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第95話 先輩

第95話です。

楽しんでいってください!

 リリスは苦笑しながら、不思議そうな表情のヴェーヴに説明する。


「先輩は、昔から何でもできるの。」


「えー・・・。言い方・・・。」


「事実でしょう。」


穏やかな声音の中に有無を言わせぬ響きがある。

エルシアは「うっ・・・。」と言葉を詰まらせて沈黙した。

リリスは構わずに続ける。


「座学、実技、魔力制御――すべての分野においてトップだったの。」


ヴェーヴの瞳がパッと開かれる。


「すごい!」


「昔の話、だよ・・・。」


エルシアがどこか気まずげにうつむく。


「卒業試験も単独で突破して、教官にも例外扱いされていた方が何をおっしゃっているのですか?」


「それ、言わなくていいやつだよ・・・。」


「その結果、今の隊に引き抜かれましたよね?」


空気が少しだけ、変わった。

ヴェーヴは息をのみ、エルシアを見上げる。

彼女は猫背をさらに縮こまらせて自嘲気味につぶやいた。


「使いやすい人材ではあるよね・・・。」


わずかに顔を引きつらせる。


「何でもできるから、何でもまわってくる・・・。」


瓶を軽く揺らして、ため息をこぼした。


「断れないから、全部引き受ける・・・。」


「そして、自分の時間がゼロになる、ですよね?」


「そう、それ・・・。」


即答だった。

リリスは小さくため息をつく。


「学生の頃から、変わりませんね。」


「課題とか、色々手伝ってたからね・・・。」


ヴェーヴは首を傾げる。


「でも、それっていいことじゃないの?」


エルシアは一瞬だけ目を細める。


「でも・・・自分のやりたいこと、全然できないから・・・。」


「それは、断れない先輩が悪いですよ。」


エルシアはリリスにちらりと視線を向け、わずかに笑みをこぼす。


「リリスは、ちゃんとやりたかったこと、できてるみたいだね・・・。」


「先輩と違って、ですね。」


「うわ、刺さるなぁ・・・。」


しかし、その顔に浮かぶ表情はどこか穏やかだった。

ヴェーヴはそんな2人を見て、手の中にある瓶をぎゅっと握りしめる。


「僕は、ちゃんとやりたいこと、頑張る!」


ぽつりとこぼれた呟き。

それを聞き、エルシアは頬を緩めた。


「うん・・・それがいい。じゃないと、私みたいになっちゃうよ・・・?」


その時不意に――エルシアの懐から、小さな音が鳴った。


「あ・・・。」


リリスの表情が一瞬で変わる。

エルシアは慣れた調子で淡く光るそれを取り出した。


「・・・およびみたい、だね・・・。」


ため息交じりに呟き、ぐっと足に力を入れて立ち上がる。


「またですか。」


「うん・・・。たぶん、急ぎだよ。」


緩んでいた空気が張りつめる。

リリスは目を細めて、エルシアを見上げた。


「それなら、私が手伝います。」


「え、いいよ・・・。この子がいるでしょ・・・。」


エルシアが遠慮がちにヴェーヴに視線を向ける。

ヴェーヴは勢いをつけて椅子から立ち上がった。


「僕も、手伝いたい!」


「だそうですよ、先輩。」


「いや、でも・・・。」


それでも手を振って断ろうとするエルシア。

リリスはそれを制するように口を開いた。


「どうせ、1人じゃ時間がかかる仕事でしょう?それなら、何人かでやった方が早いですよ。」


「・・・内容、きいてからね。聞いてから・・・。」


エルシアはがっくりと肩を落とし、歩き出した。


「それなら・・・私の部屋に、いこうか・・・。」

これからものんびり投稿していきます!

ちょこちょこ覗きに来てください!

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