第94話 黒ずくめの女性
第94話です。
楽しんでいってください!
浴室から出て、身体の水気をふき取る。
「はい、これを着てね。」
そう言って、リリスから渡されたのは、外にいた人たちと同じ不思議な服。
「ねぇ、師匠。これってどうやって着るの?」
ヴェーヴは服を広げながら首を傾げる。
「それじゃあ、一緒に着ましょうか。」
リリスも服を取り出して広げる。
「まずは、ここに腕を通して――。」
5分後。
四苦八苦しながらもリリスに手伝ってもらい、何とか着終えた。
「これはね、浴衣っていうのよ。」
「これも温泉とおんなじ所の・・?」
「そうよ。」
ヴェーヴは淡い桃色、リリスは水色の浴衣を身にまとっている。
リリスはヴェーヴを椅子に座らせ、その髪を梳いていた。
瞬く間に髪が乾いて行く。
「はい、終わり。」
リリスは自らの髪も同じように乾かした。
2人は入ったときと同じ扉から外に出る。
外では変わらず、たくさんの人がのんびりとくつろいでいた。
ヴェーヴは手前にある、誰も座っていない椅子にちょこんと腰掛ける。
「ちょっと待っててね。」
そうヴェーヴに告げて、リリスはどこかへ歩いて行った。
ヴェーヴは少し火照った身体を椅子に預けながら周囲を見回す。
そんな時、後ろから声を掛けられた。
「あれ?君、迷子なのかな・・・?」
どこか頼りない雰囲気を醸し出しながら、その女性がヴェーヴの前に顔を出す。
全身黒ずくめの女性。
彼女はどこかけだるげに目を細める。
「迷子じゃないです。ここで師匠を待っているので。」
「そっかー・・・。」
隣にすとんと腰を下ろし、ふぅ、と息を吐く。
信用されてないのかなぁ。
ヴェーヴは少し頬を膨らませた。
それを見た女性はごまかすように口を開く。
「君はどこから来たの・・・?」
「王都です。」
短く答え、脚をぶらぶらと揺らす。
そんな時、頬にひやりと冷たい感触を覚えた。
「冷たっ!?」
思わず声を上げ、真上を見上げる。
「そんなに適当に答えないの。」
そこにいたのは、いたずらっぽい表情を浮かべたリリスだった。
両手には3本の瓶が握られている。
「・・・あれ?リリスがいる?」
「お久しぶりです、先輩。」
リリスはヴェーヴに瓶を1本手渡しながらにこりと笑みを浮かべる。
「先輩、お仕事は大丈夫なんですか?」
「たぶん・・・上司に追い出されたから。大丈夫、じゃないかな・・・?」
少し首を傾げながら言葉を続ける。
「リリスこそ、こんなとこにいて、大丈夫・・・?」
「はい。女王陛下に許可はいただいてるので、大丈夫ですよ。」
「そっか・・・。リリスは、自分から申請したんだ・・・。」
「ええ。少し用事がありまして。」
リリスはそう言って、手に持っていたもう1本の瓶を差し出す。
女性は少し驚いたように目を瞬かせてからそれを受け取った。
ヴェーヴはリリスの服の袖を軽く引っ張り、首を傾げた。
「師匠、この人誰?」
「この人は、私の学生時代の先輩。」
リリスはそこで女性をじっと見つめる。
彼女は瓶のふたを開けようとしている手を止め、ヴェーヴに視線を向ける。
「エルシア・ノクティル。エルシアでいいよ。」
エルシアはどこかけだるげにそう言い、再び瓶に視線を戻した。
その瓶を軽く揺らし、彼女はふと言葉をこぼす。
「研究、全然進んでないんだよねぇ・・・。」
脈絡のない発言に、ヴェーヴは首を傾げる。
「先輩の場合、進める時間がないだけでしょう?」
リリスがさらりと訂正し、ヴェーヴの隣に腰を下ろす。
「・・・そうともいう、かな・・・。」
エルシアは軽く笑ってそう言う。
ヴェーヴはさらに首を傾げて口を開いた。
「なんで、そんなに忙しいの?」
「うん・・・。仕事がねぇ・・・。」
エルシアは遠くを見つめ、目を細める。
「何のお仕事?」
「えっと・・・」
エルシアはちらりとリリスに視線を向ける。
リリスは苦笑しながら口を開いた。
「女王陛下、覚えてるかしら?」
「うん!シャシャさんにそっくりだった人!」
「そうよ。あの方の指示に従って任務を遂行する部隊に属してるの。」
ヴェーヴがこくこくと頷く横で、リリスはエルシアをじっと見つめる。
「それだけなら、そこまで忙しくないはずなのですが、ね・・・。」
ジトっとした視線を向けられたエルシアは顔をそっとそむけた。
これからものんびり投稿していきます!
ちょこちょこ覗きに来てください!




