第93話 初温泉
第93話です。
楽しんでいってください!
部屋を出て、男性に言われた通りの道を辿る。
すると、一際広い広場に出た。
そこにはたくさんの人が椅子でくつろぎ、談笑している。
全員が、男性と同じようなみたことのない服を着ていた。
「ヴェーヴ、行くわよ。」
リリスが赤い布の前に立ち、ヴェーヴを手招きする。
リリスの後に続くように布をくぐり、ドアの先にある部屋へと足を踏み入れた。
その瞬間、ヴェーヴをむわりとした熱気が襲う。
キョロキョロと辺りを見回しながらリリスの後について行った。
「これでいいかしら。」
そう言いながら、リリスは棚の取っ手に手をかける。
開いて、持っていた荷物をその中に入れた。
「師匠、僕は何したらいい?」
ヴェーヴはどこか不安そうな表情を浮かべてそう尋ねる。
「それじゃあ、服を脱ぎましょうか。脱いだものはこの中に入れてね。」
「わかった!」
ヴェーヴは言われた通りに服を脱ぎ、畳んでから棚の中にしまいこんだ。
「行きましょうか!」
リリスを見上げると、彼女は楽しげにそう言い、人が頻繁に出入りしている1つの扉を通り抜ける。
「わぁ!」
ヴェーヴは本日何度目になるかわからない感嘆の声を漏らす。
床は黒い石のタイル。
左右にはシャワーと椅子が備え付けられており、そこでたくさんの人が体を洗っていた。
そのさらに奥には、木でできた囲いに大量の湯が張られている。
ヴェーヴがそこに近づき、入ろうとした時に背後から声をかけられた。
「ヴェーヴ、湯船に入るのは、体を洗ってからね。」
ヴェーヴは「はーい。」と返事をし、リリスの隣に座った。
椅子には背もたれがなく、とても低い。
これも木でできていた。
隣でリリスが体を洗うのに倣い、ヴェーヴも体をゴシゴシとこする。
シャワーを使って綺麗に流した後、立ち上がった。
「ねえ、師匠!もう入ってもいい!?」
目をキラキラと輝かせてリリスの顔を覗き込む。
「ちょっと待ってね。これだけ・・・。」
リリスはヴェーヴの後ろに立ち、髪を高い位置で結んだ。
「はい、いいわよ!」
リリスはそういうと同時に、お湯をざばりと被る。
髪を手早くお団子状にまとめてヴェーヴを振り返った。
ヴェーヴは勢い良く頷き、笑みを浮かべる。
そして、そろそろと湯船のふちに近づいた。
「熱いから、ゆっくりね。」
リリスの言葉に従い、まずは足先だけをお湯につける。
「・・・っ!あったかい!」
驚いたように声を上げながらも、そのまま少しずつ身体を沈めていく。
湯船の深さは、ヴェーヴにとっては少し深い。
少し段になっているところに腰掛ける。
膝、腰、胸――最後には肩まで浸かるとほうっと息を吐いた。
「きもちいい・・・。」
思わず頬を緩ませるヴェーヴを見て、リリスも静かに湯船へと入る。
2人の周囲では、他の客たちが思い思いにくつろいでいた。
誰かが笑い、誰かがほうっと息を吐く。
水音と声が混ざり合い、不思議と落ち着く空間だった。
「師匠、ここって不思議だね。」
ヴェーヴは湯をすくっては落とし、きらきらとした表情であたりを見回した。
「ここは温泉っていうのよ。北にある小さな島国のお風呂を再現したものなの。」
「こういうとこ、いっぱいあるの?」
「そうね、大きな町の宿にたまにあるくらいかしら。」
「そうなんだ。・・・いいね、温泉って!」
ヴェーヴは満面の笑みを浮かべて、リリスを見上げた。
リリスはいつも通り微笑みを返し、ゆっくりと立ち上がる。
「それじゃあ、そろそろ出ましょうか。」
「えー。もうちょっといたい!」
「ふふっ。でも、もう顔が真っ赤よ。」
「はーい・・・。」
ヴェーヴは後ろ髪を引かれるように湯船から出る。
「またあとで、入りに来ましょう。」
リリスのその言葉に勢いよく顔を上げて、大きく頷いた。
これからものんびり投稿していきます!
ちょこちょこ覗きに来てください!




