


住所も電話番号も、国会議事堂の交換番号も、昔の表記だった。


先生は、


「次は君に手伝ってもらうかもしれない」


と言った。


俺が何を手伝うのか尋ねようとした時、個室の引き戸が開いた。


若い店員が立っていた。


「お客様、大丈夫ですか」


と言われた。


木内先生は消えていた。


向かいの席には誰もいなかった。


伊沢も戻っていなかった。


俺が、


「連れがトイレから戻らない」


と言うと、店員は困った顔をした。


「お連れ様、ですか」


と聞き返された。


806:本当にあった怖い名無し:2026/07/25(土) 22:57:01.74 ID:q4Va9JtC0


やめろ


807:781:2026/07/25(土) 22:59:38.19 ID:V7mQ2kLs0


俺は伊沢の服装や年齢を説明した。


店員は、


「ご来店の時から、お一人でした」


と言った。


そんなはずはないと怒鳴った。


伊沢と二人で店に入り、向かい合って酒を飲み、料理を分けた。店員も注文を取りに来たはずだ、と。


店員は別の人を呼びに行った。


来たのは店長だった。


店長も、俺は一人で入店したと言った。


予約は一名。


入口のカメラを確認しても、一人で店へ入っていた。


伝票にも「一名」と印字されていた。


テーブルに置かれていた箸とグラスも一人分だけだった。

いや、グラスは一つ追加していた。


ただ、注文した料理は二、三人前あった。


店員によると俺は向かいの空席へ酒をつぎ、時々笑いながら、ずっと一人で話していたらしい。


不審に思った店員が様子を見に来た時には、誰もいない席へ頭を下げながら、


「あんな連中、死んで当然ですよ」


と繰り返していたそうだ。


808:本当にあった怖い名無し:2026/07/25(土) 23:00:41.60 ID:M5tF1bXq0


きつい


809:本当にあった怖い名無し:2026/07/25(土) 23:01:28.04 ID:c3Yp8NwR0


伊沢も最初からいなかったのか


810:781:2026/07/25(土) 23:04:13.82 ID:V7mQ2kLs0


会計を済ませて、その日はタクシーで帰った。


場所を移動した記憶はない。


追悼会の会場から居酒屋まで歩いたはずだが、その時も俺は一人だったことになる。


翌朝、集会の主催者へ電話した。


伊沢道之という男が昨日来ていなかったか、と聞いた。


相手はしばらく黙ったあと、


「伊沢さんは二年前に亡くなっています」


と言った。


俺が出席したのは、伊沢を含む、この一年ほどの間に亡くなった活動家たちの合同追悼会だった。


会場の入口に並べられていた遺影の中にも、伊沢の写真があったという。


俺はその前を通っている。


まったく気づかなかった。


811:本当にあった怖い名無し:2026/07/25(土) 23:05:08.72 ID:R8dL3zWp0


二人とも死人だったのかよ


812:781:2026/07/25(土) 23:07:49.31 ID:V7mQ2kLs0


主催者から集合写真を送ってもらった。


俺は後ろの列に立っていた。


伊沢は写っていない。


ただ、写真の俺は誰もいない右隣へ顔を向けて、笑っていた。


右手も、見えない誰かと握手するような形になっていた。


あの夜から、雨が降ると木内先生の夢を見る。


夢の中で先生は、毎回違う人間の名前を挙げる。


政治家、医師、記者、会社経営者。


どれもニュースで見たことのある名前だ。


先生は、その人間がどんな悪事をしたかを説明したあと、必ず俺に聞く。


「この者なら、犠牲にしても構わないと思わないか」


俺は自身の意思とは別に

「ああいう連中なら、死んでも仕方ありませんよ」と繰り返す。


813:本当にあった怖い名無し:2026/07/25(土) 23:08:55.26 ID:e1Kn7BhM0


名刺はどうなった


814:781:2026/07/25(土) 23:11:32.83 ID:V7mQ2kLs0


ポケットに残っていた。


印刷された住所を調べたら、木内先生が初当選した頃に使っていた古い議員会館の部屋番号だった。


名刺の裏には、鉛筆で一人の名前が書かれていた。


その人は当時、現職の国会議員だった。


名前をここへ書くつもりはない。


ただ、その議員は名刺を受け取った二週間後、宿泊先の浴室で亡くなった。


事件性はないと報道された。


名刺は寺で処分してもらった。


それ以来、木内先生が夢に出ても返事をしないようにしている。


でも最近、先生は質問の仕方を変えた。


「次は誰がいい」


と聞いてくる。


以上です。


815:本当にあった怖い名無し:2026/07/25(土) 23:12:44.26 ID:J2uH6sDa0


復讐の共犯者にされかけてるじゃん


816:本当にあった怖い名無し:2026/07/25(土) 23:13:31.80 ID:g9Cs4QeK0


名刺捨てても終わってないのが嫌だな


817:本当にあった怖い名無し:2026/07/25(土) 23:14:26.59 ID:q4Va9JtC0


前の話では木内に同情したけど今回は無理だわ


818:本当にあった怖い名無し:2026/07/25(土) 23:15:04.17 ID:R8dL3zWp0


そもそも本当に木内先生なのか?


819:本当にあった怖い名無し:2026/07/25(土) 23:15:58.42 ID:M5tF1bXq0


人を恨み続けた結果、本人の形をした別のものになったんじゃね


820:本当にあった怖い名無し:2026/07/25(土) 23:16:47.83 ID:c3Yp8NwR0


雨の日に読むんじゃなかった

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