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第93話 入室

第93話です。

楽しんでいってください!

 扉のすぐ横から板張りの床が広がっている。

男性は靴を脱ぎ、そこへ上がった。


「こちらで靴を脱いで上がってください。」


2人は言われたとおりに靴を脱ぎ、上に上がった。

2組の靴は別の職員に抱えられ、向かい側にある棚の一角に収められた。


「それでは、こちらです。」


ヴェーヴは慣れない感触を足の裏に感じながら歩き始める。

男性は通路を迷いなく曲がり、進んでいった。


広いなぁ。


ヴェーヴは彼を見失わないように足早に進みながらも、周囲をきょろきょろと見まわした。


少し狭い通路の左側には窓、右側には扉が並んでいる。

どちらも木でできていて、柔らかい印象を与える。

窓の近くには小さな台が置かれ、落ち着いた雰囲気の花が生けられていた。


やがて、男性は1つの扉の前で止まる。

扉の横には木でできた札に何かが描かれていた。


「ここが、本日お泊りになっていただくお部屋です。」


扉にかぎが差し込まれ、横にスライドした。


「え、なんで扉が横に動くの!?」


ヴェーヴは思わず声を上げる。

見たこともない空間に、見たこともない扉。

頭の中は謎でいっぱいだった。


「あとで教えてあげるわね。」


リリスがいたずらっぽく笑い、ヴェーヴの頭をポンポンとなでる。

久しぶりのその感覚にわずかに頬を緩めた。

リリスはヴェーヴの頭から手を離し、部屋の中に入っていく。

ヴェーヴも慌ててその後を追った。



 「それでは、当旅館のご説明をさせていただきます。」


2人が部屋に入ると、男性が説明を始めた。


「お客様はご自由に部屋の外を散策することができ、当旅館自慢の温泉の利用が可能です。温泉は扉を出てから右の方向に歩いて行くと見つかります。何かございましたら、職員にお尋ねください。」


そう言って、彼はどこからか、ボタンのようなものを取り出して机に設置した。


「このボタンを押すと、職員を呼ぶことができます。お困りの時や、お食事の時に押して下さい。また、旅館の外に出る場合は来た道を戻り、受付まで来てください。・・・ほかにご質問などはございますか?」


「大丈夫よ。ありがとう。」


リリスが頷くと、男性は軽く礼をしてから部屋を出ていった。

それを見送り、ヴェーヴは部屋の中を探検することにした。


入ってすぐに紙でできたドアがある。

これも横にスライドさせるタイプだ。

その先にはざらざらした床で、机と、脚がない椅子のようなものが設置されている。

そのさらに奥には、大きな窓がある。

外の景色を眺められるように、今度は脚のついた椅子だ。

外には薄桃色の花が風に吹かれてひらひらと舞い落ちている。


「わぁ!きれい!」


ヴェーヴの歓声に、リリスはほおを緩めた。

そして、脚のない椅子――座椅子に座り、伸びをした。

ヴェーヴは彼女の前に、同じように座ってきらきらとした目を向ける。


「師匠、ここのこと、色々教えて!」


「ええ、分かったわ。でも、とりあえず・・・」


リリスは立ち上がり、壁に埋め込まれるようにある両開きの扉を開き、中から何かを取り出した。


「お風呂に入りに行きましょうか。」

これからものんびり投稿していきます!

ちょこちょこ覗きに来てください!

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