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第87話 終幕

第87話です。

楽しんでいってください!

 アレクサンドルは、倉庫の一室に足を踏み入れる。

そして、担いでいたヴェーヴをその場におろした。


「師匠・・・!」


ヴェーヴは地面に足が着くと同時に、元来た道を戻ろうと踵を返そうとした。

その腕を、アレクサンドルはつかむ。

強くはない。

でも、振りほどけないくらいの力。


「ここで待っててくれ!」


いつも通りのアレクサンドルの声が倉庫の中に響く。

ヴェーヴは振り返り、アレクサンドルを見上げた。


「ちょっと様子を見てくるからな!」


そう言う彼の表情に浮かぶのは、どこかぎこちない笑み。

ヴェーヴがそのことを問う前に、アレクサンドルは倉庫の扉をバタン、と音を立てて閉めた。

その音で、ヴェーヴはハッと我に返る。


「や、やだ・・・!出してよぉ!」


また、涙があふれる。

ヴェーヴが全力で押しても、扉はびくともせず、沈黙を保っている。

彼女はすねたように扉から少し離れたところに、足を抱えて座り込んだ。




 どれ程の時間がたったのか。

突然、ヴェーヴの顔に光が当たった。

彼女はゆっくりと顔を上げ、扉に目を向ける。


「ヴェーヴ。やっと見つけた。」


そこに立っていたのは、わずかに息を切らしている。

それでも、いつも通りに柔らかく微笑んでいるリリスだった。


「師匠・・・師匠!」


ヴェーヴは立ち上がり、リリスに向かって駆けだす。

もう、彼女を止める手はない。

そのまま、リリスの胸に飛び込んだ。


「お待たせ、ヴェーヴ。」


「うん・・・。」


わずかに声が震える。

ヴェーヴはリリスにギュッと抱き着いた。

リリスはその背中を優しくなでる。


「もう、大丈夫よ。・・・帰りましょうか。ラヴィもシャシャも来ているわ。」


「・・・うん。」


ヴェーヴがうなずくと同時に、リリスは彼女をそっと抱き上げる。

安堵したような、笑みを浮かべながら。

2人はそのまま倉庫を出て、駐屯地の外へ向かって歩き始めた。





 リリスが消えた後、ユーグはその場で静かに空を見上げていた。

胸部からはとめどなく血が溢れ、彼の命は残り僅かなのだということを示している。


しばらくして、足音が1つ響いた。

焦ったように乱れた歩調。


「ユーグ!」


ユーグはわずかに口角を上げ、すぐそばに膝をつくアレクサンドルを見上げる。


「どうして、そんな姿で倒れているんだ・・・!」


力強い声は、わずかに震えている。

ユーグは赤く染まった手で、プラチナブロンドの髪をかき上げる。


「この俺が?無様だとでもいうのか?」


「いや、そこまでは・・・」


「よく見ろ。これが俺の散りざまだ!最っ高に輝いているだろ!」


アレクサンドルの言葉を遮るように、ユーグはその顔に余裕を浮かべて言い切る。


「・・・そう、そうだな!ユーグらしい、散りざまだ。だが・・・」


アレクサンドルは、グッとこぶしを握る。


「お前は、こんなところで終わる男じゃない!」


「貴様こそ、ここで終わるべき男じゃないんだ。貴様はまだ、未完成だからな。」


アレクサンドルは目を見開き、息をのむ。


「お前は、ユーグは、これで完成だ、と?」


「ああ。強き者に全力で立ち向かって敗れる。これほど美しい散り方はない。」


ユーグは細剣を握る手にぐっと力を入れる。


「貴様――アレクサンドルは未完成だからな。そこがいい所だ。伸びしろがあるからな。」


細剣を握る手にさらに力を入れ、アレクサンドルの眼前に持ち上げる。


「・・・受け取れ。この剣で、どこまで行けるか見せて見ろ。」


「・・・ユーグ・・・。」


アレクサンドルは、その細剣を受け取る。

血に濡れていた。

しかし、妙に軽かった。

彼の顔をちらりと見て、ユーグは再び空を見上げる。


「観客は少ないが・・・この俺にふさわしい、幕引きだ。」


その顔は、誇らしげで、満足げだった。


「・・・最高に、輝いた。」


小さくつぶやく。

口元にいつもの自信に満ちた笑みを浮かべた。


その場が、静寂に満ちる。



 アレクサンドルは、しばらく動かなかった。


「最後まで、かっこよかった。」


アレクサンドルは、笑みを浮かべているユーグに目を向ける。


「俺は、ユーグの剣も使って、お前を超えてやる。だから・・・」


顔を上げた。

――精一杯の笑みを浮かべて。


「ちゃんと、見とけ!――俺の、この先を!」

これからものんびり投稿していきます!

ちょこちょこ覗きに来てください!

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