第117話 初めての海
第117話です。
楽しんでいってください!
「わぁ!きらきらしてる!」
ヴェーヴたちは荷物を置いた後、すぐに港へとやってきていた。
「初めて見たー!」
ヴェーヴはきらきらとした目でタタタッと波打ち際に駆け寄ろうとした。
その時、ズデッと勢いよく地面に突っ込んだ。
「なんでぇ・・・。」
砂だらけになった髪と顔から砂を落としながら頬を膨らませる。
後ろから歩いてきたリリスが苦笑気味に口を開いた。
「足を取られやすいから、気を付けてね。」
「足が中に入ってくみたい・・・。」
ヴェーヴはすくっと立ち上がり、足元を見つめる。
靴も砂にまみれ、少し動けば足が沈み込んでいくようだった。
「靴を脱いだ方がいいわよ。」
リリスがほら、と言いながら脱いで見せる。
彼女は素足で砂の上に立った。
ヴェーヴはリリスの真似をして、足を砂の上におろす。
「あつっ!」
時刻は真昼。
太陽が真上に昇り、かなり熱い時間。
当然、砂も熱くなっていた。
「わ、わ、わっ!」
ヴェーヴは思わずその場でぴょんぴょんと飛び跳ねる。
「ふふっ。」
その様子を見て、リリスが思わず笑みをこぼした。
「海の近くまで行けば、少し冷たいわよ。」
「ほんと!?」
ヴェーヴは半信半疑のまま、小走りで波打ち際へ向かう。
すると――
ざぁん。
白い波が寄せ、ヴェーヴの足先に触れた。
「ひゃっ!」
今度は、思わず肩を跳ねさせる。
熱かった足が、一瞬でひんやりと包まれた。
「つめたい!」
もう一度、波が来る。
さらさらと砂が足元から流れていき、身体が少しだけ前へ引っ張られるような不思議な感覚に、ヴェーヴは目を丸くした。
「わっ、わっ! 吸いこまれる!?」
「砂が波と一緒に動いているのよ。」
リリスも隣まで歩いてきて、穏やかに答える。
「面白いね!」
ヴェーヴは何度も波へ足を入れては引き、きゃっきゃっと甲高い声で笑う。
ざぶん。
少し大きな波が寄せ、膝下まで海水がかかった。
「きゃあ!」
「ふふっ。」
リリスは肩を震わせる。
「海が歓迎してくれたみたいね。」
「海って楽しい!」
ヴェーヴは満面の笑みを浮かべる。
その笑顔を見て、リリスもどこか安心したように空を見上げた。
青い空。
どこまでも続く青い海。
穏やかな波音だけが、2人を優しく包み込んでいた。
海でひとしきり遊び、近くにあった木陰に座り込む。
「楽しー!」
ヴェーヴは興奮しっぱなしで海を見つめる。
まだ遊び足りない、そんな表情だった。
「おい、そこの2人!」
のんびりとした風で涼んでいた時、大きな声が聞こえた。
そちらを振り返ると、そこには大柄な男性が立っている。
「なんでしょうか?」
「もうすぐ海が荒れる。早く帰んな。」
日に焼けた顔をわずかにゆがめ、海を見据える。
ヴェーヴはつられてそちらを向き、首を傾げた。
「荒れる?」
「どうして、分かるのかしら?」
リリスがそう問うと、彼は眉根にしわを寄せながら答えた。
「カンってやつよ。」
「・・・行きましょうか、ヴェーヴ。」
リリスがすぐに立ち上がり、荷物をまとめ始める。
「えー・・・。」
ヴェーヴは不満げに頬を膨らませた。
「早く行きな、お嬢ちゃん。」
男性がヴェーヴを横目で見おろし、顎でリリスの方を示した。
ヴェーヴが名残惜し気に海を振り返る。
その時だった
『――おいで。』
風ではない。
波でもない。
どこか懐かしい、温かい感覚が胸をかすめた。
「・・・?」
「どうかしたの?」
リリスが振り向き、首を傾げる。
「ううん。なんかね・・・」
ヴェーヴはもう一度、海を見つめた。
「早く行かなきゃ、って。」
リリスは少し視線を下げ、「そうなのね。」とつぶやいた。
宿に到着すると同時に、ぽつぽつと雨が降り出す。
「雨、雨!」
「洗濯物ー。」
騒がしい出迎えに、ヴェーヴは目を丸くする。
「あ、おかえり、おかえり!」
「た、ただいま・・・?」
ヴェーヴは戸惑いながらそう口にする。
「ヴェーヴ、ヴェーヴ!ちょっと手伝って!」
「えぇ・・・?」
ヴェーヴは勢いのまま、リュシエンヌに手を引かれていったのだった。
その場に残ったのは2人。
「リリス。」
エリーヌののんびりとした響きが消えうせる。
金色の瞳は真剣な色を帯びていた。
リリスがエリーヌを見おろす。
「後で、部屋にきて。」
いつになく真剣な彼女をじっと見つめ、リリスは無言でうなずいたのだった。
これからものんびり投稿していきます!
ちょこちょこ覗きに来てください!




